富良野岳 (1912m)

 

十勝   2016.6.26(火)   曇り・晴れ


 

十勝
上富良野からの十勝連峰

 

「山陰と山陽を巡る旅」から帰って、後片付けやら身の回りの始末をつけるとすでに6月。
そろそろ山の花のシーズンだと思っても、今年の6月は雨模様で寒い日が続き何日かはストーブを焚いたほどだった。

6月の最終週に入ってからやっと気温が平年並みに、記録をめくると2年前の6/24には富良野岳の花が真っ盛りとある。
2年ぶりの富良野岳も悪くない、予報と相談しながら訪ねてみることにした。

 

人気の山

早朝久しぶりの富良野岳へ、曇り空だが天気は良くなる方向だから崩れる心配はないようだ。
夕張から桂沢湖・富良野を経由してひた走る。

途中、夕張のシューパロ湖では朝日を背にした夕張岳のシルエットに息を呑む。
湖畔に車を止めて、しばらく見入っていまう。
ここは私のお気に入りの場所、通るたびに新たな感激に出会える場所でもある。

夕張岳
シューパロ湖の日の出

 

0830に富良野岳への登山口である十勝岳温泉に着くと、駐車場は満車状態。
大半の人たちはすでに出発していて、準備をしている人が数組。何となく華やいだ雰囲気だ。

花の名山「富良野岳」は、さすが人気の山。
皆さん、咲き誇る花を期待して来ているのだろう。
私たちも早速準備をして歩き出す。

 

ちょっと変?

登山届に記帳して安政火口へと進んでいく。
ナナカマドの白い花の向こうに、赤茶けた荒々しい岩肌が屏風のように立ちはだかっている。
化物岩や八ツ手岩、夫婦岩も健在だ。

安政火口まではゆっくり歩いて25分ほど、それなのに何だか変。
もう汗をかいているし、怠い感じ。
久しぶりの山だからと思うが、カミさんは何でもない様子。
と言うことは、私の体調がおかしいのか?

安政火口
安政火口分岐

 

安政火口からは上富良野岳・三峰山の山腹を緩やかに登りながら富良野岳へと進んでいく。
大した登りでは無いのに、気だるく辛い。
息も上がり加減だし汗も相当かいている。意識してゆっくり歩く。

6月の気温が低かったからか、例年より明らかに雪が多い。
小沢に残っている雪を何本も渡っていく。

雪渓
三峰山からの大きな雪渓で

 

この付近は元来花が少ない所だと記憶しているが、それにしても今年は一層少ない。
ショウジョウバカマがあるぐらいだ。


ショウジョウバカマ

 

果たして稜線上の花たちは咲いていてくれるのだろうか? 
不安がよぎる。おまけに体の不調にも不安が。振り返ると十勝岳も山頂部を雲に隠している。
花も景観も体調も全てがすっきりとなって、楽しく愉快な山行がしたいのに・・・。

十勝岳
十勝岳は雲の中

 

サンカヨウが咲いている、今年初めてのご挨拶。
ちょっぴり無理な姿勢でカメラを向けると、大腿部に負荷がかかりビリっと違和感と痛みが・・・。
でも耐えて、シャッターを切る。

サンカヨウ
サンカヨウ

 

「痛ててて・・・」両足の大腿部内側が攣っている、激しい痛みに襲われる。
堪らず座り込んで、足を伸ばしたりさすったり。

やはり体調がすぐれないのかも知れない。
「大丈夫?」カミさんも不安そう。
様子を見ながら、騙し騙し行くしか無いようだ。

 

やっぱり変!

歩き始めて1時間半、まだ富良野岳本体へも取り付いてもいない。
数分休んで痛みが治まるのを待って歩き出す。

雲に隠れていた富良野岳が姿を見せ始めた。このまま晴れてね〜。

富良野岳
富良野岳

 

階段で補修された登山道を登っていく、その途中で何度も太ももの内側がピクピク痙攣。
その都度、立ち止まり屈伸したり叩いたりする。
もう少しで花達が待っていてくれる筈、その思いが足を動かす。

歩き始めて2時間半強、三峰山との稜線分岐に出た。
稜線から見る景観は清々しいが、十勝岳は雲の中でダイナミックさはイマイチだ。
雲底があと200mも上がってくれれば、気持ちも晴れ晴れできるのだが。

