オコタンペ山から望む、オコタンペ湖
プロローグ
久しぶり、本当に久しぶりに山を歩いてきた。
昨年9月の大地震以来、罪の意識ではないが遊び歩くことが憚られる気持ちになっていた。
何度か準備まではしたのだけれど、やっぱり遠慮しておこうとウジウジしていた。これではいけない、以前のように活動的にならなくては心も体も衰えてしまう。このまま老化への一本道をたどって良いのか?
2月の大きな余震(震度5)が気持ちに踏ん切りを与えてくれた。
「どこでも良い、とにかく出かけてみよう!」山は半年ぶり、冬山は昨年も麓を歩いただけだったから概ね2年ぶりだ。
体力も不安だし、安全だけ配慮して雰囲気だけでも楽しんでこよう。
つぼ足でOK?
支笏湖までやってくると、やや煙っているものの恵庭岳がいつもの凜とした表情で出迎えてくれる。
今年はどこも雪が少なく、2月というのにどことなく春めいて見える。
湖畔道路から見る恵庭岳
お天気も良いしオコタンペ湖で遊ぼうか? オコタン分岐手前の駐車帯へ。
すでに何台かの車があり出発準備をしている人たちが居て、山登りの気配が充満している。触発されるように、閉まっているゲートから歩き出す。
何度も歩いている道が妙に懐かしい、恵庭岳に向かうルートには新しいシールの跡が付いていた。
雪は思ったより少なく締まっており、つぼ足で十分だ。しばらくしてオコタンペ山への取付き点。
いつの間にか「オコタンペ山登山口」の標識が立てられている。ここで一つの考えが浮かんできた。
この雪の状態ならそれほどラッセルしなくて登れそう、それならオコタンペ山から直接オコタンペ湖へ降りグルッと周遊して遊ぼうかと。
一気・一気!
スノーシューを履き、名物とも言える取付きの急登を登り出す。
適度に締まった雪にスノーシューの歯がしっかり食い込み気持ち良い。
オコタンペ山、取付きの急斜面
休み休みゆっくり登れれば良いと思っていたが、疲れや苦しさも感じないまま一気に登りきってしまった。
あんがい大丈夫かも? ちょっぴり変な自信のようなものが。取付き斜面を登りきって少し行くとC880mPからオコタンペ山へ続く稜線が見えてきた。
オコタンペ山への稜線が見え始めるあとは緩やかに登って行けばオコタンペ山だった筈。
振り向くと、谷を挟んで恵庭岳が逆光に浮かんでいる。
視界が悪く、全体が霞んでいるのが残念だ。
イチャンコッペ山や紋別岳も霞というか煙霧の中に沈んでいる。
以前経験したロシアの森林火災の時と同じような感じである。(中国北部での大規模火災が原因だったとのこと)
煙霧に霞む、恵庭岳
気分高揚! 稜線歩き
C880mPの南西側を巻きながらオコタンペ山へ雪の稜線を歩く。
樹林帯の切れた広い稜線、青空にダケカンバのシルエットが映えている。
気持ちの良い、広い雪の稜線を行く
真上は素晴らしい青空なのだが、スモッグで水平方向が煙って霞んでいるのが残念だ。
やがて真っ白に化粧jしたオコタンペ山の山頂が近づいてくる。
こんもりとした優しげな姿で、「ようこそ」と出迎えてくれているようだ。
オコタンペ山 山頂
左側のオコタンペ湖側を登る。
時折強い風が吹き、オコタンペ湖から吹き上がる雪煙に見舞わられながらの最後の登り。
しゃにむに下を向いて登っていたら、思わぬクラックがあり危ないところだった。
危うく落ちそうになったクラック
やっぱり山は良いな〜!
オコタンペ山の山頂、久しぶり。
木立の茂みが小さくなった感じがするが、思違いか錯覚だろう。小さな山だけど山頂に立つと、久々の爽快感に包まれ何とも気持ちが良い。
少々視界が悪くても、全てが輝いて美しく感じ、飽きることなく見入ってしまう。
山頂からの恵庭岳
南に恵庭岳、朝出会ったパーティは岩峰下の尾根辺りだろうか?
