山陰・山陽を巡る旅  第6日目

 

足立美術館、松江城、出雲大社

2016.5.15(日)   晴れ


 

お庭

 

 

安来の道の駅「あらエッサ」で目覚めた私達。
大山登山の疲れが幾分残っている、カミさんは足の張りを訴えている。
「昨日の今日なんて若い証拠。僕は明日ぐらいからかな〜」

今日は同じ町内にある足立美術館を最初に訪れるので、朝はゆっくりで良い。
道の駅は内海の東端に近い所、散歩がてらに内海までお散歩だ。


道の駅側からの内海

 

岸辺では近所の方が早朝から釣りをしている。朝ごはんのおかずかな?

散歩していると、ピカピカ光る若葉。
「柿の若葉よ。柿若葉って確か今から夏の季語の筈」とカミさん。

柿
柿若葉

確かに透き通るような浅緑が輝いている。
柿って果実は食用になるし、材木は家具に、葉はお茶代わり、柿渋は防腐剤ととても有用。
だから寒くて育たない北国を除いて全国各地で植えられているのだな。
確か柿紅葉って言葉もあったような・・・。

道の駅に戻って、ゆっくり朝食そして身支度だ。

 

足立美術館

足立美術館は今回の旅で二人共どうしても訪れたかった所。
庭と絵画の素晴らしいコラボレーションをこの目で見てみたかったのだ。

道の駅から美術館までは車で20分ほど。
開館は9時位だろうから、少し余裕を持って。

美術館に着くと、その駐車場の広いこと。初っ端から度肝を抜かれる思いだ。
正面玄関では、時間前なのに「清掃作業が終わっていない場所があるかもしれませんが、お待ち頂かなくてもお入り頂けます」
対応が気持ち良い! これは期待できるな〜。

館内では美術品の撮影は禁止だが、庭園は撮影OK。
急いで車にとって返し、カメラを。

 

庭園

館内の通路は幅広くゆったり、大きなガラス張りで明るい。
少し進むと有名な枯山水のお庭が横から眺められる。

お庭
枯山水のお庭を横位置から

 

工芸品や民芸品などの展示を見ながら、坪庭に出る。
坪庭と言っても、百坪は楽にある大きさだ。

坪庭
坪庭

ガラス越しにどの角度から見ても癒される造りになっている。
建物は控えめに、目立たぬよう工夫して配置されている。

坪庭
坪庭 

橋として用いられている石は自然石なのだろうか?
自然石ならこれだけで○百万、いやもっとするかも・・・。
年金暮らし老人の戯言である。

 

ぐるっと回り込むと、先ほど横から眺めた枯山水のお庭の正面に出る。
「おお!」あちこちから歓声が上がっている。

じっくりご覧頂こう。

 お庭
枯山水のお庭の右側半分

 

 

お庭
枯山水のお庭の概ね全景

 

 

お庭
少し角度を変えて

 

山を借景にして一体となった造り、中央の大きな立つ石から白砂が弧状に緩やかに流れそして広がっていく。
大河の一滴から滝となり渓流となり大河になって海へと流れ下るイメージなのだという。

それにしても、どの角度から見ても心を打たれる素晴らしさ。
落ち葉の一枚、ゴミの一つも落ちていない。
木々も剪定されたばかりのような風情である。
そして大きなガラスにも曇りの一点もない。
庶民的過ぎるかも知れないが、一体どの位の人手と時間をかけて手入れをしているのか、気が遠くなりそうな気分である。

 

枯山水のお庭をぐっと左に移動する。

 

お庭

このまま額縁に入れて飾りたい、そんな光景が広がる

 

お庭
右側から見るのと左側から見るのとでは表情は変わるが、美しさは変わらない

 

いや〜、全く噂に違わぬお庭ではある。
枯山水のお庭というと京都の寺院の庭か、お城の庭と思い込んでいたが、現代の日本で作られたお庭がこれほど凄いとは・・・。
このお庭を設計した人、実際に作った職人さん、どんな誇りを胸に秘めているのだろうか、もちろんこの美術館の創設者も。

お庭で
見ているだけなのに疲れてきて、ちょっと一息

 

枯山水の庭の斜め反対側にあるのが、池庭というお庭。
鯉が悠然と泳ぎ、枯山水とは違った美しさ・安らぎがある庭である。

池庭
池庭

 

足立美術館のお庭には、実際に水が流れ落ちる人工の滝が作られている。
高さ15mだから、自然界でも立派な滝。
そんなものが何気なく置かれているのだから、見る者が呆気にとられて当たり前。

お庭で
感動の連続に半ば放心状態

 

横山大観の名作「白砂青松」をイメージしたという、お庭がこれ。
その絵を知らない私には語る資格がないけれど、優しい穏やかな空気が流れているように感じた。

白砂青松の庭
白砂青松の庭

 

そして「生の掛け軸」と呼ばれる展示がある。
床の間の掛け軸としてお庭が山水画の絵ように見える工夫がなされている。

この写真、本当はもう少し上から、そして庭にピントを合わせて撮影しなければならなかったのです。
室内の雰囲気もしっかり写そうとして、失敗してしまいました。

掛け軸
生の掛け軸

 

