美瑛富士 (1888m)  美瑛岳 (2052m)

十勝   2014.9.3(水)   晴のち曇

 


 

 

2014.9.3(水)
望岳台 0540
避難小屋分岐 0630
0735
美瑛岳分岐 0820
縦走路分岐 0925
美瑛富士山頂 0950〜1020
美瑛岳山頂 1140〜1215
ポンピ沢 1310
望岳台 1445

 

美瑛富士

私は登山道が無い美瑛富士は積雪期と残雪期に登る山で、夏場は高山植物を守るため敢えて登らないのが良識だと思っていた。
ところがネットなどで記録や情報を見ると交錯していた踏み跡も登山道として認められるまでになっていると言う。

それなら是非訪れてみたい。
という訳で前日の富良野西岳に続いて、9/3(水)は美瑛富士と美瑛岳に遊ぶことにした。

美瑛岳には10年ほど前、十勝岳から訪れたことがあるが雲に覆われ展望は得られなかった記憶がある。

今回は両山からの大展望を味わってみたい、幸い天気予報は晴れ一色。
そんな期待が高まる朝を吹上温泉の白銀荘で迎えたのである。

 

 

天気晴朗

目覚めると雲一点もない快晴、白銀荘からは噴煙を上げる十勝岳が澄み切った空気の中に圧倒的な存在感で聳え立っていた。

身支度を整え望岳台へ、車でわずか15分だ。
望岳台にはすでに10台以上の車があり、すでに出発した人も多い。

登山届を記入し礫地の広大な斜面を正面に十勝岳を眺めながら緩やかに登っていく。
荒れた礫地にはエゾオヤマリンドウと紅葉し始めたタデが目立ち美しい。

避難小屋が間近に見えるようになると十勝岳と美瑛岳との分岐点。

十勝岳
分岐点から見る朝の十勝岳 正面に避難小屋が見える

 

予報通り雲一つ無い晴天、十勝岳の噴煙も朝日に輝いている。
まだ朝日が届かない斜面には朝露が降り、しっとりした気配だ。

硫黄沢を渡り、ゆるやかに登りながら山腹をトラバースしていく。
先ほどまでの荒涼とした礫地からハイマツとお花畑の中を進む道に変わり、エゾオヤマリンドウ、コガネギク、シラタマノキなどが我が世の春を謳歌している。

道はとても良く整備され、ハイマツや小枝が刈り取られ気持よく歩けありがたい。
迷わないよう点々と岩には黄色のペンキでマーキングされている。

振り返ると雲ノ平を前景に十勝岳が勇壮だ。

十勝岳
雲ノ平から見る朝の十勝岳

 

難所

北東へ向かっていた道は山腹を巻くように次第に南東へ方向を変える。
この付近からイワギキョウが多くなりチングルマの穂が目立つ。

目指す美瑛富士と美瑛岳がシルエットになって出迎えてくれる。
「さあ、いよいよだ」静かに闘志を高まらせる。

美瑛岳と美瑛富士
美瑛岳(右)と美瑛富士(左)

 

山腹を回りこむと深い函が現れた。
記憶にある函よりずっと大きく深く抉られ、思わず足が止まる。

観察すると立派な鉄製の梯子が架けられ、手前側にはロープが設置されている。

有り難い、これがなければ渡れる場所を探して右往左往しなければならない。
ロープや梯子が設置されて入るが、崩れやすい礫の崖、足場を慎重に決めて函の底まで降り梯子を登って通過する。

函
足場に注意してね!

 

函を越えると間もなくポンピ沢、冷たく美味しい水で喉を潤し一休み。

ここからは美瑛岳から延びる尾根に向かって一直線に登っていく。
数年前の残雪期には探し回ったが登る道を見つけられず、ハイマツと崖の間を登って途中敗退した急な登りである。

「正念場だからゆっくり頑張って行こう!」気合を入れて急斜面に突撃だ。
確かに結構な登りだが、道は上手く急な所を避けながら迂回して登っている。
黒く熟したクロマメノキの実に元気をもらい、両手両足総動員で登っていく。
1時間と少し、急な登りを耐えると尾根の上へと飛び出る。

そこに待っていてくれたのは、

十勝岳
十勝岳と鋸岳の迫力ある景観

 

十勝岳から鋸岳にかけての火山らしい荒々しい迫力ある景観だった。

 

初めての山頂

すぐに美瑛岳山頂へ向かう道と美瑛富士のコルへ向かう道との分岐に出る。
山頂への道は帰りの下りで使う予定、周回するため美瑛富士への道を進んでいく。

美瑛富士
全容を見せ始めた美瑛富士

 

美瑛岳を回りこんでいくと道の左手に美瑛富士が全容を現しだした。
富士山に似ていなくはないけれど、富士山から苦情が出そうな山容ではある。

道の右手は美瑛岳、山頂が高い。

美瑛岳
美瑛岳

 

美瑛岳は見る方向によって姿を大きく変える山。
東西から見ると鋭く尖り大変な迫力を感じさせるし、南北から見ると台形のどっしりした山に見える。

やがて道は十勝岳からオプタテシケ山に続く縦走路に合流する、そこが美瑛富士のコルだ。
コルから眺めると、あちこちに薄い踏み跡が見あるが一本しっかりした道が山頂へと続いている。