稜線
稜線から十勝岳方向を見る

 

いつもならこの辺りから花が溢れるように咲いている場所。
それなのに一向に花の姿が見当たらない。
2週間ぐらい早い感じである。

周辺を探していたカミさん、数輪のチングルマを見つけただけだった。

チングルマ
僅かに咲き出したチングルマ

 

花も無い、景観もイマイチ、おまけに体調も優れずでテンションも上がらずグッタリだ。
「具合が良く無いなら、何回も登っているのだから山頂には行かなくて良いのよ」とカミさんから声がかかる。

素直にアドバイスに従おうかとも思うが、いくら何でも稜線には咲いている筈とも思う。
休んでいると縦走の人たちがデポしたザックを狙って狐が近寄ってくる。しばらく荷物番を引き受けながらの大休止だ。

 

すっごく変!

通常ならこの稜線分岐から山頂までは、花を存分に楽しみながらでも30分あれば十分な距離。

やっぱり行ってみよう。意を決して立ち上がる。
ゆっくり花を探しながら歩を進めるが、ちょっと大きな段差を乗り越えようとすると太ももが痙攣する。
それが何回も何回も。その度に立ち止まり足を伸ばしたりさすったり。

我ながら情けない、僅かに咲いている花を見つけては写真を撮る振りをして足を休ませる。

ミヤマキンバイ
ミヤマキンバイ

思い切り屈んだり足を曲げたりできないから、構図も何もあったものでは無い。
写っていれば良しとする、成り行き任せの撮影だ。

ハクサンイチゲ
ハクサンイチゲ

 

それでもハクサンイチゲが咲き出し、綺麗で可憐。
花のシーズン入りを宣言している。
日溜りの風を避けられる窪みには、エゾコザクラやミネズオウも咲き出している。

でも無理な姿勢は禁物、撮影は帰りと決めてゆっくり歩を進めた。
30分あれば十分な道を足を引きずりながら1時間掛けて山頂に到着。
出発から3時間半も要した今回の富良野岳、これまでの最長記録だ。

風の当たらない場所にそろそろと腰を下ろし、足をマッサージ。
筋肉や筋が悲鳴を上げて硬くなっている。かわいそうに・・・。
原因が分からないのが不安を増大させる。

そんな思いが天気にも乗り移ったのか、一向に晴れて来ない。
山頂は雲の中、時折雲底が上がり景色が見えるが雲が多く冴えない景観だ。

堺山
山頂から下ホロカメットク山(右)と堺山(左)  正面遠くに東大雪の山々

 

原始が原を眺めながら思い出話。ゼリーやドライフルーツ入りのパンが美味しい。
食べられるのだから体調そのものは悪くないんじゃない? それなら何故?
何時ものように場所を変えて眺めたり写真を撮ったりする気分になれない。

堺山の向こうに霞みながら大きな山並みが、然別湖付近の山々だろうか。
とすれば、大きな山はウペペサンケ山とニペソツかな。

 

慎重に

山頂に1時間、ゆっくり休みながら足のマッサージを続け少し回復したようにも感じるが、帰路にも予想以上の時間が必要だろう。

僅かに咲く花達に元気をもらいながら下り始める。
それでも踏ん張ったりすると、太ももが痙攣する。
小さなステップを刻むよう注意しながら慎重に下っていく。

エゾコザクラ
エゾコザクラ

 

エゾコザクラやミネズオウが、ほんの僅かだが咲き出し始めている。
エゾノツガザクラはまだ咲いていない。
ハクサンイチゲが一番多く咲いているが、本番はまだこれからだ。
全体としてはあと10日か2週間後が見頃になるのではないかと感じた。

ミネズオウ
ミネズオウ

 

暗示

何度かの痙攣を騙しながら、稜線分岐まで降りてきた。
ここでも一休み。
時間は掛かっても自力で降りなければ・・・まさかカミさんに背負ってもらう訳にはいかないのだ。

近い将来、体調が万全でもこんな調子で休み休み歩かねばならなくなる。
その予行練習だと思って行こうと笑いあう。

分岐で
稜線分岐で

 

