今回の旅も今日が実質的な最終日である。
二人とも体調を崩さず予定していた以上に中身の濃い旅ができたのは幸運であった。
最終日の今日も爽やかに目覚めた、体調も良い。感謝・感謝である。
一乗谷朝倉氏遺跡
簡単な朝食をとり、道の駅から1Kmと離れていない一乗谷朝倉氏遺跡を見に行く。
戦国時代、朝倉氏は将軍家や公家・高僧と親しく、多くの文化人が一乗谷に移り住み華やかな京文化が開花して「北の京」と呼ばれた時期もあった。
しかし織田信長と対立、戦に大敗し滅ぼされ一乗谷は壊滅、朝倉氏は歴史の表舞台から消えていった。遺跡は街道脇にあった武家屋敷や寺院、民家の遺構と山側にあったお城の遺構を見ることができる。
一乗谷朝倉氏遺跡にある唐門
唐門は形を残している唯一の遺跡、格調を感じさせる立派なものだが、それがかえって侘しさ切なさを強くしている感さえある。
朝倉家当主が暮らした屋敷跡、庭園跡などもあるけれど、素人には何が何だかわからないというのが正直な印象だった。
庭園跡
一乗谷川沿いの山深く穏やかな山村、朝倉家が滅亡した為復元は進んでいないが今も住民たちの想いには深いものがあるようで、当時の面影を残す跡地に自主的に手が入れられ保存に努めているようだった。
永平寺
永平寺は朝倉遺跡から車で15分、この近さだから永平寺と朝倉家の間に何らかの繋がりがあったのではと思うが、どうなのだろう。
以前来た時と変わっていない門前町の街並み、お寺に近いお店の駐車場へ。
8時半の開門を待って参拝に、参拝者はわずか数人だ。
開門前に境内の一葉観音様と
全般説明のお坊さんから、永平寺は観光の寺ではなく修行の寺であることが説明される。
撮影禁止が多い寺院内部もライトと三脚を使わなければ撮影自由というのが嬉しい。
ただし、修行僧を主題に撮影するのは認められていない。
重厚な建物は回廊で結ばれている (仏殿)
広い掃除の行き届いた境内や室内、自然と気持ちが引き締まりなんだか自分たちも修行僧の一人になったような気がしてくる。
掃除の行き届いた廊下
丁度新緑の時、境内の木々の緑が建物とマッチし、それだけで美しい。
建物の内外で修行僧たちが念入りに掃除や草取りをしている。.
静かな佇まい
僧たちの素早く静かに礼儀正しく、立ち働く所作は凛々しくも美しい。
トイレに入るにも合掌する、何事も自分のための修行なのだと信じる表れでもある。
仏殿ご本尊仏殿でお参り、ここでも修行僧が祭壇まわりの清掃作業を丁寧にされていた。
永平寺は伽藍が回廊で結ばれている。
冬の積雪時を考えてのものだろうが、合理的。
確か能登の総持寺も回廊で結ばれていた記憶が、禅宗は合理的な考え方なのかしら。
回廊の階段
永平寺の傘松閣という大きな部屋の天井に、花鳥彩色画が描かれている。
修行の禅寺に相応しいのかどうか分からないけれど、144名の画家が描いた230枚の天井画は華やかだ。その一部をご紹介。
あまりの数に圧倒され、熱心に見ていると首が痛くなる。
厳しい雰囲気を感じながら永平寺の伽藍を参拝し、外に出て境内を散策。
森閑とした境内、木漏れ日が新緑を煌めかせ神々しい気配、重厚な建物と良い対比である。
永平寺境内
報恩塔、多宝塔のようなもので形が美しい。
報恩塔
大きな杉に囲まれているのは勅使門、勅使が遣わされた時は石段も綺麗にするのかな。
勅使門
境内を奥に進んでいくと玲瓏の滝がある、玉のような音の滝と言う意味か。
有り難いような気分になるが、人工の滝と聞くと・・・。
玲瓏の滝
案内のお坊さんが言っていた通り、永平寺は修行のお寺。
国宝の襖絵や仏様がある訳でもない、名だたる庭園がある訳でもない。
それなのに一本芯が通った気配を感じさせる何かがある。
それを感じたくて多くの人が訪れ、短期間の修行体験をしたりするのだろう。永平寺は日本人としての原点を見出し、探すことの出来る場所であると感じた。
越前そば
福井市内でガソリンを給油していると、係りの女の子が「遠くから来たんですね。福井名物を何か食べました?」
「福井の名物って、海のものなの?」
「一番は越前そばでしょう。ぜひ食べていってください」もらったパンフレットを見れば、何軒ものお蕎麦屋さんが紹介されている。
女の子が勧めた店もあったけど、製麺工場が直営で開いている工房が気になり行ってみる。さすが製麺工場、研究され高い技術で作られた打ち立ての蕎麦は味良し・喉越良しで、とても美味しかった。(食べるのに夢中で、写真を撮るのを忘れてしまった)
工場の直売店で、お世話になっている方やご近所にお土産を。
せめてもの気持ちを伝えるお土産選びも結構大変なものだ。
三方五湖
帰りのフェリーは敦賀港を真夜中に出る。
福井や鯖江あたりでゆっくり過ごしても大丈夫なのだが、何かあれば大変と敦賀市付近で待機することに。敦賀市に戻っても時間は半日もある、時間潰しと言っては申し訳ないが三方五湖へ行ってみる。
美浜町と若狭町の海沿いにある5つの湖、その総称だ。有料だが道があり、近くの小山に登れ5つの湖と日本海を眺めることが出来る。
