関東の秋旅

 

東京・日光・房州など   2015.11.8(日)〜13(金)

 


 

苔と紅葉

 

 

プロローグ

11月初旬、とある式典に参列するため夫婦で東京都心へ出かけることになった。
せっかく行くのだからと式典の他に、私は日光東照宮や成田山新勝寺の見物、カミさんは親友との再会、さらに以前から興味があった房州「いすみ鉄道」乗車などを計画した。

一連の式典スケジュールは綿密に組まれており、朝から夕方まで。
慣れない正装と格調高い空気に緊張を強いられ大層疲れたが、それらを遥かに超える感動を味わうことが出来、参列して良かったと心から感じた。

このページで式典の細部をレポートするのは控えさせて頂くが、参列したご婦人方の大半は色留袖で早朝からの着付けや慣れない和服での一日を気力を振り絞って努められた様子、さぞお疲れのことであったろう。
我がカミさんも当初は着物を持参するつもりだったが、色々大変だろうと洋装に変えたため比較的元気で過ごせたのはなによりだった。

正装
昼食会会場で

 

 


 

 

日光東照宮

 

東照宮
絢爛豪華さを誇る東照宮

 

高校時代からの親友に会いに行くカミさんと別れ、一人で日光東照宮へ向かう。
日光周辺の山は何度も歩いていても、有名な東照宮には行ったことがなかったのだ。

東武の特急を利用すると2時間弱で日光へ、意外に近い。
昼近い時間帯で散策する外国人観光客の姿も多く、大半は中国人で2〜3割が西洋人という感じ。
ただ東照宮などの寺院はバスツアーの人達や修学旅行の高校生達が目立ち、外国人は概ね半数といった感じである。

東照宮一帯は家康を祀ってある東照宮と日光山にある寺院の中枢である輪王寺、家光の廟である大猷院から成り立っている。
宗教的関心はないし、人混み嫌いな私なので、これら三社を適当に歩いて惹かれたところを重点的に見て回ることにした。

 

紅葉

北海道ではとっくに終わり東京ではまだまだだった紅葉が、日光では真っ盛り。
寺院地区で木々の種類が多いため紅葉も多くの色が混じりあって、北国の紅葉を見慣れた私には新鮮に見える。

境内の紅葉
交じり合うとりどりの色が美しい

 

見物客からは見向きもされない境内の片隅、鄙びた寺の屋根に紅葉の落ち葉が降り積もっている。
ここでは極く普通の光景でも北国に住む私には珍しく、心が揺さぶられ魅せられる。

屋根の紅葉
何でもない情景だが・・・

 

境内の池に浮かんでいる色とりどりの落ち葉、一枚一枚の表情が微妙に違っている。

儚さなのか、静かに物事を考えたくなる風情・雰囲気がそこにはある。

池の落ち葉
不思議な魅力に満ちている池の落ち葉

 

鬱蒼と立ち並ぶ杉の巨木、流石に歴史を感じさせる佇まいで素晴らしい。
そして杉の巨木と同じぐらい目立つのが、苔。
何種類もの苔が色や形を変え、地面に岩に幹に屋根に灯籠に張り付きアクセントとなっている。

苔
苔と落ち葉

 

苔や落ち葉など目立たないもの同士がお互いを引き立て合い、一つの景観を創り出していく。
植物や物だけでなく、人としてもそうでありたいと私は思う。

鄙びた道
華やかなものは無くても清々しく美しい

 

道端の溝に紅葉の落ち葉が水底に沈んでいる。
まだ生々しいもの、すでに分解され始めているもの、姿形は様々だがどれも穢れなくいやらしさを感じさせずに果てていく。
その姿に汚いとか穢らわしいとか微塵も感じない。
ありがとうと思う、そんな歳になってきた。

水底の落ち葉
水底に果てる紅葉

東照宮周辺には華やかで派手な建物やそれに負けない紅葉が至る所にあって美しいのに、余り目立たない紅葉ばかり紹介してしまった。
私はこんな風情が好きだから、人工物に囲まれている生活より自然の中が安らかで好きなのかもしれない。

外国人、特に大声で傍若無人に闊歩する人達には絵葉書のような綺麗な紅葉が大人気だ。
楽しむのは良いことでどんな楽しみ方をしても自由だが、他の人達への配慮も忘れないようにしてもらいたいものだ。
いやそれ以前に、他人への配慮という言葉があることから学んで欲しいと思う。

 

権威の象徴

東照宮は家康を神と祀る宮社だが、見方を変えれば徳川幕府の権威の象徴でもある。
そのせいでこれでもかと言うぐらいお金と時間を掛け、贅を尽くして建てられている。
家康は質素を重んじた武士と言われているが、本当にこのような施設を望み喜んでいたのだろうか。

