2017.2.15(水)北尾根登山口 0750 北尾根取り付き 0805 5合目 0855 8合目 0950 風不死岳山頂 1100〜45 登山口 1320 風不死岳
数年ぶりになるだろうか、冬の風不死岳を訪れた。
少しでも長い間 山野を歩いて楽しみたいので、痛めている膝を大事にしなければと思っている。
そのケアのため冬山は遠慮したほうが良いと思っていたのに、先週出かけた幌平山が思いのほか楽しかった事と心配していた膝の状態が登山中も下山後も比較的良かった事が背を押してくれた。
ともあれ、こんな気持ちになれて本当に嬉しい。
どんより・・・
よく晴れた気持ち良い青空に誘われるように支笏湖へ車を走らせる。
登山口に近づくにつれて、空は灰色に変わりだし登山口では霧と小雪で視界も良くない。
出鼻を挫かれたような気分で出発準備をしていると、一台の車が。
5・60歳の私よりお若い単独の方だ。心強さを感じつつ挨拶、一足先に出発する。有難い事にしっかりしたトレースが付いている。
北尾根の取り付きで体も温まったのでパーカーを脱いでいると単独男性が追いついてきた。
彼に先行してもらい、私は汗をかかない事と膝に負担をかけない事に最大限の留意をしてゆっくりペースを守る。どんよりした曇り空、見るべき景観もなく淡々とペースを刻む。
5合目を過ぎ斜度がやや急になる斜面を登れば6合目、ふと見上げると100mほど先の小雪舞う樹林を先行者が登っている。
思ったほど開いていないのに驚くが、大きな声を出せば届く距離に人がいると思うと心強い。
5〜6合目にかけての斜面の雪模様 ふんわり柔らかく優しそう
履き替は、如何?
6合目を過ぎると時折樹林に隙間が開き視界が開けてくる、だが低い雲に覆われ視界もどんよりして全体が沈んで華やかさは感じられない。
7合目を通過し大沢との合流点を過ぎると、冬の風不死岳の最大の核心部である岩場の急斜面が現れ出す。
7合目過ぎから見る支笏湖と紋別岳
雪は固く締まって氷化し、その上に柔らかい雪が20cmほど乗った状態、それまでの斜面ではスノーシューで丁度良かったが急斜面では体重をバランス良く掛けないと滑り落ちてしまう。
以前もこの辺からアイゼンに履き替える時が多かった。8合目過ぎの急斜面を前にしてどうするか考える。
安全の確保と膝のためには履き替え得るべきだ、でも先行者はスノーシューで進んでいる。
正直、履き替えるのは面倒でもある。
「まヽよ! このまま行ってしまえ。 ダメだったらその時だ」先行者のトレースを追う。
極端に狭い所や急斜面でジグを切る所などでは、スノーシューをまっすぐ置く事が難しい。
何度かバランスを崩して滑り落ちてしまう。数カ所ある岩場や両側が切れ落ちた斜面では、アイゼンに替えるべきだったと後悔しながらどうやら乗り切った。
先行者もかなり苦戦しながら乗り越えているが、ルートは正しい。
相当経験を積んだ方なのだろう。
8〜9合目付近の急斜面を登る
大分時間を費やしたが、見覚えのある岩や狭い尾根を登っていくと右手に風不死岳の偽ピークが見え、急に斜度が緩み山頂手前の台地に飛び出した。
やれやれ、でもスノーシューは少し強引すぎた。
膝に不安を抱える身としては安全係数を考え、8合目でアイゼンに履き替えるべきであったと反省。振り返ると、支笏湖と低い雲に覆われた恵庭岳などが私を見守ってくれていたかのようだった。
山頂近くからの支笏湖と恵庭岳
無風でまったり
山頂に着くと雲間から日差しが差し込むようになった。嬉しいし有難い。
日差しと共に、樽前山が良く来たねと出迎えてくれる。
だが全般的には低い雲に覆われ、暗い感じで見通しは良くない。
特に西側は白老三山やホロホロ山さえ、雲に隠され見えない有様だ。
樽前山 右は風不死岳の偽ピーク
日差しが翳ると寒さを感じるが、風もなく穏やかで腰を下ろしまったり寛ぐ。
先行者と少し話をする、白老の人で白老山岳会の会員さん。
彼もスノーシューでは強引すぎたと思ったようで、下山時はアイゼンにしましょうと話す。温めてきたお昼ご飯を美味しく頂きながら、日差しが出たらカメラを手に景観を撮る。
山頂に滞在した小1時間で恵庭岳が姿を現したのは、わずか数分ぐらいだったろうか。
何度も見ている見慣れた光景なのに、貴重に感じる一瞬だ。恵庭岳の右にイチャンコッペ山が確認でき、恵庭岳との中間に先週登った幌平山が小さく見えている。
札幌方向の山々は雲の中だ。
風不死岳山頂から恵庭岳 右端はイチャンコッペ山
西側は視界が悪く写真にはならない、逆の東側は紋別岳やモーラップ山は良く見えている。
千歳市街地は煙っている、雪でも降っているのだろうか。
支笏湖の東側方向 中央が紋別岳
日差しが翳り光が不足する時間は、コーヒーやチーズでお口の運動だ。
しばらくして先行者が下山にかかる、気をつけてとお互い声をかけお別れする。今回山頂で印象深く感じたのは、これまで感じたことも無かった山頂部の霧氷。
今までは天気に恵まれたせいもあって支笏湖や遠くに見える山々の景観に関心が向いていたのだ。
山頂部の霧氷は、形の変化や微妙なグラディエーションがあって見飽きない。
山頂部の霧氷
この2枚は同じような写真だが、カメラの設定によって印象はかなり違って感じる。
どのような印象の写真を狙うのかによって試行錯誤するのも面白いものである。
上の写真と同じ場所の霧氷
確実に、慎重に
山頂で小1時間過ごし、下山に移る。
勿論、アイゼンに履き替えてだ。山頂直下の急斜面でもアイゼンだと安心して降りられるし、スノーシューと異なり置いた足が捻れることもないので膝も安定する。やはり道具は道具なのである。
ここで若い人たち5人パーティとすれ違う、さすがに馬力があり揃って登ってくる姿には迫力さえ感じられるが彼らもスノーシューのまま登ってきており、かなり苦戦しているようだった。
9合目付近で、霧氷と恵庭岳
アイゼンを履いているとは言え、膝への負担は下りが一番かかる。
一歩一歩、時間が掛かっても安全第一、慎重に下っていく。大沢の出合いを過ぎ7合目を過ぎれば一安心、危険な所はもうない。
しっかりとしたトレースがあるので、踏み外さなければアイゼンのままでも潜ることもない。
ゆっくり下って3合目付近で写真を撮っていると、若者5人パーティが早くも下山してきた。
「コンチワ〜。 お疲れ様で〜す」ものすごい勢いで駆け下りていく。
若さって素晴らしい、つくづく羨ましくなる一瞬であった。
もしかしたら、もう訪れることはできないかもと思っていた冬の風不死岳。
膝に負担を掛けなければ、まだ登ることが出来ると感じられたのは嬉しいことだった。
過信は禁物だが、必要以上に怖がらなくても大丈夫なのだ。春からの楽しみのためにも、膝のリハビリは励んでいこうと思う。
膝の様子を伺いながら、この冬にもう一山くらい楽しめたらいいな。