三峰山から上富良野岳の山腹を下っていく、登りでは気づかなかったがショウジョウバカマやサンカヨウの他にもホロムイツツジ・コヨウラクツツジが所々に咲いていた。

ホロムイツツジ
ホロムイツツジ

 

十勝岳の山頂が見え隠れしだした、雲が少しづつ上がりだしたのだろう。
それだけでも気持ちが軽やかになる。

十勝だけ
十勝岳の山頂が見え隠れし、表大雪の雪模様も見え出した。

 

大きな段差では注意しているためか然程ではないが、何でもない所で痙攣したりする。
その都度立ち止まり足の屈伸や筋伸ばしをして軽減したら、また歩き出す。

数年後の常態を暗示しているかの状況を淡々と受け入れる。

三峯山
三峯山の稜線が綺麗に見え出した

 

安政火口分岐近くで一組のご夫婦から声を掛けれらた。
「ツガザクラが咲いていますよ」
登山道からは見えない一段高い場所。
日溜りの窪地にエゾノツガザクラが一株見事に咲いている。

お礼と言って場所を譲ってもらい、私たちも今年初のツガザクラにご挨拶。

エゾノツガザクラ
エゾノツガザクラ

 

降りにも2時間以上掛かったが、何とか無事に下山し一安心。
英気を養うべく、一路吹上温泉の白銀荘へ向かった。

 

自信喪失

白銀荘で宿泊の手続きを済ませ、早速温泉へ。
広々とした幾つもの浴槽、何時もなら気持ちも体も生き返る。
それがまるで湯あたりでもしたかのような、ぐったりした気分なのだ。

部屋に戻り夕食までお昼寝と横になる。
激痛に飛び起きた、右の太ももと左のふくらはぎが攣ったのだ。
こんなこと記憶にも無い、一体どうしたというのだろう。体に異変が起きているのだろうか?
脂汗で濡れた体を拭いながら、そんな不安に襲われ、頑強な体だという自信を打ち壊される。

焼き肉の夕食は美味しく頂いたが、二度目の温泉は遠慮してひたすら横になっていた。

 

大人しく

翌朝は快晴、気持ちの良い青空そして十勝連峰のくっきりした勇姿。
本来なら勇んで山歩きを楽しむところだが、さすがに昨日の今日。
とてもその気になれない、その気になったとしても絶対にカミさんが許してくれない。

大人しく引き下がろう。
せめて景色だけでもとコーヒーを沸かしポットに詰め、朝食は望岳台で。

望岳台の駐車場は満車状態、景色だけを観に来る観光客も以外と多い。
真っ青な空に二本の噴煙、雄大な景観に向かって登山者たちが歩いていく。

十勝岳
望岳台からの十勝岳

 

清々しい空気と景観、その中に飛び込めない自分が情けなく寂しい。

美瑛岳・美瑛富士・オプタテシケが朝日に浮き出ている。

美瑛岳
十勝連峰

 

そして富良野岳も今日はどっしりした姿を惜しげも無く見せている。


富良野岳
十勝岳から富良野岳へ続く山並み

 

パンとフルーツそしてコーヒーの朝食を望岳台で摂り、大景観に満足して帰路につく。

途中、上富良野の丘の展望や風情を楽しんだ。

畑
上富良野の畑 (ジャガイモと麦とブロッコリー)

 


十勝連峰
上富良野からの十勝連峰

 

起死回生

今回の富良野岳、花は早かったし体調も悪く、散々だった。

花情報だが、今年の花は2週間ぐらい遅れていると考えた方が良さそうだ。

体調が悪かったことも、思えば良い教訓になった。
膝を痛めて以降、山らしい山へ行っていなかった。
トレーニングはそれなりにしてきたつもりだったけど、当然以前ほどでは無い。

古希を過ぎ、体に変調を来すのは当たり前と言えば当たり前。
何事もない方がおかしい位だ。
これからは変調があればそれを素直に受け止め、適切に対処しながら乗り越えていかなくてはならない。
それが老人の知恵、無理を承知で他人様に迷惑をかける事態は避けなければならないのだ。

でも体力・気力を整え、調子の良い時は大いに山も楽しむ。
そんな生活が楽しめるよう、起死回生の思いで節制と鍛錬の努めようと心に誓った。

 

 

 




 

 

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