イチャンコッペ山 (829m)

道央  2016.10.19(水)  晴れ

 


 

紅葉

 

2016.10.19(水)
0750 登山口
0840〜45 コル
0925〜35 七合目ピーク
0950〜1020 山頂
1130 登山口

 

 

イチャンコッペ山

10/19(水) 朝、目覚めると気持ちの良い清々しいお天気。
朝ごはんを頂きながら夫婦ほぼ同時にお互いに問いかける。「どう?」
出かけたいけれど体の具合や都合はどうかな? と言う意味の私たち夫婦間の隠語のようなものだ。

「膝の調子はまずまず、サポーターはして行くから」と私。
「ここ数日は吸入薬も使っていないし、大丈夫よ」と最近喘息気味のカミさん。

それでは、近場の比較的手軽な山にでも出かけよう。
本来なら紅葉の盛りだが先週土曜日に見てきた限りでは、支笏湖周辺はあまり期待できない。
思案を巡らせているうち、イチャンコッペの登山道が笹刈りされ整備されているという情報を思い出した。
紅葉はあまり期待できないかもしれないが、恵庭岳や支笏湖の景観は存分に楽しめるだろう。

イチャンコッペ山は支笏湖の北、恵庭岳の北東にあり、おまんじゅうを二つ並べたような姿をしている標高800mほどの低山。
基本的に笹山で3年も笹刈りをしないと登山道が笹藪に埋もれ、訪れる人は激減する。
反面、笹刈り直後は初心者やファミリーも気持ち良く歩け、多くの人たちに楽しまれる山でもある。

 

進む紅葉

急遽支度を整え、7時過ぎには家を出る。
走る支笏湖道路沿いの森に朝日が降り注ぎ、緑の中に黄色や赤が鮮やかに映えている。

4日前に通った時には茶褐色の冴えない色でがっかりしたのに、こんなにも変わるものかと驚くほどの美しい紅葉なのだ。
嬉しい誤算に歓声をあげながら、期待を膨らませつつ支笏湖へと走らせる。

登山口駐車場に着くと、すでに2台の車が。
「紅葉も楽しめそうですね」など挨拶を交わしながら、のんびり準備。

イチャンコッペは登山口から取り付きの尾根が一番の急坂、ここをゆっくり登るのが楽に楽しむコツでもある。
ただでさえ私たちはカミさんの喘息と私の膝の為にも頑張りは禁物、超ゆっくり息を切らさず汗をかかないペースで登っていく。

「綺麗だわ〜」「こんなに紅葉しているなんて思ってもいなかったよ」頻繁に足を止め、美しく染まった木々を見上げる。

紅葉
朝の光を浴びて輝く紅葉を楽しみつつ

 

4日前に訪れた時、美笛の滝だけが素晴らしい紅葉を見せてくれたがその他は期待はずれでがっかりしていただけに、これが同じ地域なのかと思うほどの変化ぶり。
改めて自然の凄さ、素晴らしさを思い知らされた思いである。

黄葉
空を覆う黄色たち

 

取り付きの急坂を標高差200m少々登れば、幌平山(718m)を巻きイチャンコッペに向かうトラバース道。
まばらに立つダケカンバを縫うように幅広く刈られた笹原の道が伸び、右側には支笏湖と紋別岳に続く山肌が見えている。

やがて幌平山とイチャンコッペを繋ぐコル、穏やかな支笏湖の景観を眺めながら一休み。

支笏湖
穏やかに広がる、支笏湖の景観

 

一汗

コルからしばらくの間が、通常なら笹被りの最も濃い場所。
でも今回は綺麗に刈られていて有り難い。
私も過去3度ほど、この山の笹刈りをしたことがあるが30人で一日掛かりの大変な作業だった。
今回は苫小牧の人たちが刈って下さったと言う噂を聞いた、本当にありがとうございます。

やがて七合目ピークに向かって登る樹林の中の真面目な山道となる。
体も温まってきたし、カミさんの具合も良さそうだ。
こちらも一汗覚悟の真面目なペースで足を進める。

二人とも口数が減ってきた頃、先行者たちに追いつく。
ペースを落とし間隔を保って少し登れば、七合目ピークである。

恵庭岳
七合目ピークからの恵庭岳

 

七合目ピークには大きな電波反射板が建てられていたのだが不要になったのか取り払われ、小さな広場のようになっている。

眺望は山頂よりも良いぐらい、正面に恵庭岳が「支笏湖の山々の盟主は俺だ」とばかり、どっしり鎮座している。
恵庭岳の左横に徳舜瞥山とホロホロ山が見え、反対側の右側には漁岳から空沼岳・札幌周辺の山々への高みが連なっている。

汗をぬぐい、カミさんがお腹が空き加減と言うので、パン一つを分け合う。
「天高く・・・」だからね〜。
「やめてよ、気にしているんだから・・・」軽口の一つも出る気持ちの良さなのである。

 

山頂

七合目ピークから山頂までは、ほんの一足。
刈り払われた平らな道を進んでから少し下って、標高差40mほど登り返せば山頂なのだ。

山頂にはすでに先行者の二組が、その仲間入りをさせてもらい一角に腰を下ろす。
稜線続きのお隣の紋別岳が同じ高さの目線で立っている、正確には紋別岳の方が40m高い。


紋別岳
お隣の紋別岳(866m) 優しげな姿で格好良い

 

意識してのんびり歩いてきたが山頂まで丁度2時間、適度な負荷・運動の感じである。
景観は七合目ピークからと大差はない、山頂標識から少し北へ濃い笹を漕げば札幌市街を遠望することもできるのだが見に行く人はほとんどいない。

