利尻岳 (1721m) (道北)  1999.7.12  晴れ



7.12
鷲泊 0500
鷲泊登山口 0545
第2展望台 0800
利尻岳山頂 1000
利尻岳山頂 1100
沓形コース分岐 1120
三眺山 1230
7合目避難小屋 1330
見返台登山口 1420
利尻島は海上から見ても、サロベツ原野からも、礼文島からも、何処から見ても、島全体が一つ頂きの高みに引き絞られているようで、その屹立した姿は人をして惹き付けずにはいられない厳しくも激しい魅力を漂わせています。

多くの岳人達が憧れの山として1度は登ってみたいと思っているのでは無いでしょうか。

私達もその神々しい姿に魅せられ、憧れていたのですが、そう簡単に訪れる事の出来ない物理的な距離の遠さ。
折角行くのだから、可能な限り良い条件で登りたいと、登山日に一日、予備日二日、礼文島に二日の五泊六日の計画で訪れました。

7.11早朝に千歳の自宅を出て、一路稚内を目指します。
名寄を過ぎるとそれまでの美しく北海道らしい風景は一変し、背の高い木が無くなり1面笹原の荒涼とした丘陵地帯が続いています。
厳しい寒さと強風で木々が育たないのでしょうか?

昼前に稚内に着き、フェリーの出る夕方まで稚内周辺を散策して過しました。

宗谷岬にはTVなどで何度も見た事のある「日本最北端の碑」が建っていて多くの観光客で賑わっています。
残念ながら、期待していたサハリンは見えませんでした。


日本最北端の地「宗谷岬」

稚内市にある「北防波堤ドーム」は戦前の建物と言うのに古さを感じさせない美しい建造物でロマンを感じさせる佇まいでした。


北防波堤ドーム

その他、市内や野寒布岬、稚内公園などを見て回り、夕方のフェリーでいよいよ利尻島の鷲泊へ向かいました。
フェリーはかなり大きな船ですが、観光シーズンなのですね、満員で横になるのも憚られる状態でした。

フェリーに揺られる事、約2時間、待望の利尻島に着きました。
鷲泊港から利尻岳が夕日に赤く染まってスックと立っています。
明日はあそこに登るのだと思うと、ウズウズする感じです。


鷲泊港からの利尻岳

予約してあった旅館で夕食、明日早朝に登山口まで送ってもらう車の手配をしてから近くの海岸に夕日を見に行ってみました。


利尻島の夕日、遠くは礼文島

さあ、いよいよ待ちに待った利尻岳登山の日です。
朝0500に宿の車で鷲泊コース登山口のキャンプ場まで送ってもらいます。
7月のシーズン真っ盛り、2・30人の人達が登山準備をしていましたし、すでに出発した人達もかなり居るそうです。

登山口から、ほどない所にある甘露水で水を汲み、山頂めがけて出発です。
ここからしばらくは針葉樹の原生林の中を歩く単調な登り、時折木々の間から覗く鷲泊の海岸線や礼文島の島影が気持に変化を付けてくれます。


利尻島の北側海岸線、遠くは礼文島

歩き始めて2時間弱、視界が開け始め、利尻岳の雄大かつ鋭い姿が正面に現れ、振り返ると利尻島の北側海岸線、礼文島などが見え、憧れの利尻岳に登っていると言う実感を感じる事が出来、幸せな気分で長官山(1218m)を目指します。


長官山付近からの利尻岳

長官山に着いて利尻岳への道を見てみると、何組ものグループが長蛇の列を作って登っているのが見えています。
1組のグループに追い付いて驚きました。
「花の島・花の山巡り」ツアーの100人位の人達をたった2名のガイドが連れて登っているのです。しかもガイドの内1名は学生のアルバイトです。
その他のツアーグループも同じようなもので、ツアーのあり方について考えさせられる一場面でした。

8合目から上はかなりのガレ場、斜度も急になってきます。
何組ものグループの後を焦っても仕方ないと列の中の一員となって、ゆっくり付いて行きます。
足下に咲く、ボタンキンバイ、ハクサンチドリ、リシリゲンゲなどが気分を変えてくれます。

待望の山頂に着きました。
さすが海上の独立峰、礼文島、稚内からサロベツ原野、天売島と360度の大展望は息を飲むほどの素晴らしさです。


利尻岳山頂

写真を撮るのも場所を交代しながらと言うほど込み合っている山頂で、宿から持ってきたお弁当を急いでお腹に入れて、まさに交代と言う感じで山頂を後にしました。

下山は当初計画ではそのまま往路を降りるつもりだったのですが、大勢のグループの人達に囲まれて降りる気にならず、沓形に降りる事に急遽変更です。

沓形コース分岐から人は居なくなりましたが、三眺山までは急斜面のガレ場や

トラバース、南側岩稜の恐ろしいほど切り立った岩壁に圧倒されながらの険しい道です。


三眺山への下りで

御花畑も鷲泊コースを凌ぐほどの素晴らしいもので、堪能させられました。


険しい岩稜が続く

三眺山から沓形コース登山口の見返公園までは午後の日差しを正面から受けて降りていきます。
宿屋で用意してもらった朝食と昼食、とても塩辛くてその性でしょうか、二人とも喉の渇きが激しく水をかなり消費していました。
残り少なくなった水をちびちび分け合いながら、暑さと段差の激しい道に耐え、沓形コース登山口に帰り着きました。

見返り台公園に井戸を見つけ、「飲用には適しません」の張り紙は何のその、生き返った気分でした。

その後鷲泊へ帰り、宿のお風呂とトイレが嫌で、出来たばかりの町営「利尻富士温泉」でゆっくり休養。
露天風呂から利尻岳の姿を眺めながら、登ってきた喜びを何度も反芻したのでした。

天候に恵まれ、初日に登山する事が出来たので、予備日には島内を一周しているバスを利用して島内散策を楽しみました。
私達は路線バスを利用しましたが、定期観光バスを利用しても、金額的には余り変わりは無いようです。

島内を一周すると同じように見える利尻岳が微妙に姿を変え、表情を変えていくのが新鮮な感じです。


オタトマリ沼からの利尻岳

午後は姫沼に行き、そのまま鷲泊まで歩いて戻りました。
登山と違い、のんびり林の中や平地を散策するのもなかなか良いものでした。


姫沼からの利尻岳

夕食後、この日も昨日とは違う場所に行って、礼文に沈む夕日を眺めに行きました。


礼文島に沈む夕日

利尻岳は期待に違わぬ素晴らしい山でした。
でも、心の底から手放しで素晴らしかったと言う気持にはなれません。
それは、自分たちもその一人だった訳ですが、人の余りにもの多さです。

普段、行列を作って山に登るなんてした事も無い私達にとって、驚きでもあり、異常な光景でした。
山だけでは無く、観光地と呼ばれる所は何処も人で一杯です。
観光で生きている島だから、当たり前と言ってしまえばそれまでなのでしょうが、私には違和感のようなものを感じざるを得ませんでした。

多分、私のような人間は、観光シーズン以外に訪れるより満足する方法は無いのかも知れません。

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