支笏湖の秋

美笛の滝、口無し沼、七条大滝など

道央  2016.10.15(土)   晴れ

 


 

美笛の滝

 

2016年の紅葉

10月も中旬、例年なら北国は平地でも紅葉真っ盛りの時期だ。
しかし今年は夏から秋にかけてのお天気が荒れ不順だったからか、あまり美しくないとがっかりした声が聞こえてくる。

しかし丹念に足で稼げば、意外な所で見事な美しい紅葉に出会い、喜びを味わうこともできる。
先日も川霧に覆われた早朝に近所の公園を散歩していたら、丁度差し込んできた朝の光が一本の楓を照らし幻想的な光景を描き出した。
その時の写真がこれである。

川霧の紅葉
朝霧の楓

 

幸運の一瞬を切り取るべく時間との勝負。
アングルや構図を考え走り回っていたら、早朝散歩の人や犬連れの人から「何をやっているんだ?」と不審な目で見られてしまった。

そんな訳で紅葉の名所が期待できないのなら、普段あまり行かない近場を見てみようと晴れの一日、支笏湖周辺を歩いてみた。

 

美笛の滝

美笛の滝は2014年9月の大雨で進入路や橋が流され、以来立ち入れない状態が続いている。

落差50mの優美な滝で、どの季節に訪れても美しいのだが、新緑と紅葉の時期は格別なのだ。
どんな状態なのかを知るだけでも意味があると思い、訪れてみた。

国道から旧美笛鉱山への道に入ると、美笛の滝入り口から200mほど手前で橋が落ちていてロープが張られている。
様子を見てみる、2本あった橋は両方とも崩壊していて土台も流されている。
念のため用意してきた長靴に履き替え、美笛の滝から流れ下る沢沿いに進む。

谷間で朝日が当たらない沢は薄暗く陰気な表情、そのまま美笛の滝に登る道にぶつかるまで沢の中を歩くが水中の石がとても滑るので要注意だ。

沢
明るくなった時の沢の表情 (帰路撮影)

 

美笛の滝へ登る道は、この2年間使われていないため整備も手入れもされていない。
全長800mと短いコースなのだが、笹が道を覆い歩きにくい。
おまけに一部が崩壊していたり、倒木が何本もあったりと、一般の人たちが歩くには不向きでお勧めできない状態だ。

日が当たらず薄暗く笹に覆われた谷あいの荒れた道、熊が出てきても不思議ではない気配。
ホ〜・ホイ!」大きな声を出し存在を知らせつつ登っていく。
私の声に反応するのは森の配達人「カケス」。
「人が来たよ〜!」と鳴き叫びながら森中を飛び回り、牡鹿が了解のサインを力強い声で返している。

最初は沢に沿って西へ進み次第に北西に登っていく荒れた道を歩くこと約40分、ようやく美笛の滝が見えてきた。
安全第一で慎重に足場を探りつつ登り切り、滝の下へ辿り着いた。

美笛の滝は何時もと変わらぬ美しい姿、そして朝の光に包まれて輝くばかりの清々しい紅葉と共に私を待っていてくれた。

美笛の滝
美笛の滝と紅葉

 

大きく2段になって落差50mを白く流れ落ちる滝とその両岸を飾る紅葉、そして青空とが織りなすコントラスト豊かな光景は、登ってきた薄暗い陰気な道とは正反対の華やかな素晴らしさだ。

美笛の滝
左岸寄りから見る美笛の滝

 

右岸、左岸と移動しながら滝と紅葉の景観を楽しむ。
美笛の滝にもビューポイントがあり、左岸からより右岸から眺めた方が均整が取れ美しい。

流れ落ちる水と赤い岩肌のマッチングもお似合いだ。

美笛の滝

 

30mほど滝から下った所から眺めると、直下からとは異なり上段の滝がしっかり見え、滝音も静かになってゆったりした気分で全景を堪能できる。

美笛の滝
少し離れた場所から全景を楽しむ

 

岩肌の紅葉と滝の上部を少しアップで引き寄せてみる。
水量は普段よりやや多めな印象で、岩にぶつかり角度を変えながら流れ落ちる様が迫力を感じさせる。

美笛の滝
滝の上部と岩肌の紅葉

 

滝に近づいてみると、下部の階段状になっている岩と流れがぶつかる所は赤く、流れるだけの所は苔で緑になっていて面白い。
紅葉の落ち葉がへばり付いているのも一興だ。

美笛の滝
滝に近づいて

 

美笛の滝は三方を深い山肌に囲まれ、唯一南東に開けた狭いカール状の谷にあるため台風の被害を受けなかったようで、鮮やかな黄色と赤の紅葉が滝とマッチして素晴らしい美しさを見せていた。

こんな美しい紅葉の景観を独り占めするなんて、申し訳ない気持ちがする。
一日も早く道が再整備され、多くの人たちが楽しめるようになって欲しいものである。

 