絵画

足立美術館のもう一方の見所は絵画。
枯山水のある本館の二階に美術品がズラリと展示されている。

横山大観、川合玉堂、上村松園などの日本画の巨匠達をはじめ、数多くの日本画が展示されている。
特に大観の作品の多さには驚く、しかしよく本などで見る大作が少ない。どうしたのか?
説明書きがあり、大観の作品の主なものは札幌に貸し出し中とある。
何と! そこからやって来ているのに・・・。

艶聞が話題になり勝ちな上村松園、その婦人画は展示作品の中でも群を抜いていると感じられるほど素晴らしいものだった。

新館には現代日本画の作品を集めてあった。
花鳥風月の絵は古いのか、幻想的で抽象的な日本画は理解出来ないものもあったけれど、思わず立ち止まってしまうような素敵な絵も多かった。

また作者は忘れてしまったが、童画が多く展示されていて面白く感じた。

 

陶芸

北大路魯山人、河井寛次郎の作品が展示してある部屋もあった。
個性的な作品が多いように感じたが、私はこの両者にあまり興味を感じていなかったので正直よく分からない。
ただの陶芸家ではなく、書や詩歌にも精通されているなど幅広い才能をお持ちだったのだと改めて芸術家という方々を見直す良い機会になった。

安来が故郷の河井寛次郎ファンだというカミさん、食い入るように作品を眺めている。

 

見終わって

庭園も美術品も夫々それだけで一つの美術館として成り立つほど立派な美術館だった。
「庭園も一幅の絵画」との信念でこの美術館を作り上げた足立全康という方に敬服である。

庭園や美術品だけでなく、説明員や従業員達の態度も見事。
しっかり教育され、清潔で品性が窺える態度で接してくれ極めて良い印象を受けた。
これほどの美術館は日本いや世界でもそう無いのではと思わせる素晴らしさだ。

あまりの素晴らしさに触発されたのか、カミさん美術館に併設されているお土産屋さんから友人や子供達へ大量購入、宅急便で送ってもらっていた。
どうせお金を落とすなら、良い印象を得た所からにしたい。それが人情ってものだろう。

 

 

松江城

松江城
端正な表情の松江城

 

粋な行政

足立美術館の素晴らしさを反芻しながら、松江市に向かいお城を訪れる。
松江市は土日に限ったことだが、行政機関の駐車場を一般に無料開放している。

素晴らしい発想、他の市町村のお手本としてさらに利用者の利便を図っていただきたいものである。
私たちも県庁の駐車場に停めさせてもらい、歩いて松江城内へ。

 

天守閣

現在の天守閣が1600年頃に建てられたものと確認され、昨年2015年に国宝に指定された松江城。

徳川時代は代々松平家のお城、1640年頃松平直政が信州松本から入城したと聞いて烏(からす)城の愛称がある松本城を連想してしまう黒塗りのお城である。

先日見た彦根城と同じくとても立派な格式を持つ木造のお城、そして備蓄、防火、防御が十分考えられ完璧に近い、まさに闘う城。
華美な様式を排した、闘うための機能満載のお城であった。

天守閣最上階からは宍道湖がよく見える景観、山陰随一の名城と言われる所以でもある。

天守閣
天守閣からの眺め

 

少し角度を変えて

松江城
松江城

 

新緑に似合いの松江城

お城

 

高さのある石垣、目立たない所は小さく細かい石を使うなど経済性に対する配慮も

お城
石垣と天守

 

塩見横手

松江城北側のお堀沿いにかつての武家屋敷が立ち並んでいた地区がある。
良い所だと聞いて、足を向ける。
天守閣から北に延びる道を下っていく、あちこちで国宝指定記念と称して記念式典が行われているようだ。

カミさんがちょっと低血糖気味になったと訴える。
ちょうど小さな茶店がおだんこを焼いていたので、早速注文。
草餅に餡と味噌、お餅が美味しくペロリと完食だ。

女主人がカミさんが使っているハンカチを見て「それ可愛いし使い易いですよね、私も娘がプレゼントしてくれて使っているんですよ」
「まあそうですか私も。 パリのお土産かしら・・・」
女同士はすぐに仲良くなっておしゃべりに盛り上がる。
強い訳だ、男はこうはいかない。

主人
茶店の女主人

 

塩見横手は茶店からわずか数分の所。
武家屋敷も質実剛健、決して華美・威厳・風格と言ったものには拘らない風情で好ましい。


武家屋敷跡

 

お堀端の食堂でお昼ご飯、お堀を行き来する遊覧船を眺めながらの食事もなかなか乙なものだ。
食堂には障害者の方が働いていた、私達は諸手を挙げて応援だ。

お堀
お堀を行く遊覧船

 

お堀越しに見る天守閣も一幅の絵になる。

おほり
お堀とお城

 

