黒岳 (1984m)

表大雪  2017.9.22(金)  晴れ


 

草紅葉

 

 

9月も後半となり朝晩はストーブが恋しく、秋深しを感じるようになってきた。

大雪山系の紅葉は今年は早めという情報に接し、計画した9月の半ばに大型で強い台風18号が来襲、待ったをかけられた。
台風一過の朝、勇躍 大雪の紅葉見物へと出かける。

層雲峡へ向かう道は、秋の交通安全週間が始まったばかりとあってパンダやネズミの出没多数。
かえって交通渋滞を引き起こすような運動のやり方は、警察の勝手な思い込みなのではないのかな?

ともあれ黒岳周辺の素晴らしい紅葉を期待して、気分は上々である。

 

結構辛い

黒岳ロープウェイは朝から満員のお客様、その多くは5合目・7合目までの観光客の方々だ。
紅葉を期待する熱気に満ちたロープウェイは、僅か7分で5合目へ。

急ぐ山旅ではないので、観光客の方々に混じって5合目展望台に上がってみる。
幸いお天気は快晴、層雲峡の狭い谷間に雲海が棚引いて美しく、期待に拍車がかかる。

雲海
5合目展望台から雲海風景。正面は屏風岳

 

登る黒岳も良く見えている、ただ展望台から見た限りでは紅葉は期待したほどではないような。
遠目だからそう感じるだけなのか、不安がちょっぴり顔を覗かせる。

黒岳
展望台からの黒岳、左に烏帽子岳 右に凌雲岳など

 

板敷のリフト乗り場が霜で凍って滑る、慎重に慎重に。
こんな所で転んだらとんだお笑い者だもの。
リフト下の草地には、青と白のオヤマリンドウが咲き競い木々も僅かに色づいて会話も弾む。

寒いぐらの気温にダウンのチョッキを着たまま歩き出す。
黒岳は7合目まで労せずに登れる代わりに、助走のない急登が出だしから始まり体を慣らすことができない。
歩き始めからの1ピッチは特に意識してゆっくり歩を進めることが肝心だと思う。

僅か15分で最初の休憩、ダウンを脱ぐ。
その後も短い休憩を何度も取りながら、登る皆さんと同じペースで高度を上げていく。

時折見える雲海や北大雪の山々の景観に力をもらいながらの急登である。
ただ霜の降りている北斜面だから、注意しないと岩が滑るし所々泥濘もある。

雲海
たなびく雲海 屏風岳の向こうに武利岳や武華山の姿も

 

8合目を過ぎても紅葉の気配は見られない。
見られないと言うより、紅葉したダケカンバやナナカマドの葉の多くが落ちてしまっている感じなのだ。
台風の風の影響なのだろうか。

9合目近くになって、お待ちかねナナカマドの色づいた一列がお出迎え。
綺麗だし、見られえて嬉しい。

紅葉前線
紅葉前線のお出迎え

 

「まねき岩」が見えてきた。 山頂まではもう一頑張りだ。
ここは紅葉で有名な所の一つ、確かに美しく紅葉しているがいつもとは違った感じ。
紅葉した葉の多くが千切れ傷つき落ちてしまったかのようである。

これも自然の摂理。如何ともしがたいことだ。

まねき岩
まねき岩の紅葉

 

歩き始めた時に感じた寒さは嘘のよう、汗だらけで息を切らせ空に伸びる階段状の急坂を登りきれば、何度も見慣れた黒岳山頂だ。

そして、そこに待っていたものは・・・。

 

むむ・・・、でも・・・

黒岳山頂
いつもと変わらぬ大雪の広々した大景観

 

期待して来たお目当の紅葉は?
「無い」、と言うより余り感じられない。
全体に秋の彩りは感じられるものの、何時もだったら沢筋ごとにミネヤナギやナナカマドなどの黄色や赤の筋が無数に走って彩られるのに、それが見られない。

む・む・む・・・、イマイチだなあ〜!

でも、広々した雄大な大雪らしい景観に変わりはなく、晴れ晴れとした気持ちは爽快だ。

大雪
山頂から烏帽子岳(手前左)、白雲岳(中央右)

 

黒岳山頂から白雲岳方向の畝ったような山並みに深く刻まれた沢の作り出す複雑な地形は、私の好きな景観だ。
これに赤や黄色の帯が散りばめられ、さらに初雪で彩られたら最高の紅葉景観なのだ。

ちなみに2009.9に黒岳〜銀泉台を歩いた時の紅葉は、こんな感じだった。

紅葉の大雪
2009.9の紅葉

 

紅葉
同じく2009.9の紅葉

 

紅葉が最高潮では無くても、お鉢平を取り巻く外輪の山々、頭だけを少し覗かせている旭岳、裏旭、熊が岳などは、大雪ならではの穏やかで優しい山岳風景で素晴らしいのだ。

お鉢平
お鉢平を取り巻く山々

 

黒岳山頂の一角に腰を下ろし、大景観を眺めながら大休止。
時間も早くお腹は空いていないが、りんごやナッツで栄養補給。

私は写真撮影、カミさんは登りながら浮かんだ短歌を書き綴る。

記念に写真を撮って、お鉢平まで足を延ばすことに。

記念写真
黒岳山頂にて、後方は北海岳

 

まったり!

