ニトヌプリ (1080m)  

ニセコ   2015.7.17(土)   晴れ


 

アンヌプリ

 

 

ニトヌプリ

7月17日(土) 朝8時半、私達はニセコの五色温泉にいた。
リハビリ登山の第二弾として五色温泉から大沼そしてニトヌプリをのんびり歩こうという趣向である。

お天気は快晴! 空は青と言うより青黒い。
ただ暑くなりそうな予感も・・・、暑さに極めて弱い北国体質を嘆いても仕方ない。
暑くならないこと、ダニや蚊が居ないことを切に願いつつ出発準備だ。

ご承知のようにニセコにはアンヌプリ・チセヌプリのように「◯◯ヌプリ」と付く山名が多い。
もちろんアイヌ語が語源で「山」という意味である。
アンヌプリが絶壁にある山、イワオヌプリが硫黄のある山、チセヌプリが家の形の山と云うのはなるほどと思わせる。

今回訪れるニトヌプリは森のある山と言う意味だというが、どうもよく理解できない。
ニセコの山々はどれも深い原生林の森を持っている、取り立ててニトヌプリの森が深いわけではないしどちらかと言えばニトヌプリ自体が持つ森林は浅い方ではなかろうか?
ニトというアイヌ語に他の意味があるのかと思ったが、良く分からなかった。
ご存じの方が居られましたら、お教え頂けると嬉しいです。

 

忘却の彼方

イワオヌプリや大沼付近を歩いたのは20年近くも前のこと、ほとんど平坦だったという記憶しかない。
取り付きの階段の記憶ははっきりしていたが、階段まで少し歩くことや階段を過ぎてからゴロゴロ石の結構な登りがあることなどはすっかり忘れていた。

最近、固有名詞を思い出せないことがとても多くなった。
家での会話も「あれ、それ、ほら」などの使用頻度が高くなりまさに老人家庭なのである。
それだけなら諦めようもあるのだが、歩いた山のこともすっかり忘れるようでは情けない。
これも認知症の始まりか? ちょっぴり切なく悲しい思いだ。

五色温泉
登山口から見る五色温泉と昆布岳

 

山道にはツバメオモトがこんなにと思うほど多い、花はすでに終わっているが・・・。
花の時期や艶艶した青い実が目立つ時期はさぞかし楽しめることだろう。
この時期、見頃を迎えているのは「アカモノ」だ。
道の両側に咲き出したばかりの勢いのある花が垂れたり広がったりしながら沢山。

一山に一つ、旬の花に出会えれば幸せだ。

アカモノ
アカモノの花


思ったより蚊など虫が少ないのも嬉しい、時間はたっぷりあるし疲れたらコース短縮も思いのままの行程だ。
気楽にのんびり会話を楽しみながら、イワオヌプリや大沼との分岐へと進んでいく。
いちごが赤く色づいていたので一つ口に入れてみた、あまりの酸っぱさに口がひん曲がってしまった。

20分位もあればと思っていた分岐まで40分、焦る必要は全く無いのに内心焦る自分が可笑しい。
分岐を左に入ってすぐにザレ場の下り、目指すニトヌプリの全容が正面に現れた。


ニトヌプリ(右のピークが山頂)

ザレ場の下り、その記憶も消えていた。
固定されているザイルの助けを借りて慎重に降りる。
「間隔開けて、ゆっくり慎重にね!」

ザレ場
いやらしいザレ場の下り

 

降りた所はイワオヌプリとニトヌプリに挟まれた隠れた小天国、湿地性の草地と少岩峰が点在するとてもよい雰囲気の場所だ。

しばし佇み、静な別天地を心ゆくまで堪能する。

小岩峰
別天地を思わせる小岩峰

 

草地にはイソツツジとマルバシモツケが沢山、盛りを過ぎているのが残念だが遠目には綺麗。
ゴゼンタチバナも小さな群落を作って咲き競っている。


ゴゼンタチバナ

 


暑さに・・・

小岩峰のあるコルからニトヌプリへの登りが始まる。

最初はジグを切りながら大斜面を登っていく、斜度は然程感じないがとにかく暑い。
笹原の刈分道で日陰がない分暑い夏は大変だが、冬はきっと素晴らしいゲレンデに変身するのだろう。
まとわり付く虫が少ないのが救い、これで虫に攻められたら敵前逃亡間違いなしだ。

ジグを登り切ると一旦平坦になり足場の悪い小さな沢型を越え、後は山頂めがけて一直線の登りとなる。
暑さのせいか頭がボンヤリしてくる。
ゆっくりで良いのだから休み休み登ればよいのに、この程度の山との思いで一気に登り切った。分岐から40分、実質30分であった。

山頂に着いたが、何時ものような達成感はなく無気力状態、カメラを取り出す気力もない。
カミさんも何となく疲れた様子で石に座り込んでいる。
そんなに厳しい登りでもなかったのに気力体力共に使い果たしてしまった感じなのだ。
やはり9ヶ月のブランクは体力・筋力をそんなにも衰えさせてしまったのか?

