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展望台
日高山脈は狩勝峠付近を始点として襟裳岬付近まで、南南東に約150Kmに渡って伸びる峻険な大山脈である。
その長大さゆえに全体を一望の下に収めることは難しい。ピセナイ山はそれを可能とする数少ない日高山脈の大 展望台。
ピセナイ山から日高山脈に正対すると、真正面にペテガリ岳、左端にイドンナップ岳、右端にアポイ岳が視界に入る。
エサオマン岳から北の山々は主稜線からイドンナップ岳へ伸びる支稜線に阻まれ見ることは叶わないが、ピセナイ山からの大景観は見る者の心を揺さぶり射抜いてしまう凄みがある。夏の花々も見頃を終えた9月はじめ、体力の衰えから近づくことも出来なくなった日高主稜線の山々を見に行こうとピセナイ山を訪れてみた。
花の時期にはわざわざ歩くこともある約6Kmの林道、今回はゲートが解放されており車で走り抜ける。登山口まで歩いて10分の所に車を停め、準備を整え歩き出す。
登山口で入山届に記載し、さらに10分歩いて山道へと入る。
登山口から約 10分、ここから山道が始まる
こんなに〜?
ピセナイ山と言うと、展望と山道に咲くサクラソウのイメージが強くコースそのものの印象は薄い。
強いて言えば「コの字型」に歩き、取り付きと稜線手前に比較的真面目な登りがあったなと言う程度。それなのに、2合目までの登りのキツイこと。
わずか15分位なのに、思わず悲鳴が上がる。
気持ちとは裏腹に体力が落ちているのを実感させられる。点々と咲くミヤマウズラに励まされ登りきった2合目で、早くも一息いれる。
ミヤマウズラ
ミヤマウズラ
6合目の稜線出合までの道は、5月ごろはオオサクラソウやヒトリシズカが咲き乱れる歩くのも楽しい道。
だけどこの時期は花がらがあるだけ、4〜5号目にかけて「こんなに急だった?」とぼやきが出る。
期待!
それでも歩き始めて1時間で6合目、ここからは緩やかな稜線を行くだけだ。
お天気も良く、崩れる気配もない。大展望への期待が自然に高まる。
6合目、お天気も良く期待が高まる。
道は良く整備されているが、稜線上は少し笹が伸び加減。
万一を考えて、ダニに効果があるという虫除けスプレーを使用する。小さなポコを超えながら7合目、8合目。
やっと見覚えのある山頂が見えてきた。
ピセナイ山 山頂
凄いぞ〜!
登山口からゆっくりおしゃべりしながら2時間弱でピセナイ山の山頂へ到着。
日高山脈主稜線の山並みが目に飛び込んでくる。
期待通り、いや期待以上の大景観が惜しげもなく広がっている。超・嬉しい!
カミさんと感嘆の声を上げながら、景観に見入る。
眼前に広がる日高主稜線の山々 (イドンナップから1839峰)
つべこべ言わず、ご覧いただこう。
まずは、1839峰を中心にした景観。
左端にカムエク、右へピラミット峰、1823峰、コイカク、1839峰、ルベツネ、ペテガリの山々である。カムエク〜ペテガリの山並み 手前に高見湖
1839峰から、ルベツネ、ペテガリ、中の岳、ニシュオマナイ岳、神威岳、ピリカヌプリ
1839峰〜ピリカヌプリの山々
左からピリカヌプリ、トヨニ岳、野塚岳・十勝岳・楽古岳、ピンネシリ、アポイ岳などの南日高の山々
ピリカヌプリ〜アポイ岳の山並み
カミさんと山座同定を楽しみながら、ドライフルーツなどで小腹を満たす。
神威岳や楽古岳など二人で登った山の話で盛り上がる。
あの尾根は死ぬかと思った・・・、お花が綺麗だったわ・・・、あの時出会った好青年はどうしているだろう・・・などなど話題は尽きない。
小腹を満たしながら景観に見入る
登ってきた6合目方向を見ると、新ひだか町静内の市街地や太平洋が眺められる。
山頂から新ひだか町方向を見る。左の山はペラリ山
カメラのレンズを広角から中望遠に付け替え、少しアップで狙ってみる。
● カムエクとピラミット峰。
2010年に縦走を試みて悪天に閉じ込められセミ遭難状況を体験したピラミット峰と1823峰の鞍部、1602mコルも良く見えている。
中央左にカムエク、その右にピラミット峰 窪みが1602mコル、1823峰
● 1839峰
2008年に念願叶って単独登頂を果たした1839峰。
今でもあの時の感激は熱い思いとして大切に蔵われている。
1839峰 左手奥にコイカクの姿も見えている。
● イドンナップ岳
ピセナイ山から見える北限の稜線に位置するイドンナップ岳とナメワッカ岳が堂々なる山容を見せている。
イドンナップへは、見えている反対側のシュウレ沢を遡上し新冠富士を経由して登ったのを思い出す。
イドンナップ岳(中央左)とナメワッカ岳(中央右)
● ルベツネ山とペテガリ岳
ペテガリ岳が端正な姿を見せて屹立している。
この山深い場所にある山へは、一度訪れただけだった。
ヤオロマップからルベツネ山を経てペテガリを歩き東側の大樹町へ降りる計画を立てていたのだが、計画倒れに終わってしまった。
中央左にルベツネ山、右がペテガリ岳
● 神威岳とピリカヌプリ
大好きな山で何度も登っている神威岳、その中でも初めて大展望を得ることができた2012年とカミさんが初登頂した2014年の山行が思い出深い。
私が日高山脈で初めて訪れた山でもあるのだ。
中央に神威岳、重なるように後ろにソエマツ岳、右にピリカヌプリ、左はニシュオマナイ岳
● アポイ岳、ピンネシリ
襟裳岬も近い日高山脈の南端、花の名山アポイ岳、吉田岳、ピンネシリもしっかりその姿を見せている。
さらに奥の稜線に見えているのは、豊似岳を中心とする山塊だろう。
右からアポイ岳、吉田岳、ピンネシリ。 中央左は豊似岳山塊
ピセナイ山山頂で素晴らしい大景観に酔いしれること、約40分。
十分過ぎるほど堪能した。記念の一枚を撮って、引き返すことに。
記念の一枚
この山だったら、また訪れることもできるだろう。
またね! と挨拶して山頂を後にした。
下山する稜線
ピクピク!
一杯の充実感と満足感に包まれて、ゆっくり下山する。
最近、下山は楽という定説は通用しなくなりつつある。
登りと同じ位の時間が掛かるし、若い時のように飛ぶようにはとても無理だ。この日も5合目付近を降りている最中、左太ももの内側がピクピクしだした。
攣ったりしたら大変と、立ち止まって痛気持ち良い方向に足を延ばす。
幸い1分ほどで収まったが、最近時々起こる現象なのだ。
何か良い対処法や予防法があると良いのだが・・・。なおさら丁寧に足を置き、慎重に下山。
1時間強で車のところまで戻ってきた。後は車で林道を走り静内湖へ、途中の岩肌にエゾトウウチソウが数輪咲いていた。
花の少ない時期、綺麗な色が愛おしい。
それなのに車だと止まることもなく徐行して通過。
やはり歩かなくてはいけないと痛感する。もう二度と行けない所、何回も行けない所ばかりなのだ。
面倒臭がらず、歩いて丁寧に見て回る。
そんな気持ちを大事にしようと話し合いながら帰路についた。