時空を越えて
4月を迎え北国にもようやく春の訪れが感じられるようになってきた、ただ春を実感させてくれる花々を楽しむには今しばらく時間が必要だ。
日ごとに色濃くなる芽吹きの緑など春の気配を感じながら散策するのは楽しいが、人は欲深いもので咲き乱れる花々を見てみたいと思う。
そこで一足先に、季節と時空を超えた別世界に行ってみることに。
そうそれは、温室。今回訪れたのは岩見沢公園にある大きな三角形の温室、「色彩館」である。我が家から小1時間ほどの距離にあるこの温室、まだ周囲には所々雪が残っている。
公園の名物ともなっているバラ園のバラは、雪囲いに包まれた冬姿。
果たして温室の中はどうなのか、期待いっぱいで訪れてみると・・・。
桃源郷
蒸せ返るほどの暑さはないが、暖かいぬくぬくした温度に保たれたガラス張りの室内。
燦々とした陽光に眩い室内には、緑が満ち溢れている。
そしてほのかに香る花の香り。まさに春爛漫の桃源郷。
見慣れない花々が目に飛び込んでくる。
ヒメアリアケカズラ入り口付近に咲いていた花は、ウツギの仲間だなと思った。
付けられている表示を見ると、夾竹桃科で「ヒメアリアケカズラ」と言う毒草だそうだ。
最初から大外れ! 知ったかぶりはご法度だ。こちらは花屋さんでもお馴染みとなった「カラー」。
清楚で私も好きな花。
カラー切り花では無い群咲く花たちをどう切り取るか、他の花が入らなくてカラーの雰囲気が出せる構図は?。
逆光気味の所から花の白さを強調してみる。
白い花弁の質感がなんとも言えず艶めかしい。
カラー
床にたくさん置いてあるのは、鉢植えのランの仲間たち。
今はポヒュラーになって珍しくもないが、薄いピンクのシンビジュームの色香に心を奪われた。
さして好きなわけでもないのに、人の気を引く花の妖艶さに降参である。
シンビジューム
「こんな花があるのか?」 初めて目にした時、その姿と派手な色に驚いた記憶がある。
極楽鳥という珍しい鳥に似ていることから、極楽鳥花とも呼ばれているそうだ。
ストレリチア羽のように見える鮮やかなオレンジの花びら、くちばしのように見える細い青の花びら、これが虫や鳥を呼ぶどんな仕掛けになっているのか? 不思議な花ではある。
南米やアフリカの花に驚かされた目に、馴染みの花は目にも優しく映る。
樹高4mもあるハナミズキ、薄ピンクの花をたくさん付けている。
ワシントンのポトマック川に贈られた桜のお礼としてやってきたアメリカの花、すっかり日本に馴染んで多くの人たちに愛される花となった。
ハナミズキ温室を訪れていた人たち、思いは同じなのか安心したような表情でハナミズキの花を愛でている。
私たちもその傍らで一息いれる。
ちょっと休憩、花をアレンジしたカンバスもおしゃれ。
春一番に咲くマンサクに似た花があった。
ただ色が、薄い黄色ではなく赤紫。
ベニバナトキワマンサクベニバナトキワマンサクという花でマンサクの花と似ているが、別の種なのだそうだ。
綺麗な赤というか赤紫の花と葉が美しく印象的。
調べてみると最近は人気で生垣などにも利用されているらしい。
鮮やかな色をちりばめたような「ランタナ」という花、色の変化が多様なので「七変化」と言う日本名がついている。
ランタナ(七変化)黄色、赤、ピンク、オレンジそれらが組み合わさた様々な色の花が咲く。
カミさんに聞くと、日本でも人気で園芸店で普通に売られているとのことだった。
そして形が珍しいと言えば、このアンスリュームも人後に落ちない花であろう。
初めて見た時、私は天狗のお面を連想したものだ。
アンスリュームこの花も赤、白、紫、ピンク、緑、黄緑と多種の色が組み合わされた花が咲くという。
南アメリカやアフリカなどには私など想像もできない色や形の花が咲くらしい。
園内をほぼ一周したところで、見慣れた花を見つけた。
椿の花だ。それも藪椿などのごく普通に見られる一重の赤ではなく、八重咲きのオトメツバキ。
上品な薄いピンクの八重の花が可愛らしい。
オトメツバキ子供の頃、よく見た花。懐かしい感じさえする花である。
四国をお遍路で歩いた時、椿の花で赤く染まった山道を感動しながら歩いた記憶が蘇ってきた。
あれは3月から4月にかけての時期だったから、今頃きっと咲いているのだろうな。
オトメツバキ
そして最後に気になった花が、ミカンに似たこの花。名前はメモしたつもりだったのに忘れてしまった。
細長い葉が特徴のようなのにミカンの仲間だという。
確かに花はミカンの花に似ているが・・・。
?名を忘れたので帰宅後調べてみると、サザンクロスというオーストラリアの花に似ているような似ていないような・・・、結局よく分からなかった。
世界は広い、果実はどんな味がするのだろう?多くの人たちは一回りしてからもう一回りして、気になった花を何度も眺めている。
私たちももう一度、カミさんは思い浮かんだ短歌の構想を練りながら、私は写真を撮りながらだ。
思い浮かんだ短歌の構想を練る。 考えすぎると眉間にシワが寄るよ・・・
北国の春の妖精たちが咲き出すのを待ちきれず訪れた岩見沢の色彩館。
山野草の花が少し判る程度の私にとっては、知らない珍しい花ばかりで驚かされた。だけど違和感など感じることもなく、とても暖かい穏やかな気持ちで温室を後にすることができたし、また来たいとも思った。
多分、色彩館のスタッフの人たちの花を思う気持ち、来館する人たちに楽しんでもらいたいという気持ちが満ち溢れていて、それが私の心にも染みた結果なのだろうと思う。
温室の関係者の皆さんに感謝である。北国でもGW前頃には山野草の妖精たちが花を付け始める。
いよいよ自然の中で花を楽しめる。
どこへ行こうか、計画を立てるだけでもウキウキする。
昨年と違って、今年は膝の調子もまあまあだ。大いに楽しむぞ!