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どうかな?
何の根拠も無いのだが気分で、今年は旭岳周辺の紅葉を楽しもうと旭岳温泉へと向かう。
夜中に運転するのは怖いと、夕方自宅を出て21時過ぎには駐車場へ到着。
明日のお天気を約束するような星空に安心して眠りに就く。
早朝、寒くて目が覚める。 気温は4℃、夏用シュラフではちと寒かった。朝一番のロープウェイは0630発、6時頃から人が集まりだす。
登山客と思しき人は少なく、カメラマンや観光客が大半でダウンなど防寒着も万全だ。ロープウェイから眺める旭平付近の紅葉は進んでいて色も鮮やか、台風などで痛めつけられているのではとの不安も吹き飛んだ。
ロープウェイから見下ろす旭平付近の紅葉
姿見の池周辺
お天気は薄い雲がかかっていて視界も少し霞んでいるが、晴れそうではある。
まずは、人の少ない内に姿見の池の周辺を歩いてから今日のコースを決めることに。木々も草原も綺麗に色づき綺麗、台風で葉が痛めつけられているのかもと言う心配が無用のものだったのが何よりであった。
まさに紅葉真っ盛り
人の気配が無い姿見の池は、周りの緑を草紅葉色に変えて端正な旭岳の姿を静かに映している。
普段と変わらぬ姿だが、池の周りは草紅葉が綺麗
本州からのカメラマンが太い脚の三脚を立て、シャッターチャンスをじっと待っている。
粘り強さ・忍耐力は、カメラマンとしての必須の資質なのかもしれない。
忍耐力を維持向上させるために、ダウンパーカーやカイロまで持ってきているのだろう。
であるからして、山を歩くのが主目的の私とはそこが基本的に異なっているのだと思う。
私にはとても出来ない相談であり、カメラマンとしての資質が欠如していることを実感させられる。噴気孔の近くまで行ってみる。
穏やかで美しい紅葉とは異質な、厳しい表情の旭岳がそこにあった。
激しい噴気に囲まれ、厳しい表情を見せる旭岳
姿見の池から夫婦池方面へ、散策路脇の草紅葉が日差しに照らされ輝いている。
僅かな距離だが、姿見の池と夫婦池とでは旭岳の景観がかなり変わって見える。
何時もは気にもしていなかったのだ、じっくり見ることの大切さを改めて実感する。
紅葉の夫婦池と旭岳
コガネギクやオヤマリンドウなどはまだ咲いていると思っていたがすべて花殻と化し草紅葉に、シラタマノキの白い実だけが、たわわに実を付けていた。
裾合平へ
お天気はすっかり良くなり気持ちが良い。
夫婦池から旭岳に行くには道を戻らねばならず気分的に面倒、そのまま裾合平から当麻乗越方面のトレッキングを楽しむことにした。遊歩道から外れ登山道に踏み出すと、正面に当麻岳が大塚・小塚を従えてどっしり座しているのが目に入る。
裾野の緑に撒き散らされてたようなオレンジ、この時期ならではの光景である。
点々を散らばる紅葉、正面右は当麻岳
振り返ると、逆光を浴びて旭岳が眩いばかりの光の中に屹立している。
旭岳本体と爆裂火口に延びる稜線が暗く沈み、火口から立ち上る噴煙が霧のような濃淡を見せながら激しい動きを見せている。
これは絵になる、何枚か設定を変えながら切り取ってみた。
小さな画像では感じられないけれど、大きな画像で見ると実際に見たときより迫力や動きが感じられる一枚となった、本ページでお見せ出来ないのが残念なぐらい。
逆光の旭岳
そこここでチングルマの赤く染まった葉と白い穂、草や花殻の黄色、ハイマツや笹の緑などが、色の競演を演じている。
チングルマは夏の代名詞と言える花だが、秋もその名に恥じない活躍ぶりだ。
チングルマの赤い葉と白い穂が目立つ
チングルマを主役にアップで見てみると
チングルマの穂
裾合平までゆっくり紅葉を愛でながら約1時間。
道中では点々としか見かけなかったのに、休憩ベンチに数人の人達。
彼らは中岳温泉方面に行くらしい。大塚・小塚も間近に見え、広々とした雄大な景観が広がっている。
当麻岳と大塚
当麻乗越へ
裾合平を出ると間もなく、顕著な岩と池がコラボしている所に出る。
なかなか良い雰囲気だ。
岩場と池のコラボレーション
岩をハイマツとナナカマドが護衛するかのように取り巻いている。
ナナカマドの色の濃淡が微妙で複雑、石に張り付く真っ赤なウラシマツツジやコケモモとの対比も美しい。当麻岳に続く稜線近くに小さな水溜りがあり、真っ赤なナナカマドが一際映えていた。