3・4時間、広々とした台地の散策を楽しもう。
まずは石室に向け、のんびり降りていく。

石室へ
ゆったり散策を楽しもう

 

石室へ降りていく途中、男性が大きなプロ用のビデオカメラを三脚に据え付け、足元のゴロゴロ石の積み重なった所にレンズを向けている。
カミさんが「何を撮っているのかしら?」
「さあ、分からないけど石の間を狙っているみたいだから、ナッキーかも・・・」
「そうなの? それなら私も待っていようかしら・・・」
「邪魔だって、嫌がられるよ」

岩場にクロマメノキが見事に紅葉している。
逆光に紅葉した葉がキラキラ光って、とても綺麗。

クロマメノキ
逆光に輝く紅葉したクロマメノキだが、表現しきれなかった

 

石室から、とりあえず北海沢方面に足を向ける。
チングルマやウラシマツツジの多くは霜にあたり、茶褐色から黒褐色に変色している。
台風だけでなく、霜による影響が大きいようだ。
きっと数日前だったら、見事な紅葉だったのだろう。

もちろん、まだ霜にやられていないものもあり綺麗な紅葉を見せていた。

ウラシマツツジ
霜を避けられた ウラシマツツジ

 

北海沢の水場まで行ってみたが紅葉の状況は変わらず、こちらは諦めて雲の平方面に向かってみる。

ホシガラスが何羽も飛び回っている。
ハイマツの実を食べているようで、5m位まで近寄らないと逃げようとしない。
そっと観察していると、目と目が合い、明らかに彼等も私たちを意識して見ているのが分かり面白い。

草紅葉の綺麗な場所に出た。
霜にやられているものあるが、全体に見ればまだまだ綺麗。



草紅葉
チングルマなどの草紅葉が美しい。

 

地上の楽園、神々の遊ぶ庭などと呼ぶのにふさわしい所だ。

所々にあるクロマメノキの熟した実を口にしながら、のんびり過ごす。

 

チングルマ
チングルマの白い穂と紅葉した葉の赤のコントラスト


雲の平付近でのんびり時間を過ごし、帰りがけに石室で休憩。
石室は冬仕舞いの準備に忙しそう、小屋を補強する材木を多量に運び込んでいた。

石室から黒岳に登り返す所に、チングルマが綺麗に紅葉し烏帽子岳と共演していた。

チングルマ
チングルマと烏帽子岳

 

自由気ままに舞っているようなチングルマの穂を少しアップしてみる。

チングルマ
チングルマ

 

再び山頂で

登り返して、再び黒岳山頂に戻ってきた。
雲の平付近は全体的に紅葉は終わりに近い感じではあったものの、一部分づつ見ればまだまだ美しい紅葉が見られ満足することができた。

ナキウサギを狙っていると思われた男性は、私たちが登り返す時もジッと辛抱強く待っていた。
あの我慢強さ、粘り強さ無しで、素晴らしい映像は撮れないのだろう。
それにひきかえ、私など手当たり次第の気まま撮影で、我慢なぞしたことがない。
見習うべきなのだろうが、とても出来そうにない。
才能も根性もない見かけだけのカメラマンは、唯それだけの者なのだ。

山頂で再び大休憩、パンやゼリーなどでお腹を満たしながら景観を眺める。

白雲岳
白雲岳をアップで

 

空に秋らしい雲が湧き出している。

大雪の山々の秋が早くも終わろうとしている。

間も無く雪に覆われ約8ヶ月ひたすら冬を耐え忍び、英気を養い、残り4ヶ月に生命力を爆発させ謳歌する。

大雪の山々が何万年にも亘って繰り返してきた、全てを超越した時間の流れを想像してしまう。


山頂から
秋の空と表・東大雪の山々

 

「来シーズンも見に来られるように、私たちもしっかり体を手入れし養生しなくちゃ!」
そんな話をしながら、黒岳山頂を後にした。

 

名残を惜しみつつ

山頂の少し下で、登りで気づかなかった草紅葉の谷間と北大雪の山々の景観を発見。
なかなか素晴らしい景色、得した気分がした。

草紅葉
草紅葉の谷と武利岳・武華山など

 

また、登山道の脇にオトギリの葉が見事に紅葉していた。
どぎつい赤では無く、オレンジと紅のほんわかしたグラデーションが心地よい。

オトギリの紅葉
オトギリの紅葉とミネヤナギの黄葉

 

時間はまだお昼過ぎ、続々と登ってくる人たちで登山道は混雑している。
まねき岩まで戻ってきた。
紅葉はここまでなので、名残を惜しんでもう一枚。
遠望するクマネシリや三国山、ユニ石狩岳などに、登り歩いた日々が思い出された。

まねき岩
まねき岩付近の紅葉 遠くは石狩連山の一部・クマネシリ連山など

 

登って来る人達の中には、台湾の人達も多いようだ。
例の傍若無人とも感じる大声の会話が、すれ違う時には静かになり妙なアクセントの日本語で「こんにちわ〜」
山好きの人が日本の紅葉を見に、わざわざ来ているのだろう。
何時もはうるささを感じ敬遠しているが、丁寧に返礼を返す。
今年の紅葉はイマイチですが、どうぞ楽しんでくださいね。

 

内心2009.9の時より素晴らしい紅葉を期待して訪れた今回の黒岳だったが、結果はちょっぴり残念な結果に終わってしまった。
どうも台風とその後の寒気によるもので、数日前だったら最高だったらしい・・・。

でも大雪の山々はそれを補う十分すぎるほどのキャパシティーを持っている。
私たちも十分楽しめたと感じているし、また訪れたいと感じている。
そして次に訪れた時も、ぜひ違った顔を見せて楽しませて欲しいと思った。

 

 

 

 

 

 

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