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眺望を求めて!
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避難小屋先の登山口には広い駐車場、すでに一台が止まっていて一人の男性が登山準備中。
挨拶をすると、オヤッ!という顔つきで「オジロワシの・・・方ですよね。いつも見ています」。
準備をしながら一しきり山の話に花が咲く。札幌のS さんと言われ、やはり伏美岳の大景観を期待しての早朝登山だそうだ。
迷惑でなければご一緒にとの申し出、断る理由は何もない。
同好の士とあらば、私としても心強い。喜んでご一緒することにして歩き出す。
私より一回りはお若く、服や装具を同系色の象のマークのブランド品で統一しているダンディな方である。
何度も歩いた伏美岳の道、懐かしい優しい気持ちで歩ける。
水場の小沢を渡り道が南に向きを変えると、4合目まで変わることのない急傾斜。
Sさんの歩調に合わせ、おしゃべりしながら高度を上げていく。ダケカンバやミヤマハンノキの樹林は花も紅葉も無く少々寂しい、ひんやりした気温だけが秋の気配だ。
低い斜めからの朝日を受け、オオカメノキの紅葉しだした葉が透けて輝き美しい。
朝日を受けて輝くオオカメノキの葉
S さんの歩調は決して速くはないのだが、何だか私の調子が上がらない。
時折歩調を緩めて配慮してくれているのが判るだけに申し訳ない気持ちである。調子が思わしくない時、景観のない樹林帯の登りは気分転換が難しく辛いもの。
やっと見え出した妙敷山と色づきだしたナナカマドやミネカエデに元気をもらおうと一息つく。
妙敷山と色づきだしたナナカマドとミネカエデ
気分を変えたくて、先を歩かせてもらう。
いつも通りとはいかないが、自分のペースで淡々と登っていく。
大きなダケカンバの枝が地面を這っている6合目を通り、妙敷山が目の高さに近くなれば山頂までもう一頑張りだ。
見覚えのあるこんもりしたハイマツを潜れば待望の伏美岳山頂だ。
「オオ〜!」思わず歓声が上がる。素晴らしい!、秋色をまとった日高の山々が出迎えている。
オレンジがかった明るい茶色に染まったピパイロ岳と戸蔦別岳を始めとする山並みに息を呑む。
伏美岳山頂から秋色のピパイロ岳(右)と戸蔦別岳(左)
幌尻岳と北戸蔦別岳・1967m峰に雲が掛かっているが、それも決して邪魔ではない。
秋らしい澄み切った空気感、どこまでも見え気宇壮大になれる日高の山並み、美しすぎる。妙敷山の向こうにはどっしりした十勝幌尻岳から札内岳、エサオマントッタベツ岳が逆光を受け落ち着いた表情で立ち並んでいる。
妙敷山(左手前)とその奥に十勝幌尻岳、札内岳(中央)、エサオマン(右)
縁あってご一緒したS さんと山頂写真に収まる。
ご一緒したS さんと
伏美岳の西側ピパイロ側に場所を移し、ゆっくり景観を堪能する。
ピパイロ岳が指呼の間、見た目には近いが歩けば3時間はかかる厳しい道だ。
所々に走る赤や黄色の紅葉前線が美しさを想像させる。
存在感あるピパイロ岳
札内岳とエサオマンを眺めていると登った時のことが鮮明に思い出される。
もう訪れるのは無理かもしれない、可能な時に登っておいて良かったと心から思う。
札内岳(左)とエサオマン(右) 遠くにカムエクや1839峰の姿も
S さんから問われるままに山座同定やカムエク、1839峰の話などをしていると、「1839峰が見えるそうですが、どれでしょう?」
「カムエクの丁度南ですから見えないのでは・・・」
でも、カムエクの左側に1839に似たシルエットが見えている。気になって帰宅してから調べてみたら、伏美岳から1839峰は見えるのだった。
「S さん、ゴメンナサイ。やはりあれが1839峰でした。」それにしても視界抜群、遙か太平洋も見えている。
と言うことはペテガリや神威岳、楽古岳も同定はできないけれど見えてるということか・・・。
十勝幌尻岳の左遠くには太平洋が見えている
伏美岳山頂でゆっくりすること約1時間、幌尻岳に掛かっていた雲が取れ始めた。
秋色が際立ち美しい。これで赤がもう少し映えれば大雪にも負けないのだが・・・。
幌尻岳や北戸蔦別岳も姿を現した。
ピパイロ岳から1967峰、北戸蔦別岳、戸蔦別岳、幌尻岳がグルリと半円形を描いて佇み、山また山の世界である。
ピパイロ岳〜戸蔦別岳
目線を北東から東に移すと剣山と十勝平原が静かに広がっている。
剣山(左)と広大な十勝平野
風は弱いが空気はさすがに冷たく、1時間以上山頂に居ると寒さを感じだす。
凄すぎる大景観に心から酔いしれ、大満足で下山することに。
急な尾根道を淡々と下る。
段差の激しい下り坂は痛めている膝に厳しい。時折見かけるナナカマドの紅葉に膝を休ませつつ、ゆっくりと下山した。
ナナカマドの紅葉
素晴らしい景観を見せてくれた伏美岳、さすが北日高屈指の展望でした。
ありがとう。そして御機嫌よう。ご一緒していただいたS さん、有り難うございました。
またどこかの山でお目にかかりましょう。