イチャンコッペ山 (829m)

道央  2019.5.23(水)  晴れ

 


 

イチャンコッペ山

 

 3月末に思いも考えもしなかった肺炎にかかってしまい、その恐ろしさを思い知らされた。
肺炎そのものは約3週間で「完治」との医師のお墨付きをもらったのだが、その間に体力は高熱などで大幅にダウン、近くの公園までも足がふらつき僅か500mでギブアップしたほど。
それに加えて、気力・やる気の著しい衰え、何もする気になれないのだ。
「このままでは寝たきりの廃人同様になってしまうぞ、頑張れ!」と脳は体を叱咤激励するのだが、どうしてもその気になれない。自分自身が情けなくて涙が出そうだった。

 4月末からウオーキングなどリハビリを開始、5月中旬にはゆっくりならば多少の距離を歩けるまで回復した。
ちょうど山の花が咲く時期、自信は無いが見てみたいと思い、近場の低山に行ってみることに。

支笏湖道路の新緑に感動しつつ勝手知ったる樽前山へ向かうも、5合目からヒュッテに続く道路は冬季閉鎖中。
「何時もはG/Wにはオープンなのに〜」と愚痴ってもゲートが開く訳は無い。
仕方なく、イチャンコッペ山へと転進だ。

 

誓い!

 登山口で歩き出す前に一つの誓い。自分自身への約束だ。
「病み上がりであることを強く意識し、呼吸が乱れず汗をかかないペースをきっちり守る。誰に追い抜かれようが、気にしない。」

 イチャンコッペ山の取り付きは、高度差200mの急勾配の尾根である。いつもはここで一汗かいて準備運動代わりなのだが、今日は誓いを立てたばかりである。
時間は午前8時少し前、歩幅を小さめに超スローペースで歩を運ぶ。
ものの10分も経たないうちに、超スローペースに体も馴染み意識しなくてもペースを維持できるようになる。

新緑
白樺を始めとする新緑がすがすがしく美しい

小鳥たちの歌合戦!

 ペースがペースだけに体は快調、やる気・意欲も十分で、少々痛いのは古傷の膝だけだ。
ややもするといつものペースに戻したくなるが、誓っただけにしっかり死守。
花でも咲いていれば気も紛らわせるのだが、イチャンコッペ山は花の山では無く取り付き尾根で見られるのは精々スミレぐらい。

気を紛らわしてくれたのは、鳥たちの歌声。
朝食の時間帯なのだろうか、聞き分けられない程の種類と数の鳥たちが木々や草むらを飛び交い、おしゃべりしたり歌ったり。独唱あり、斉唱あり、合唱ありの賑やかさだ。
それなのに決して耳障りでは無いし、むしろ気持ちが休まる歌声だ。

やがて急登から平らなトラバースへと道は変わっていく。取り付き尾根の終了だ。

7合目ピーク
取り付き尾根を登り切れば、7合目ピークが見えてくる

 

展望歩き

 道は幌平山の山頂下をトラバースし、緩やかなアップダウンを繰り返しながらイチャンコッペ山7合目ピークへの登りへと移っていく。
道中は展望が比較的良く、支笏湖・紋別岳・幌平山・恵庭岳・樽前山・風不死岳・白老三山などが楽しめる道でもある。

 花は相変わらずスミレぐらいなのだが、セイヨウタンポポが以前に増して目につくようになっている。
明らかな外来植物であり繁殖力もとても強いので、除去が望まれる。
私もこの日、30本以上歩きながら抜き取った。(器具なしでは、根まで取れなかった)

 

幌平山
幌平山

展望を楽しみながら7合目ピークへの登りへ、標高差約150mの斜面でここを登れば標高的にはイチャンコッペ登山は成し遂げたようなものである。

 到着した7合目ピーク(785m)からは、支笏湖や樽前山から恵庭岳・空沼岳・札幌岳へと続く山並み、そして定山渓方面の山々が一望だ。

恵庭岳
近く立派に見えるのは恵庭岳。 歩いて来た稜線と幌平山

 ピークからの展望で目を惹くのは、何と言っても恵庭岳。
今日もその堂々たる勇姿を惜しげも無く見せている。
すでに雪はほとんど無いようで、漁岳方面に少々確認できる程度だ。

 

漁岳
漁岳、左に小漁山

 漁岳には山頂部に雪が残っていて、積雪の多さを物語っている。

 

山頂で思う

 7合目ピークで大展望を存分に楽しみ、山頂へと歩みを進める。
ほぼ平らな稜線を進み、最後に標高差50mほど登ればイチャンコッペ山山頂だ。
いつもと変わらぬ平凡な山頂風景、ただ一つ山頂標識が可愛く派手なものに塗り替えられアッピールしていたのが新鮮だった。

