浮島湿原
上川の浮島湿原は白滝と跨いており道北と道東の接点に位置している。
標高870mの溶岩台地にある高層湿原で周囲3Kmほど。
その名の通り、沼には浮島が存在している。高層湿原って標高が高い所にある湿原と思っている方も多いのではなかろうか?
寒冷な地では草木が枯れても分解されず堆積されていく、蓄積された枯れた植物は長い年月を経て泥炭化し、その上を苔や草が覆い、それが枯れてさらに堆積されていく。
その繰り返しで水面より泥炭層が高くなり、ミズゴケなどを中心とした栄養の乏しい湿原へと変化していったのが、高層湿原なのだそうだ。だから高層湿原は一般的に寒冷な北国に多く、泥炭地で土壌は酸性かつ貧栄養、植生は多様性が少ないかわりに貴重なものが多いのが特徴らしい。
私は北海道の湿原では雨竜沼や沼ノ原、沼ノ平、原始ヶ原などに何度も足を運び、2014年に道北の松山湿原を訪れてその素晴らしさに感激した。
今年も松山湿原を訪れてみようと計画中に近くに浮島湿原があるのを知り、合わせて訪れることにしたのだ。
浮島湿原への入り口
湿原へ
札幌方面からだと旭川・紋別自動車道の浮島インターを降り紋別方向へ2.5Kmほど走るか、国道273号線で上川を経て、浮島トンネル手前から右の林道に入り約20分で上記写真の湿原入口へ。
駐車場も完備されトイレも設置されている。
林野庁が設置した立派な案内看板を読み、湿原の概要を頭に入れて出発だ。
お天気は昨日までの大雨は止み、深い霧に覆われているが晴れてくるという予報である。湿原までは約1.6Km、ウッドチップが撒かれた歩道はクッション入りで歩きやすい。
極めて緩い登りで感覚的には平地と一緒。
トドマツやダケカンバの林が気持ち良い。
歩きやすい歩道が続く
道端に花は少ないが、ヤマハハコが咲き出したばかりの清楚な花を見せていた。
ヤマハハコ
幻想的な雰囲気
歩道を歩くこと30分弱、浮島湿原に足を踏み入れる。
霧が晴れず、辺りは遠くのアカエゾマツが霞むなど幻想的な雰囲気だ。
霧で幻想的な気配が漂う湿原風景
浮島とはどんなものかと沼を観察する、水面に草の塊が小さな島のようになっているのがある。
きっと枯れ死した植生土壌の上に生えた草や苔の塊が水底に接地しないうちに切り離されて動く島のようになったものなのだろう。
奥の小さな草の塊などを浮島と言うのだと思う
今回の浮島湿原で最も期待しているのが、ヒツジグサ。
白い清楚な花が水面に浮かんでいるのをぜひとも見てみたいと思っているのだ。そのヒツジグサの葉が沢山水面に浮かんでいる。
でも花の姿はない。
良く見ると、蕾が水面に立ち上がっているのが幾つも・・・。
ヒツジグサの葉
時期を選んで訪れたつもりだったが、今年はまだだったのか。
70も沼があるそうだから、1つぐらい咲いているのもあるだろうと歩みを進める。トキソウが盛りは過ぎているが点々と咲いている。
霧に霞む中、鮮やかなピンクが一段と映えるようだ。
トキソウ
周囲が明るくなり、霧が晴れ始めたようだ。
幻想的な霧の湿原も良いが、やはり晴れた清々しい景観が一番だ。
晴れてきた浮島湿原
景色が見えるようになって、松山湿原との大きな違いに気がついた。
それはエゾマツが自然な姿ですんなり立っていること。
松山湿原のそれは、強い風のせいで捻じれ曲がり、枝は一方にしか伸びていなかった。浮島湿原は強い風に晒される所では無いのだろう。
穏やかで伸びやかな風情である。
湿原の花
次第に晴れてきた浮島湿原をのんびり散策。
点々と花が咲いているが、種類は多くない。トキソウの他には、コガネギク、タチギボウシ、ウメバチソウ、モウセンゴケとスゲやイグサが目立つぐらい。
でも霧に沈んでいた花は、露をいっぱい付けて可愛らしい。
コガネギク
ウメバチソウ
浮島湿原で気がついたことがもう一つある。
それは晴れても沼の水が黒いこと。
日差しがあれば青く輝くと思っていたが、日を浴びても浮島湿原の沼の水は黒いまま。
不思議だな〜? と思っていて湿原を流れる小さな流れを見て気が付いた。
モール温泉のような黒茶色の水が流れていたのだ。
沼の水もモール温泉のような黒茶色の水なので、日差しを浴びても青くならず黒いのだろう。水面に影を落とすタチギボウシもなかなか可愛い。
タチギボウシ
期待していたヒツジグサ、残念ながら一つも咲いていなかった。
あと数日で咲きそうな蕾はいくつもあったのに・・・。
蕾はいくつも見られるのだが・・・
残念な気持ちはあるのだが、それでも湿原は気持ちを穏やかにしてくれる何かを持っているようだ。
もう嫌だではなく、また来たいと思わせる何かがあるのだと思う。
湿原を堪能しながら歩く
お天気はすっかり回復し、日差しも強くなってきた。
湿原の景観もそれにつれて変わっていく。
湿原は晴れも、霧も、雨も、似合う所。
そんな印象を強くした。
晴れた浮島湿原の様子
期待していたヒツジグサは見られなかったけれど、浮島湿原はとても良い所。
季節を変えて訪れてみたいと思わせる湿原である。でも次に来るときは綺麗なヒツジグサの姿を見せてほしいな!
と思いつつ浮島湿原を後にする私達に、「私もいるのよ!」とトキソウが見送ってくれていた。
トキソウ
オジロワシ歌壇
・点在の池塘に涼風生まれ来て
未草数多の蕾をみする・早朝の浮島湿原霧晴れて
擬宝珠の花すがしく映す
函岳 (1129m)
浮島湿原を下山したのがお昼前。
そのまま松山湿原を訪れようかと思ったが、どんどん良くなるお天気に利尻山が見えるかもしれないと函岳に行ってみることにした。函岳は美深の北東に位置する山で、山頂に気象観測用のレーダードームがあり、その建設や保守用の道路が利用できるのだ。
ただし、国道から約32Kmのダート道を延々と走らねばならない。
道幅も狭く神経を使う、ダートで滑るから曲がり角では特に注意が必要だ。山頂直下の駐車場まで車で入れ、山頂まではたった100mほど。
雨上がりの大景観は?
函岳山頂から 右に利尻山が霞ながら見えている
周囲の大半は雲海に覆われ、それはそれで素晴らしい。
でも雲海に邪魔されて日本海もオホーツク海も隠されている。でも期待の利尻山は霞んではいるが、その姿を見せていた。
もう少しクッキリだと申し分ないのだが、見えただけでも良しとしよう。
なにせ昨年はサロベツ原野から利尻山が見えなかったのだから・・・。
利尻山 影絵みたいだが・・・
無粋なレーダードムだがそのおかげで歩かずに来れたのだ、文句は言わずオホーツク方向をバックに記念撮影。
オホーツクは見えなかったが
しばらく待っていると、美深市街地が雲海の間から顔を覗かせた。
右に美深の街並み、左が名寄方面
浮島湿原と函岳からの景観を堪能した私達、名寄名物のもち米大福などを楽しみ、翌日の松山湿原を夢見たのでした。
オジロワシ歌壇
・雲海の彼方の青き利尻富士
三脚立てて撮らんと粘る・涼風の函岳右にはオホーツク
左に利尻の幸運に会う