松江市と松江城、しっとり落ち着いた雰囲気の街並みと質実剛健のお城が山陰の人たちの性格、お人柄を象徴しているように感じた。

当初の計画では宍道湖の夕日を眺めゆっくり散策を楽しもうと思っていたが、この日は猛暑日に近い暑さ。
ただでさえ暑さに弱い私達、とても街歩きなどとても出来ない。

相談の挙句、時間もあるので先に進みできれば海辺でゆっくりしたいと。

 

出雲大社

出雲大社

 

松江から宍道湖の北岸を通り出雲市へ、暑さは変わらずだけど車はクーラーが効くので大部落ち着き元気を取り戻した。

出雲市から出雲大社まで思ったより距離がある。地図で確認すれば一目瞭然なのに、なんとなく出雲大社は出雲市の真ん中にあると思い込んでいたのだ。

ちなみに出雲大社周辺の駐車場はどこも無料、多くの参拝客が毎日訪れ相当のお金も落とすのだから当たり前と思われるかも知れないが、ありがたいことだ。
私達は、古代出雲歴史博物館の駐車場を利用した。

 

大例祭

出雲大社は大変な混雑、参拝の人だけではなく茶会や生け花展、骨董市なども開かれている。
どうも大きなお祭りらしい、和服姿も目立つ。

5/14(土)〜5/16(月)は大例祭で、天候陛下から「御幣物」が下されるという。
とんだ時に、いや良い時に訪れられたものだ。
今日5/15(日)は、「神輿渡御祭」と言う神事が行われる。

祭礼の日に訪れるとは幸運なのだろうが、厳かな森厳な空気が流れる神聖な雰囲気の中でお参りしたいと思っていただけにその落差に怖気付く感じ。

そうこうしている中、神事に出会う。

神事
辺りをお祓いしながら

 

天狗が神官を従え、行列を先導していく。

神輿
神輿が担がれ運ばれて

 

続いて男衆に担がれた神輿が本殿へ。

馬に乗られた宮司が本殿へ静々と向かわれる。
もしかしたらこの宮司さん、昨年高円宮典子女王とご結婚された千家国麿さんだったのかもしれないな

神輿
祭殿へ

 

普段は閉鎖されている本殿の扉が開かれ、神輿は中に安置される。

そして本殿の前庭で神官達や来賓達が大勢並ぶ中、お祓いや祝詞が挙げられ、神事が行われていく。

 

参拝

神事の一部を見物した後は、自分たちの参拝だ。

大きな注連縄で有名な拝殿に戻り、心を込めて参拝。

私は健康に留意しながら前向きで積極的な人生を送る旨を誓い、見守っていただけるように。
カミさんは家族や子供達の健康と幸せを、特に次女の白血病を患っている猫ちゃんの回復をお願いしたようだ。

社
本殿の外周を巡る

 

次いで本殿に進み、参拝。
そして本殿の外周を回りながら、釜の社、蘇我の社、西十九社に参拝。
最後に神楽殿に参拝。

さすがに本殿の回りは静かで厳かな空気に包まれ、神聖な空気。
真剣にお参りしている方が多く、若い女性が異常とも思える熱心さで長い時間をかけお参りしている姿にも出合った。

出雲大社
大注連縄の前で

 

日御碕神社

時間は午後4時、少し涼しくなってきたし夕暮れまで時間もある。
日御碕神社をお参りして出雲市観光を終わりにしよう。

日御碕までは車で20分ほど出雲大社と違い、人気はひっそりしているがお社は歴史を感じさせ立派。


日御碕神社

 

神の宮と日沈宮の二つの宮が鎮座している日御碕神社。
天照大神と素盞嗚尊がお祀りしてある社殿、どちらも歴史と格式が感じられる。

大混雑の出雲大社と静寂の日御碕神社、何がどう違うのだろう?
素朴な疑問がわき上がってくる。

答えはわからないけれど、日御碕神社にも心を込め丁寧に参拝した。

 

灯台

日御碕神社からわずかな距離で日御碕。
日本海に浮かぶ灯台で名を馳せている。

うみねこの繁殖地「経島」から灯台に続く散策路を歩いて日本海の風情を少しばかり味わってみた。

灯台
日御碕灯台

 

柱状節理の美しい海岸、松林、青い空、そして白亜の灯台、絵になる光景が揃い過ぎ。

神々の故郷、出雲もいろいろな風情・景観を持っている。
剃られが相まって山陰地方特有の味となり、人を育てているのだと思う。

 

松江、出雲を駈歩で訪れた私達、この日は出雲市多伎町にある道の駅「キララ多岐」で宿泊。
ここは海水浴場、それを意識した開放的な作りになっている。
レストランやラーメン工房、ベーカリーなどもあって、バラエティー豊かな時間が過ごせる良い所だ。
温泉も近くにあり入浴してから私達が道の駅に着いたのは暗くなってからだったが、まだベーカリーが店を開いていて美味しく温かいパンを買い求めることができ嬉しかった。

 

 

オジロワシ花壇

 

・足立翁の指差す庭園絵のようで
        感嘆しきり白砂まぶし

・日本海に沈む夕陽の光る帯
        吾に届けど一首も詠めず

 


 

 

 

 

 

 

 

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