避けようもないカンカン照りの日差しの中、暑さと疲れで二人共ただただ座り込み呆然とした時間を過ごした。

しばらくして気力を振り絞り、カメラを取り出して周囲を見渡す。
真夏のギラギラした日差しの中、視界は素晴らしく良い。

取り敢えずニセコの主峰であるアンヌプリとイワオヌプリを。
双耳峰の端正なアンヌプリと白く剥き出しの火口壁のイワオヌプリ、本来なら相容れない者同士が仲良く同居している風情でもある。

アンヌプリ(右) とイワオヌプリ

 

反対側には道路を挟んでチセヌプリ。
優しい女性らしい山容、その奥に続くニセコ連山のシャクナゲ岳や白樺山は山陰に隠れ、目国内岳と岩内岳の一部が望まれている。


チセヌプリ、右に岩内の町と日本海

 

遠くに目を転じれば、南には昆布岳と有珠山、洞爺湖の中之島、さらにはオロフレ山と先週登った来馬岳の大景観の広がっていた。

昆布岳
ニトヌプリから南の眺望

 

南西方向には道南の狩場山や遊楽部岳の大きな山塊が横たわっている。
駒ケ岳の姿も小さいながら確認することが出来た。

狩場山
狩場山と遊楽部岳などの道南の山々

 

そして西側には岩内の町と日本海、積丹の山並みが以外な近さで見えている。

岩内
岩内の街並みと積丹

 

お昼ごはんにしようと思うのだが、食欲が湧かずいつもの私達らしくない。
仕方なく山頂付近に咲く花を求めて歩いてみる。
ゼンテイカが名残の花を咲かせていた。

ゼンテイカ
ゼンテイカ

 

黄色いハナニガナは生きの良い旬の花を咲かせている。
シロバナニガナも数は少ないが咲いていた。
同じ仲間のハナニガナには目もくれないカミさん、このシロバナニガナは好きなのだそうだ。

シロバナニガナ

 

痙攣

暑さと疲れに打ち負かされた私達、帰路はとにかく安全第一だと意思疎通。
チセヌプリとのコルへ降りて大谷地経由で大沼、そして五色温泉へという当初計画は即変更、往路を素直に引き返すことにした。

下山の前に記念撮影、気力の笑顔である。

記念
ニトヌプリ山頂にて

 

意識してゆっくり慎重に降り始める。
それでも下りは下り、早いし楽である。
余裕も出て、ハナニガナを愛でながら鼻歌も出てくる。

右太ももの内側がピクピクピクしたと思ったら次の瞬間動けなくなった。
攣ったのである。
右足が棒のようになって動かない、動かせない。
カミさんが「大丈夫? 動かないで!」と駆け寄ってくる。
痛めていた右膝を再び痛めたのかと思ったらしい。

痛みも激しい、動かない右足の角度を少しづつ変えて痛みを感じない所を探す。
2〜3分すると痛みも落ち着いてきた。
腰を下ろして太ももをマッサージ、さらに2〜3分すると何事もなかったように治ってしまった。

やはり筋力が低下しているのだ、これまでのリハビリでは足りないということがわかっただけでも収穫だ。
再び意識してゆっくりと下山を開始。
だがその後も、ザレ場の登りと登山口近くの下りの2箇所で同じ右太ももの内側が痙攣し一時動けなくなった。

騙し騙し駐車場に戻ることが出来ひと安心したが、自信喪失、受けたショックは計り知れない。

途中の湧水で顔を洗い、冷たい水を頂くと気持ちもシャッキとしてきた。
ニセコの道の駅では気持ちも体も何時もと変わらない位に回復、お腹も空いて食べ残しのお弁当を平らげた。

 

熱中症

帰宅してからカミさんが「軽度の熱中症で痙攣することがあるらしい」という情報を友人から得て来た。

そうなの? と熱中症について調べてみた。
暑さの中激しい運動で汗を大量にかくと水分不足に陥り熱疲労と言う倦怠感や頭痛などが生じ、水分を補給しても塩分不足だと熱痙攣という筋肉の痙攣を引き起こす。

体の怠さ・頭痛、立ちくらみ・顔のほてり、筋肉がピクピクする・こむら返り・手足の筋肉が攣るなどが熱中症の初期症状なのだそうだ。

確かに水も塩分も摂らなかったし、思い起こすと状況や症状が似ている。

根底には9ヶ月のブランクによる筋力の低下があるのは言うまでもない。
それに加えて水と塩分の不足による軽度の熱中症によって、なんとも言えない不快な倦怠感と右足の痙攣が引き起こされたのかもしれない。

地道なリハビリに励むのと同時に、水分と塩分の補給に意識したいと強く思った。

 

 

オジロワシ歌壇

 

・真昼間の風にささめき光合う
       緑のニセコは異国の香り

・陽の色を含みて清し緑陰に
       ザック下ろして良き風を待つ

 

 

 

 

 

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