初めての山頂目指して礫地の道を登り始める。
礫地と思っていたが意外と花が多い。
今の時期、花はすでに無いけれどかなりの植物が地面を這っている。
コマクサの葉も幾つも見られた。
カミさんは道路に生え出した小さなコマクサの葉を石で囲んで保護している。

登ること約30分、美瑛富士の山頂である。
初登頂の山頂からはオプタテシケ山が大きい。


美瑛富士山頂から石垣山からオプタテシケ山の山並み

 

カミさんは十勝岳もオプタテもトムラウシもそっちのけで、東の方向
「あれニペソツよね!」
8月に念願の初登頂を果たしたニペソツ山を同定して嬉しそう。

そしてやはり苦労した芦別岳を漂う雲の中から見つけ出し
「やっぱり芦別岳も素敵よね!」

苦労して登った山は一味違って当たり前なのだ。


オプタテシケ山の右側には、石狩岳やニペソツ山が連なっている

 

いつの間にか雲が湧き出し富良野から美瑛、旭川方面は雲海の下。
一部はオプタテシケ山や美瑛岳まで覆い隠そうと立ち上がりだしている。
雲で表大雪の山々が隠され気味なのがやや残念だ。
山頂直下には美瑛富士避難小屋が見えている。

山頂から見る美瑛岳は台形のどっしりした姿だ。
私達が美瑛富士に登っている間にコルから取り付いたのだろう、美瑛岳に登る登山者の姿が豆粒になって見えている。

美瑛岳
美瑛富士山頂からの美瑛岳

 

山々が雲に隠されないうちに記念写真、雲さんチョット待っててね。

記念写真
美瑛富士山頂にて

 

美瑛富士の涼しい山頂から展望を存分に堪能し、美瑛岳へと足を向ける。
その前にもう一度山頂からの展望だ。

展望
美瑛富士から北東方面の展望

 

迫力の岩峰

コルまで降り、美瑛岳へ岩混じりの急斜面に取り付いていく。
徐々に大きくなる美瑛岳は近づくにつて鋭さを増し、迫力満点。
火山であり、岩峰なのだと実感させられる。


美瑛岳
迫る美瑛岳山頂

 

ほぼ登り詰めると稜線を十勝岳へ向かう縦走路から外れ、美瑛岳山頂へ向かう。
稜線からは南側の爆裂火口の凄まじい姿が怖いほど。
愛別岳近辺の地獄谷に似ている光景である。


爆裂火口
美瑛岳南側に広がる爆裂火口

 

美瑛岳山頂には二組の登山者達。
雲はどんどんその量を増し、十勝岳も先ほどまで居た美瑛富士も隠してしまった。

山頂の一角に腰を下ろし、パンやゼリー、ドライフルーツなどでお腹を満たす。
一枚羽織らないと涼しいぐらいだ。

ふと雲が流れ十勝岳が垣間見えた、諦めていただけにやはり嬉しい。

十勝岳
雲から顔をのぞかせた十勝岳

 

そして美瑛岳から鋸岳に続く荒々しい稜線も姿を見せた。

稜線
爆裂火口を取り囲む荒々しい稜線

 

美瑛岳山頂でゆっくり休み、再び姿を見せた十勝岳をもう一度眺めて下山に移る。
荒れた礫岩の斜面だ、慎重にゆっくり降りよう。

十勝岳
十勝岳の勇姿を目に焼き付けて

 

慎重に!

爆裂火口を左に見ながら急な礫岩の斜面を下っていく。
気を許すとズルズル滑り危ないこと。
慎重にゆっくりと思うが、急な下りだから止まるのにも苦労する。

尾根からの下りも急で段差も大きいからなかなか大変だ。
ようやく降りてきたポンピ沢で一休み、顔を洗って元気を取り戻す。

大きな函を慎重に通り、雲ノ平を行く頃には疲れもピークだ。
紅葉したタデの葉が黄色やオレンジに輝き励ましてくれる。

歩き出して約9時間、爺婆には限界の時間なのかもしれない。
自分の体力を承知していないと、とんだ迷惑をかけてしまうかもしれない。
心して行動したいと思う。

 

やばい!

先を歩くカミさんの山靴の踵がパカパカしている。
何だと止まって点検すると、右足の踵が剥がれそうになっている。

「やばい!」取れたら大変、歩けなくなってしまう。
生憎、針金は持っていない。
いざとなったら紐で固定するしか方法は思いつかない。

取れないことを願って、避難小屋分岐からの道を戻る。
幸い、なんとか車まで戻ることが出来た。
C'Kすると、ほとんど剥がれ落ちそうだった。

感謝を込めて新しいものに変えよう。
捨てる前に綺麗に洗ってあげなくては・・・。

 

 

オジロワシ歌壇

 

・柿右衛門の磁器おもわする濃淡の
      麗しき朱よ がれ場の御蓼

・眼前に青陵望めば登りたし
      谷をはさみて誘う山道

・秋の気配肌が感じる山頂に
      飛べない蝉かザックを登る

 

 

 

 



 

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