モーラップ

美笛の滝を下山し、お腹も空いたとモーラップで一休み。

おやつを口にしながら支笏湖や山々の姿に見入る。
今日は土曜日、多分多くの人たちが登山を楽しんでいるに違いない。
お天気も良くなったし、さぞ秋の風情と大景観を堪能していることだろう。

恵庭岳
モーラップから眺める恵庭岳

 

少し湖岸を歩いてみる。
支笏湖の紅葉はまだまだの感じ、湖畔地区に繋がる小さな半島が少しだけ色づいていた。
もしかしたら、今年はこのまま枯葉色になって終わってしまうのかも・・・。

モーラップ
色付きだした? モーラップの半島

 

七条大滝

時間はお昼少し前、七条の滝へ足を伸ばしてみることに。
国道453号線と276号線の交差点近くの駐車帯に車を止めて、2Km弱を歩く。
林道は植林の林が多く、紅葉は見られない。

約30分で滝の降り口、付近の雑木林の紅葉はくすんだ冴えない色だ。
滝へ降りていく道の階段部分の手すりがかなり前から傷んで不安定だったのが、補修され補強されていた。

水音が大きくなり木々の間から滝が見えてきた。
紅葉は全く無し、赤焼けた泥壁に滝が落ち込んでいるだけで、風情も情緒も感じられない。
真上からの光線で、陰影を消してしまう景色を生かす光ではないからかも知れない。

大滝
七条大滝の全容が見え始めた

 

何故だか不明だが、上記の写真を撮った所にロープが張ってある。
滝口まであと僅かな下りの道、危険にも見えない。意味が判らず、しばし躊躇。
自己責任で降りていく。

滝
滝壺の見える所から

 

水面付近に小さな虹が掛かっているのが見えるけれど、平凡なイメージだ。
水面まで降りてみる。

大滝
流れ落ちる水は勢が良いけれど

 

せっかく訪ねてきたのに、どうにも平凡で魅力をあまり感じない風情なのである。

滝の上部の木々にも紅葉は無く、枯葉の茶褐色だけが広がっている。
今年だけかも知れないけれど、秋の七条大滝はあまりお勧めではないようだ。

やはり、七条大滝は厳冬期のバリバリに凍りついた厳しい表情が迫力満点で美しい。

 

口無し沼

七条大滝での残念な気持ちのまま帰るのは悔しいと、口無し沼を訪れてみることに。
口無し沼は車で30分ほどだ。

口無し沼の駐車場に着いて、まず気づいたのが水量が多いことであった。
駐車場脇に設置されている展望デッキが水に浸っている、多分平常より50cmほど水位が上昇しているのではないだろうか。
この数日は降っていないので、台風の影響が残っているのかな?
なにせ、水の出口が無い沼なのだから。

ともあれ、のんびり一周してみようと反時計回りに歩き出す。

口無し沼
マユミの赤い実が水面に映える 正面は樽前山

 

水位が上昇し所々遊歩道が水面に沈んでしまい、迂回しながら進むが泥濘んでいる場所が多い。

牡鹿が私に気付き見張っているのだろう、威嚇か警戒の鳴き声を上げている。
湖面の北半分には水鳥の姿が多い。敏感にかすかな音や気配を感じるのだろう、私がまだ遥か遠くに居るのに羽音も高く飛び去っていく。

所々、紅葉した木があり気持ちを和らげてくれる。

紅葉
紅葉も美しい口無し沼

 

口無し沼にはいつもと変わらぬ、静かで落ち着いた深山幽谷の気配・雰囲気が漂っている。
約半周した北の端では、水位が上がって小島が点在しているかのような景観が広がっていた。
初めて見たが、これはこれで面白い。
ただ歩くところが泥濘状態なのが始末に悪い。

口無し沼
水没し、小島が点在しているように見えるが本来は草原

 

黄色に美しく染まった木々の黄葉が沼の湖面に映って良い雰囲気だ。
午後遅い時間帯、夕暮れの光が優しく湖面を照らしている。

黄葉
輝く黄色の葉も夕日を浴びて美しい

 

美しさに感嘆の声を上げていると、足元に熊の糞。
慌てて、存在を知らせる声を四方八方に精一杯振りまく。
一周する間に、鹿の威嚇が3回、熊の糞が4箇所、何か分からない唸り声が1度。
あまり気持ちの良いものではないが、口無し沼が自然豊かな所だと言う証明でもある。

 

今回は1日かけて支笏湖の周りを歩きながら秋の風情・紅葉を訪ねてみた。
美笛の滝は華やかで艶やかな紅葉を、口無し沼では落ち着いた深閑とした雰囲気の秋の風情を味わうことができた。

あてもなく、でも丹念に歩いてみると、思わぬもの・予想外のものに出会うことがある。
確かに効率は悪く、無駄足も多いけれど、それだから得られた時の喜びも大きい。

そんなことを感じた一日を大切にしたいと思った。

 

 

 



 

 

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