真っ赤なナナカマド
当麻乗越へはピウケナイ沢を渡渉しなければならない、以前増水していて渡るのに苦戦した記憶があるがこの日は飛び石沿いに楽勝だった。
そして沢沿いの紅葉も滝と流れの共演で見事というよりほか言葉もない状態だった。
ピウケナイ沢の紅葉
自然の創り出す造形や色のグラデーションは何と繊細で精緻なのだろう。
さらに音や匂いの援軍まで付けているのだから、まったくもって最強軍団。
どんな芸術家でもカメラでも真似をすることの出来ない至高の芸術ではなかろうか。
ナナカマドの紅葉と滝が織りなす素晴らしい景観
まったり
ピウケナイ沢を渡って緩やかに登れば、岩の目立つ当麻乗越である。
眼前に天国を思わせる沼ノ平を見下ろす、気持ちの良い展望台だ。
当麻乗越から、秋色の沼ノ平を見下ろす
大休止と決めて岩に腰を下ろし極上の展望を一人楽しむ。贅沢の極みである。
まったりした贅沢な時間が流れる。
沼ノ平の全景
大沼・小沼、六の沼、五の沼、半月の沼が草紅葉に染められ平和で静謐な景観を見せている。
当麻乗越の岩場にはウラシマツツジが真っ赤に色づき、コケモモの実が赤黒く熟し甘くて美味しい。
持ってきたドライフルーツ入りの堅焼きパンと一緒にご馳走になる。
当麻乗越から姿見の駅方向を見る
十勝連峰がかすかに霞み、その距離を実感させている。
忠別湖も白く霞み、東川や旭川は見えない。
大雪の山々だけが紅葉をまとい、スッキリした別天地だ。
復路も素敵
当麻乗越で約半時間もまったりして贅沢な時間を過ごし、往路を引き返す。
同じ景色なのに見る方向が異なるためか、光の当たり方の違いなのか、違うもののように感じ思ったより楽しめる。
何となく往路で見たのとは異なる印象が・・・
ナナカマドのグラデーションが面白く、その表情を切り取ってみる。
緑とオレンジのコントラスト、これにダケカンバの黄色が混じれば最高なのだがここは森林限界を越えた世界、そうは事を上手く運べない。
当麻岳山腹にかけて広がるナナカマドのグラデーション
これでもかと言うほどの華やかな赤やオレンジの洪水に、美しいとは思いながらもいささか食傷気味。
人間とは全く自分勝手でいい加減なもので、眼は勝手に落ち着いた雰囲気の紅葉を探し始めている。
少し落ち着いた雰囲気が感じられた景観 右手遠方には天塩連山が
探せば派手な色の無い紅葉も見つけられる。
こんな風情もしみじみ秋を感じられる好きな景観だ。
草紅葉と旭岳
人混み
約5時間のトレッキングを終え夫婦池まで戻ってくると、人・人・人・どこも大変な人出。
遊歩道は行列、展望台はラッシュ状態。
ここは山ではなく立派な観光地、そう気持ちを切り替えて寛容の精神、優しさ・おもてなしの気持ちを優先することが求められている。何はともあれお天気は良いし、私も観光客面をして池の畔から一枚。
夫婦池からの旭岳 人が写り込まないよう苦労した
観光客の約半数は外国人、その大半は遠慮や譲り合いなどと言う言葉すら知らないのではと思わせる人たちだ。
朝の曇っていた時とは違った写真が撮れるかもと姿見の池に再度立ち寄りたかったが、余りの混雑ぶりと傍若無人さに恐れを感じそのまま下山することに。
我ながら、まったく気が小さいんだから・・・。姿見の駅付近から紅葉の旭岳にさよならだ、素晴らしい紅葉を見せてくれてありがとう。
スッキリした姿に感謝を込めてお別れ
これまで大雪の紅葉では黒岳からお鉢周りや白雲岳周辺・高原沼付近を訪ねることが多かったが、今回は旭岳周辺を歩いてみた。
ロープウェイを利用すると最初から森林限界を越えているため、ダケカンバなどの木々の黄色は間近で見ることは出来ないけれど、ナナカマドのグラデーションとウラシマツツジ・チングルマを始めとする草や花柄の紅葉そしてハイマツや笹の緑のコントラストは本当に素晴らしかった。そして何と言ってもそれら紅葉の隠れた引き立て役は旭岳を始めとする大雪の山々である。
この素晴らしい山々があるからこそ、紅葉も新緑も輝くのだと思う。
これからも大雪の山々を訪ねる喜びを感じながら、歩かせてもらいたいものだ。大雪の山々は後1・2週間で雪に覆われるようになり、紅葉は麓へ低山へと移行する。
見頃の短い期間を失わないよう身近の支笏湖周辺の山々を訪ね歩いてみよう。皆様もどうぞ存分にお楽しみください。