山頂
塗り替えられイメージチェンジした山頂標識

 時間を見ると午前9時45分、誓いを守って息を切らない汗ばむ程度のペースで歩いて来た。
60歳代には少し早めに歩いて1時間だった、今回は1時間40分。
概ね、倍の時間がかかったけれど体は楽で余裕もある。
すでに後期高齢者の仲間入りしている私、体力の限界まで頑張る必要は毛頭無いしガタがきている体を余計にイジメる必要も無い。
それより少しでも長く、山歩きを楽しみ、花と出会い、自然を感じて生きていきたい。
ボケや認知症予防のためにもなるだろう。
 「これからは、今日のペースを私の基本・マイペースとしよう。」 
カミさんお手製のランチで早お昼をご馳走になりながら、そう思った。

 

花探し

 さて下山は、少ないのは覚悟の上で花探しをメインにして降りよう。
登りで数は少なかったけれど、花のあった場所は確認済みだ。

7合目ピークと山頂を結ぶ稜線上で目だった花は2つ。
一つはシラネアオイ、僅か2輪しか見つけられなかったがどれも旬の綺麗な花だった。

シラネアオイ
シラネアオイ

シラネアオイはイチャンコッペ山でもよく見られる花、今からしばらくが見頃の花だ。

 もう一つは平凡だけどスミレである。
よく見ると山頂稜線に咲くスミレと取り付き尾根などに咲くスミレは、似ているようでもあり違うようでもある感じがする。
取り付き尾根のスミレは草丈15〜20cmで花の大きさが2〜3cmで色が薄いのに対し、山頂稜線に咲くスミレは草丈5〜10cmで花は1cm程度で濃い色をして群れ咲いている。
ただしその姿から両方ともタチツボスミレであることは間違いないように思われるのだ。

スミレ
取り付け尾根に咲く、タチツボスミレ

私は昔からスミレの判別には疎く、判らないことが多いのだが、調べてみて山頂稜線のスミレはアイヌタチツボスミレではないかと感じた。

下山時の山頂稜線は恵庭岳・漁岳などを正面に見ながらの歩きで気持ちが穏やかに和む。

恵庭岳
恵庭岳

 

 7合目ピークを下ってほぼ平坦な道筋にはオオカメノキやモミジなどが目立つ。秋には紅葉が綺麗な所だ。
 曲がりくねった枯れ木とオオカメノキの花のコラボレーション、キツツキの開けた穴が飾りのようだ。

枯れ木
枯れ木とオオカメノキ

オオカメノキ
オオカメノキの花

 オオカメノキの花は白く大きいから良く目立つ、もっとも白い花びらに見えるのは飾り花で本当の花は中心にある小さな星型の集まりである。

 モミジの木に花が咲き、実が付いているものもある。
紅葉を思い出させるような赤い色の小さな花がたくさん垂れ下がっている、実はプロペラのように落ちる時クルクル回りながら遠くまで飛ぶことから翼果と呼ばれる。

 モミジの花
モミジの花

 比較的陽当たりの良い道の脇などに、目立たずひっそり咲く花がある。
地を這う姿で紫まじりの草、ニシキゴロモ(キンモンソウ)だ。
本当に控えめで目立ちたがらない花なので、見落としてしまうことも多いと思う。
だが良く観察すると、意外に可愛くて美しいのに驚かされる。

ニシキゴロモ
ニシキゴロモ(キンモンソウ)

 取り付き尾根まで戻ってきた。ここを慎重に降りれば今回の山歩きも無事終了である。
木々や草の根元などに点々と小さな青い星が散らばっている。
フデリンドウだ。草丈5cmほどで茎に丸っぽく先端が尖った葉を付けている。

フデリンドウ
フデリンドウ

リンドウの仲間は大概青くて美しい星型の花をつける、大好きな花の一つなのである。

 尾根を下り始めてしばらく、思わず「オオッ!」と叫んでしまった。
多分イチャンコッペ山では初めて見る花、ツバメオモトを見つけたのだ。
思ってもいなかった花だけに、とても嬉しい。
若い花のようで、花もたった2輪しか咲いていないが、紛れもなくツバメオモトなのである。

ツバメオモト
ツバメオモト

隣の恵庭岳では沢山見られるのに、これまでイチャンコッペ山では見たことがなかった花。
環境的には生育していても少しもおかしくない花だし、大事に見守っていきたいものだ。

 

 肺炎からのリハビリを兼ねた今回の山歩き、不安はあったが思い切って出かけて来て本当に良かった。

特に以上の2点を今後の指針として得れたことは、私自身にとって大事なことのように思う。

以前のように回数の多さで山を楽しむことはもう出来ない、数少ない山歩きや自然との触れ合いをより濃いものにして楽しんでいきたい。

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system