ともあれ私のような凡人は、余りの豪華絢爛さに圧倒され威圧されてしまう。
「民は愚かに保て、よらしむべし、知らしむべからず」の考え方の基本だろうか。

例えば寺院の門構え、重厚な金箔が分厚く貼られた門扉、極色彩の精緻な彫刻は、内部は一体どうなっているのかと恐れさえ抱かせ考える意欲を遠ざける。

門構え
重厚で金張りの門と極彩色の彫刻の塀

 

塀も敷地を区切るただの塀ではない、葵の御紋や模様は金張りで、ひたすら権威を誇っている。
京都の寺院の塀も4本線やら5本線で格式を表しているがまだ控え目で、ここまで来ると嫌味すら感じてしまう。

塀
塀の装飾

 

左甚五郎作と言われる「眠り猫」や「三猿」の彫刻の前は人だかり。
そんなに凄いものなのか、私には良く分からないがアイドル並みの人気である。
東照宮ご本社は大混雑でラッシュ並み、並んでいる内に馬鹿らしくなり嫌気が差して見物は諦めた。

日光東照宮、国宝だけあって素晴らしい建築物には違いないが、私にはあまりにものケバケバしさと人混みで何が何だか分からない建物にしか映らなかった。

 

日光東照宮周辺を初めて訪れた、重厚な雰囲気を漂わす杉並木を始め豊かな自然は歴史を感じさせ素晴らしい。
またいつか訪れる機会があれば、ゆっくり自然に浸りながら味わい直してみたいと思った。

 

 


 

浅草界隈ブラ散歩

 


隅田川駒形橋からの夜景

 

 

隅田の夜景

日光から夕方浅草に戻り一泊、浅草寺や隅田川周辺の夜景と朝の散策を楽しむ。

浅草に一人で泊まるなんて初めてのこと。
若かりし頃なれば、浅草六区名物のショーでも見、もつの煮込みで焼酎を楽しんだのだろうが、今はそのどちらにも興味が無い。
名物の一つであるかき揚げの盛り合わせで夕食を楽しみ、浅草寺や仲見世、隅田川べりを歩いて夜景などを楽しんだ。

夕闇迫る浅草寺はライトアップで華やかに浮かび上がっている。

五重塔
ライトアップされた浅草寺五重の塔

 

仲見世は観光客がひっきりなし。客引きの声が響いている。
ここでも外人客が圧倒的、来日する観光客の増加ぶりが実感できる。

浅草寺
暗くなっても人の往来で賑やかな浅草寺

 

次いで隅田川沿いの土手を散策、11月だというのに川風が気持ち良い。

高層ビルとスカイツリーのショータイムを吾妻橋近辺から見物だ。
恥ずかしながらスカイツリーを間近で見るのも初めてだ。


吾妻橋付近からのスカイツリー

 

今回の旅は撮影が目的ではないのでレンズも三脚も持ってきていない。
うす暗い場面に弱い私のカメラが、最も苦手とするシチュエーション。
川べりの手すりや建物の壁を頼りに息を止めてシャッターを押す。

夜景
駒形橋付近からの土手の柳と夜景

 

早朝散歩

朝7時過ぎ、サラリーマンが急ぎ足で通勤する姿が散見されるほかは閑散とした仲見世や浅草寺境内をのんびり散策。

人でごった返す日中と違い、静かで落ち着いた景観だ。
境内もよく見ると手入れが行き届き清々しい。
寺院の建物も品よく重厚に見える。

浅草寺
浅草寺五重の塔

 

引き続き隅田川沿いの通称「助六夢通り」をのんびり散歩。
葉を落とした桜並木、犬の散歩や健康歩きの人達が挨拶を交わしながら行き交っている。
下町の日常の生活がそこにある。とても良い感じで大好きな雰囲気だ。

朝の逆光を浴びてスカイツリーがスックと立っている。


東武線鉄橋付近からのスカイツリー

 

駒形橋方面へ戻る途中、アサヒビールのガラス張りビルの壁面にスカイツリーが影を落としているのを発見。
面白いと一枚撮影だ。


ガラスの壁面に映るスカイツリーの影

 

早朝の浅草散歩を楽しんでから「いすみ鉄道」と養老渓谷を訪れるため、カミさんと待ち合わせている千葉「五井駅」へと向かう。

いすみ鉄道、養老渓谷、成田山新勝寺は、次頁でご紹介することにしよう。

 

次頁に進む

 

 

 

Menuへ
Page Topへ

 

 

 

 

inserted by FC2 system