三方五湖三方五湖は地質や水質など科学的には興味深いことも多いようなのだが、一般人には色の異なる湖が5つある程度の湖だ。
三方五湖山頂は展望台や恋人の聖地だのが作られ公園化している。
至る所に鍵が、一個400円です
三方五湖の全景をパノラマ写真にしてみました、スクロールしてご覧ください。
三方五湖は漁業が盛んであるが、梅の栽培も盛んで各種製品が販売されている。
乾燥した梅干しが売られていたので、山歩きに良いと購入。
帰宅後食べてみたら塩味猛烈、血圧が上がりそう。
いくら何でも、味見してから販売してほしいな。
敦賀市内散策
夕方、敦賀市内に戻り市内を散策。
気比の松原は静かな海辺の松林、市民の憩いの場であるらしく散歩したり休息したりしている。
松林そのものは、やや手入れ不足でせっかくの景観を損ね気味。
維持管理するにも先立つものはお金だから仕方ないか。
気比の松原
気比神社は大きな鳥居がある立派な神社、訪れた時間が遅かったのか閉門されていて参拝は叶わなかった。
神社境内も薄暗かったせいもあるが、十分手が入っておらず少々荒れ気味。
せっかくの立派な神社、何とかならないものか。
気比神社
市内のメイン通りを駅まで散歩、駐車が各店舗前の道路に面して直角に停めるようになっていて面喰らう。
道沿いに銀河鉄道999のモデル像が点々と展示されお洒落だ。
でも、敦賀市は寂れている。正直な感想である。
商店街は開けている店の方が少ない、シャッター通り寸前の様相だ。
比較的大きなスーパーが一軒、他の店が閉まっているためか混み合っていた。敦賀市はこの近辺で大きな町、大きな港もあるし原発もある。
それなのに経済的に苦しいのか、工場が誘致できない理由があるのかな。
金ヶ崎緑地は芝生の公園となっていて快適、敦賀湾のさらに奥まった入り江のよう。
海保や警備艇の桟橋もあり治安は安心、犬の散歩や子供達で賑やか。
道路を挟んで煉瓦造りの建物もあった。
赤れんが倉庫
雰囲気が良いので、夕食後もしばらく金ヶ崎緑地で時間を費やすことに。
夕暮れとなり敦賀湾の夕陽が綺麗。見る間に色が変わっていくのが面白い。
敦賀港に夕陽が沈む
夜になると公園はライトアップされ、ロマンチックな雰囲気。
若い人達が連れ立って港のあちこちに居るのを車から眺め、「あんな時もあったのにね〜」
午後9時前気付くと赤レンガ倉庫の上に満月、倉庫の照明も淡くいい感じ。
ダメ元でチャレンジだ。
月と赤レンガ倉庫
どうやら午後10時、少し早いがフェリー乗り場へ出向くとしよう。
旅の間、早寝だったから少々眠いのだ。
帰還のフェリー
苫小牧へのフェリーは、日付が変わって間も無く定刻通り出航。
あとは寝ているだけだ。明るくなって起き出しても、沿岸から離れて航行しているので見えるものは海と空と水平線。
晴れているのは有難いけれど、少し見ていれば飽きてくる。
フェリー船上で
上映される映画は全て見て、昼間の入浴、サロンデッキで読書とおしゃべり、他は食べるか寝るかだ。
午後4時頃、陸地が見えてきた。
地に足を着けて生きている人間だもの、陸が見えると嬉しい。
山も見える、岩木山のようだ。
岩木山
聞きつけたのだろう、乗船していた人達が展望デッキに出てくる。
船はゆっくり津軽海峡に入っていく。
北海道の山も見えてきてた、大千軒岳・一番手前は白神岳か、やがて丸山や函館山、駒ヶ岳の尖った山頂、恵山も見えてきた。デッキではこれから行く人、帰る人、夫々感傷を持ちながらの北帰行。
皆、北の大地を眺めている。
駒ヶ岳の横に太陽が沈もうとしている。
駒ヶ岳と夕陽
暮色の駒ヶ岳
噴火湾に入ると、羊蹄山、オロフレ山、徳舜瞥山・ホロホロ山そして樽前山も見えてきた。
帰ってきたぞ〜! 何でこんなに嬉しいのだろう?
落日
旅を終えて思う、思い切って行って良かった!
始めての所を何ケ所も訪れた。
改めて国宝の素晴らしさを再確認、やはり只者ではないわ。
一番感激したのは、奥琵琶湖の観音様。一目見て動けなくなるほど素敵だった。
三徳山の投げ入れ堂も感激ひとしお。汗もひとしお。
雨の瑠璃光寺の五重塔、あんな優しさに満ちた塔はほかには無い。山陰地方の良さもさわりだけだが味わえた、厳しい冬を耐え偲ぶから穏やかで優しく粘り強い寡黙な人達が多くいるのだ。
よく言われるけど、東北の雰囲気に少し似ていて好ましい感じがした。何より旅の間、お互いを思いやり、いたわり合って、二人だけで過ごした12日間。
これからの老後を送る際の、自信にも繋がるはず。良い旅だった。
もう出来ない確率の方が高いけど、健康と意欲を保てれば、まだまだ。
そう出来るよう、一日一日を大事に過ごしたいと思う。
オジロワシ花壇
・早朝の一乗谷は静もりて
石組哀れ郭公の鳴く・歳晩のテレビで親し永平寺
黒衣の僧はきびきび動く・夫と来し旅の終わりに賜るは
視界を染める真っ赤な夕陽・際やかな稜線あれは駒ヶ岳
遥かに羊蹄 嗚呼樽前も