東にイチャンコッペ山と紋別岳、夫々良い姿をして佇んでいる。
イチャンコッペ山(左)と紋別岳(右) 手前のピークはC880mP
北西に稜線続きの漁岳(1318m)、何と言ってもこの辺の盟主。
積雪も多く、真っ白に輝く姿は一段と格好良い。
真っ白に輝く漁岳
西に小漁山(1235m)、小さいながら険しいアルペン的雰囲気を漂わせている。
小漁山
熱いコーヒーと、カミさんが工夫して持たせてくれた温かいおにぎりが、冬山の楽しさを倍増してくれる。
いつまでも佇んでいたい、そんな気持ちにさせられる。
結構苦戦!
さて、オコタンペ湖には、どうやって降りようか?
漁岳へ続く稜線のコル付近から南に伸びる尾根を降れば良い筈だ。降り始めた稜線からは漁岳と小漁山がよく見え、格好良い。
降る稜線からの漁岳(右)と小漁山(左)
次第にオコタンペ湖方向の視界が開けてきて、下る尾根を物色しながらコルへと降りる。
以前、漁岳・小漁山・小漁沼を経てオコタンペ湖へ降りた時のルートが手に取るように見え、懐かしい思い出が沸々と湧き上がってきた。
小漁山、手前から2本目の尾根を下った。
コルへ降りるとオコタンペ湖が出迎えるように全景を見せている。
ルートをオコタンペ湖の北西端に向かって伸びる尾根に決め、下って行く。
オコタンペ湖の向こう側には、丹鳴岳が独特の山容を見せている。
オコタンペ湖と丹鳴岳
選択した尾根は、斜度も適当でルンルン気分。
だが少し降りた所から木々が混み合い蔦が絡み合っている、通れる隙間を探すのも難しくなってきて大苦戦。顔を叩かれ、帽子やスノーシューを盗られ、体をひねりすぎてバランスを崩したり、たまらず右側の谷へ逃げ込む。
全体に雪は締まっているから雪崩の危険は少ないと思いつつも、万一のことを考え静かに刺激を与えないよう細心の注意を払いながら狭い谷を降りていく。(南無阿弥陀仏・・・、南無大師偏照金剛・・・)谷を降りきりオコタンペ湖の湖岸に出た時には恐怖と疲れから解放され、思わず叫び声をあげたほどだった。
ゆったり湖上散歩
このところ気温が緩んでいると言っても、オコタンペ湖はしっかり凍りついていて不安はない。
無謀な雪山での谷下りの恐怖と不安から解放され、周囲の景観を眺め楽しみながら久しぶりの湖上散歩。
のんびりテレテレ、散策だ。曲がりくねった、根性ダケカンバ。まるで誰かさんの人生のようだと苦笑い。
曲がりくねった、根性ダケカンバ
湖上からの景観で目を惹くのは、やはり小漁山。一番均整のとれた凛々しい山容なのだ。
オコタンペ湖から見る 小漁山
そして逆光に霞んでいるとは言え、やはり恵庭岳である。
オコタンペ湖からだと山頂よりも西峰の方が高く鋭く見え、最近人気だと言うのも頷ける。
湖上から見る 恵庭岳
湖上を横断してきて、間も無く湖上散歩も終了だ。
振り返ると私のトレースが小漁山から伸びているようにも見えた。
オコタンペ湖の湖上散歩
何の計画性もない思いつきだった今回のオコタンペ山とオコタンペ湖。
久しぶりの雪山で体力の不安もあったのだが、思いの外楽しく歩くことができた。
やっぱり山は素敵、こんな爽快な気分を味わえるのは私にとって山だからだ。そんな思いを噛みしめながら、5時間近い行程に終わりを告げたのだった。
喜びに浸りながら、登山口へ