暖かな日差しを浴びながら、コーヒーやリンゴを口に、まったりした贅沢な時間を楽しむ。
昼寝でもしたくなるような気分である。

山頂の笹原越しに見る支笏湖や山々の姿も今日は優しげな印象だ。
風不死岳の偽ピークが、ここからだとしっかり認識できる。

支笏湖
山頂から支笏湖と風不死岳・樽前山

 

しばらくゆっくりしていると次々に登山者たちがやってきて、狭い山頂のスペースは手狭になってくる。
お互い様だ、場所を譲って私たちは下山に移る。

七合目ピークまで戻り、撮っておかないと来たことも忘れるからと記念撮影。

記念撮影
この日訪れたのを忘れた時のために

 

湖面にさざ波があるようで水鏡とはいかないが、山々の影がほのかに写り込み、全体にぼや〜と優しげな表情だ。

恵庭岳
晴れすぎて少しボヤ〜とした感じの支笏湖の山々

 

染められて

七合目から200mほど降れば、登りで堪能した紅葉の林の散策が待っている。
再び「綺麗だね〜」「見て、この色!」会話も弾む。

紅葉
紅葉を楽しみつつ降る

 

コル付近からは幌平山と恵庭岳がコラボする光景も、幌平山は知る人のみが知る隠れた恵庭岳の展望台なのだ。
夏場は藪漕ぎが必要な幌平山、冬に久しぶりに行ってみるかな。

幌平山
幌平山(右)と恵庭岳

 

取り付き尾根の急坂は、紅葉の中に飛び込むような感じである。
登ってきたのと同じ場所なのに、朝と昼では光が違うから印象も大きく異なり、まさに紅葉に染められて歩く感じになってきた。
素晴らしい!  
凄いぞ、カミさんの黄色のシャツがオレンジになっている。


紅葉
紅葉に染められて歩く

 

何度も歓声を上げ、足を止めて自然からの贈り物を堪能する。

昼近くになり真上から日差しが紅葉の葉に差し込む。
逆光を受けた葉が色をさらに濃くして拡散する。
光り輝く黄色からオレンジ、赤、暗紅色までの暖色のグラデーションが様々の波長で展開し、その中を下って行く。

夢心地というか、お酒に酔ったような気分に浸った一時であった。

紅葉
逆光を受け広がる赤のグラデーション

 

寄り道

美しさに酔った最高の気分で下山してきたイチャンコッペ山。

そのまま帰宅するにはあまりにも惜しい、車を止められる所があれば紅葉狩りをして帰ることに。
後ろから車が来たら端に避け、制限速度を守りながら沿道の木々が織りなす景観を楽しみながら走る。

まず途中下車したのは、王子製紙第一発電所。
この発電所は建設されて約100年、発電所としての機能は現在も現役だが、素晴らしいのは敷地内の木々。
オンコ(いちい)の並木や楓は建設当初からのもので、古木中の古木であり皆巨木である。
その楓の古木が見事な色彩を見せている。
オンコの緑との対比も素晴らしい。

楓
楓の古木が見事な紅葉を

 

そしてもう一つの素晴らしさは、発電した水が千歳川に流れ落ちる深い谷の紅葉である。
深いV字型に削られた谷の両岸一面が、黄色と赤と緑で彩色されるのだ。
見た感じであるが、ここ数年で一番きれいな気がした第一発電所の紅葉である。

ダムの紅葉
千歳川沿いの深い谷間の紅葉

 

第一発電所の紅葉も良かったので、千歳市街の千歳川沿いの緑地にも立ち寄ってみた。
山とは木の種類も違うので少し雰囲気は異なるが、この数日の冷え込みで急速に紅葉が進んだと思われ、どこも美しく見事な紅葉ぶりを見せていた。

紅葉
イロハモミジの紅葉 黄色から赤への色の変化も美しい

 

山モミジ、イロハモミジ、ハウチワカエデ、皆美しく紅葉するが葉の違いだけでなく色も微妙に異なっているいて、受ける印象は別物だ。

池などの水面に映る紅葉は実際より色が濃く映えて、一層きれいに見える。

水面と紅葉
池に映る紅葉

 

園芸種なのだろう、姿の良い樹形も多い。
姿も色も選ばれているのだから一際目立つのは仕方ないが、これも定められた運命なのかと思うと複雑な心境ではある。
まっ、美人薄命とも言うから、どっこいどっこいなのかな?

紅葉
美人の紅葉たち

 

新緑や紅葉の素晴らしさなど、自然の美しさはそれ自体の美しさはさることながら、光の当たり具合、差し込む角度、強さなどによっても大きく変化する。

写真を撮っていると光と陰、その重要さを認識し考えざるを得ない場面がいかに多いことか。
平凡な紅葉でも光によって、名画のようになることもある。
お化粧と同じようなものと思えば良いのかな?

紅葉
良い光線を受け、素晴らしい表情を見せる紅葉

 

最後にモミジらしい一枚を。
私はこんな感じが比較的好きである。

モミジ
一枝のカエデ

 

今年の紅葉はハズレ年と感じていたのだが、数日というわずかな日数の冷え込みで息を吹き返し、ここ数年見たこともない見事さに復活した。

その最高潮の紅葉を眺め、鑑賞できたのは、幸運であった。
数日前に今年はダメだとあきらめ顔だったのに、チャンスを逃さずチャレンジしていれば良いことが必ずあるという教訓でもあるのだろう。

私たちは年齢や体調の問題を抱え趣味にのみうつつを抜かしている訳にはいかないが、いつまでも自然大好き人間の一人としてチャンスを作って訪れ続けたいと思っています。

 

 

 

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