儚くも強たか
晴れた穏やかな日は気温も10℃を超えるようになり、いよいよ春の妖精たちの芽生えが始まった。
エゾエンゴサク、カタクリ、アズマイチゲ、ニリンソウ、ケマンなどが土から頭を出し、翌日には葉を伸ばし、蕾を膨らませ始める。彼らは皆、駈歩で花を咲かせ子孫を残したら跡形もなく姿を消し、夏の花へとバトンを譲る。
自らの立場をわきまえ、我を張らず、威張ることなく、精一杯生きているのだ。
エゾエンゴサク 今年一番咲きの花
我が家の庭で、今年一番咲きの花はエゾエンゴサク。
淡い鮮やかなブルー、ひっそり岩陰に隠れるように咲いている。
楚々とした花の美しさが私たちの心に響き、愛おしい気持ちにさせるのだろう。
カタクリ
気の早いカタクリが一輪、エゾエンゴサクとほぼ同時に花をつけてくれたが、さすがに寒そうで痛々しい。
カタクリの花の側では、アズマイチゲが葉を精一杯伸ばしている。オキナグサも白い産毛に包まれた黄緑の葉を伸ばし蕾を膨らませる。
オキナグサ
こんなにも可憐な小さな花たち、毎年決まって少しづつ勢力を広げて芽を出し花を咲かせる。
儚く弱そうに見えながら実はしぶとくて強い。一番花が咲いた翌朝、目覚めると一面の雪。
寒波がやってきて、花の妖精たちを襲ったのだ。
雪にも負けず、跳ね除けて咲くカタクリ
お天気の神様も酷なことをなさる。
雪をどけてあげようと見に行くと、カタクリは雪を跳ね除け力強く立ち上がっている。
素晴らしい。拍手・拍手である。
アイヌネギとアマナアイヌネギ(行者ニンニク)やアマナも負けるものかと雪を跳ね除け濃い緑の葉を力強く立ち上げている。
霜にもやられてしまう園芸種の花々とは違う、北国の春の妖精たちの強さが感じられる。
ミズバショウ
正確には春の妖精の部類には入らないのかも知れないが、ミズバショウも春の花の代表格。
例年だと後1週間位からが見頃になるのだが、どうせ暇なのだからと様子を見に行ってみた。まず訪れた千歳湖は、ひっそりただずんでいるだけで花も何もない風情。
枯れた葦とハンノキが目立つ湖面にはもうすぐ帰るカモたちが泳いでいるだけ。
ひっそり静かに佇む千歳湖
千歳湖近くの湿原にも足を延ばす。
たいして期待もしていなかったが、そこにはミズバショウが見事に咲き出していた。
ミズバショウの咲き出した湿原
まだ開花したばかりで純白な仏炎苞も花も綺麗で清々しい。
その表情をアップで撮ってみる。淡く優しそうな表情を狙ってみた。
優しい表情のミズバショウ
「綺麗だよ〜」「美人ですね〜」「かわいそうに怪我したのかい?」花たちに声をかけつつ、のんびり見て回る。
誰も居ない湿原ならではの特権だ。
群れ咲くミズバショウ
雪解け水の流れは清くさぞ冷たいだろうに、ミズバショウたちは気持ち良さげに群れ咲いている。
逆光気味の光に浮き出たような花が艶めかしい。
可憐に咲くミズバショウ
ミズバショウの群れ咲く湿原は小鳥のさえずりも響き、甚だ気持ち良い。
ただ気を許すと、ズボッ!と嵌まってしまうので要注意である。湿原の一角には大きくなったフキノトウの花や大きく膨らんだコバイケイソウの芽が目につく所もある。
小さな流れにはセリやクレソンの小さな芽もたくさん、まだ摘むには早すぎる。
フキノトウの花 と 大きく膨らんだコバイケイソウの芽
小1時間かけて湿原を一巡り、多種多様な表情をした旬のミズバショウたちを堪能させてもらった。
ミズバショウの湿原を堪能
いよいよ北国にも春の花のシーズン到来。
これから6月頃まで、場所を変え高度を変えて楽しめる。今年は昨年と違い、体調もまあまあ。
思い切り訪ね歩いて楽しみたい。
多くの皆様と情報を交換したり、思いも寄らない所でお会いしたいものである。