来馬岳
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リハビリ登山
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来馬岳
最初のリハビリ登山の山として選んだのが、オロフレ峠の南にある来馬岳。
オロフレ峠がすでに標高930mもあるので、そこから辿る稜線は概ね平坦で膝への衝撃も少なくて済む。
記憶では所々お花も見られ、苔むした木々やシダの類が美しかった筈。
それらを楽しみながら一日を過ごせればと考えたのだ。オロフレ峠へ向かう国道の展望地からは洞爺湖などが眺められ今日一日の天気を保証してくれている、まずは出だし快調だ。
国道展望地から見る洞爺湖、昆布岳方面
峠の花
オロフレ峠で入念に膝サポーターなどを装着して登山準備。
だがここでは出発前に見ておくべきものがある。
それは最近、峠に人工的に植えられた山の花達。
この日もヨツバシオガマ・ゼンテイカ・チシマキンバイ・チシマフウロなどが咲き、チングルマが白い穂先を風に揺らしていた。
ゼンテイカとヨツバシオガマ
ゼンテイカの濃い黄色が青空に映え、ヨツバシオガマの花も陽の光に透けてとても綺麗。
ヨツバシオガマ
チシマキンバイはそろそろ終わりの時期を迎えつつあり寂しいが、最後の輝きを見せているかのようだ。
チシマキンバイ
木洩れ陽
駐車場で一緒だった人達は皆オロフレ山へと向かっていく。
南下するのは私達だけだ。駐車場から道路を挟んだ南の斜面を一登りすれば、すでにそこは来馬岳へ続く稜線で、カルルス山から来馬岳へ続く山並みが歓迎してくれている。
辿る稜線と来馬岳(左)
道は基本的に笹の刈分道だが、良く整備されてあり気持ち良く歩ける。
背に低い樹林帯にはナナカマドやダケカンバが横に枝を広げ、木洩れ陽が下草を照らしている。
クネクネと曲がりくねった枝、厳しい風雪を耐えた風格が感じられる。
直径50cmを越えるナナカマドの木もあり、見事さに唖然とする。この時期、花は多くはない。
それでもコケイランやキソチドリなどのラン類、シダやコケ類の瑞々しい緑、タニギキョウの濃い緑が木洩れ陽に照らされ輝く様は惚れ惚れするほど美しい。
タニギキョウ
カルルス山
小1時間ゆっくり歩いて行くとカルルス山だ。
どういう訳か稜線の途中のこんな所に入山届のボックスが置かれている。
もしかしたら鉱山町付近からの道が通じているのかもしれない。
カルルス山頂直下の分岐
カルルス山の立派な山頂標識は健在だった、営林署等が立ててくれたのだろうけど立派すぎて少し引いてしまう感じ。
ここでしばらく小休止、ずれたサポーターを直し小腹を満たす。カルルス山を過ぎると気持ちの良い草地、時期が良ければいろいろな花が楽しめる場所だろう。
サンカヨウ、ツバメオモト、ハリブキなどが沢山。
そして一旦960mコルへ降る直前に大きな岩、ここから来馬岳が良く見えるが登別方向から雲がわき出し来馬岳を隠そうとしている、「お願いだからちょっと待って!」
来馬岳
ダニと花
下りでは膝に負荷がかからないよう十分注意を払う。
遅くても良い、歩けることが大事なのだ。道端にハイオトギリとオオタカネイバラが咲いていた。
やれ嬉しやと立ち止まり、じっくり鑑賞そして写真撮影。
ハイオトギリの花
突然、カミさんが「ダニよ!」と大声。
見るとズボンを数匹のダニがよじ登っている。
すべての動作を即刻中止して、お互いを点検。居るわ居るわ、スボンはおろかシャツの袖などにも。
笹に触れた時などに飛び移ってきたらしい。
柔らかい土に鹿のひづめの跡が幾つも付いていた、鹿が増えればダニが増える。
まさに憂いていた現象が道東や日高のみならず道央圏にも着実に波及しているのだ。ダニが居ると思っただけで、あちこちが痒く堪らない。
二人共、首筋などに手をやりながら、「大丈夫かな? 居ない?」と落ち着かない。草陰深くに咲くオオタカネイバラを撮る時は、膝を付き腹ばうのでバラの棘は痛いはダニは怖いわで、オチオチしていられない。
オオタカネイバラ
咲き始めと旬を過ぎた花では花の勢いも色も大分異なる。
花でも人間でも歳と取るということは、こういうことなんだとすんなり理解できる変化の様である。
オオタカネイバラ 少し旬を過ぎていた
来馬岳山頂
ダニに振り回され大騒ぎしながらしばらく歩くと、見覚えのある来馬岳山頂だ。
ザックを下ろし改めて入念なダニC'K、お昼ごはんは二の次だ。沸き上がってきた雲のせいで、ただでさえ見通しの良くない来馬岳からの展望はひたすら虚しい。
でも無事に歩けただけで良しとせねば・・・。
手作りのお弁当が運動した後のお腹に美味しい。
来馬岳山頂にて
おしゃべりを楽しんでいると雲の隙間から室蘭の山並みが見え始め、鷲別岳の向こうに内浦湾(噴火湾)を挟んだ道南の駒ケ岳が姿を現した。
ラッキー! 駒ケ岳を始め山座同定に時間を過ごす。
鷲別岳(室蘭岳)の向こうに駒ケ岳の姿が
ズームアップしてみると、あの大きな内浦湾が無いかのように近くに見え驚く。
鷲別岳と駒ケ岳
安全第一
ゆっくり休んで帰路につく、もちろん安全第一・ゆっくり慎重にだ。
帰路ではオロフレ山を見ながらルンルン気分の筈だが、しつこい雲が山を隠している。花や緑を探し楽しみながら帰路を歩くが、ダニにも警戒を怠らない。
数分おきに「居た!」と見つけては立ち止まり払いのける。来馬岳で最大の傾斜であるカルルス山手前を登り切ると待っているのが大岩。
よじ登って周囲を見渡せば、樹林の中とは違って気持ちもおおらかになる。
大岩にて
ようやくオロフレ山に掛かっていた雲が取れ始めた。
南側や東の風不死岳・樽前山は隠されているが、なかなかの景観に大満足。
オロフレ山
オロフレ峠近くまで戻ってくると、羊蹄山と尻別山が迎えてくれた。
「リハビリ登山、無事終わって何より」と祝ってくれているかのようだった。
羊蹄山と尻別山(右) 左にはニセコ連山
リハビリ登山も無事下山、膝も少し痛みはあるものの異常はない。
駐車場で嫌なダニを二人でお互いを何度もC'K、お腹や肩を這っている奴を見つけ食われる寸前で撃退に成功した。
9ヶ月ぶりの山はやっぱり気持ち良く楽しかった。
今後しばらくはカミさんの監視つきで、無理のないリハビリ登山を続けようと思っている。
オジロワシ歌壇
・そそられる雲追いきたる来馬岳
呆けてばらけてため息二つ・耐えきたる歳月刻む岳樺
曲りし枝の若葉もいとし