モルゲンロートのチャクララフ
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モルゲンロート
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茜色に染まる山肌
今日はワリパンパ谷を少しの距離だがトレッキングを楽しむ事になっている。
ヴァケリアまで車で行き、ワリパンパ谷を2時間ほどのトレッキングだ。
そして晴れていれば、V字谷から針のように突き上げるチャクララフを撮影する心づもりである。村の生活圏を歩くので、いきおい村人達と出会い、その生活振りを伺い知る事も出来る。
集落の生活圏を歩いて行く
私達が歩いて行くと、子供達が外に出てきている。
声をかけ、挨拶しながら通り過ぎようとするが、子供達の様子が何か不自然。
子供らしい活発さ・輝きがなく、何か沈んだ目をしている子が多い。
お姉ちゃんにおんぶして
何か頂戴という、物乞いの目で立っているのだ。
親達もトレッカーが通る事を子供達に教えているようだ。
貧しさ故の事だろうが、なにか切なくやり切れない気持ちにならざるを得なかった。
別の見方をすれば、私達だって子供の頃、進駐軍の兵士達からチョコやガムをもらって逞しく育ってきたのだから良いのかも知れないが・・・。
民家の軒先
民家は粗末ではあるが、手入れが良くされていて、トウモロコシが干されていた。
大きな鳥を獲ったのか、羽を広げて干してあり、ちょっとビックリ。
大きな鳥が・・・
30分ほど歩いていると、突然リャマが数頭現れた。
皆さん、大喜びをしたのだが観光用の物と判って、これまた複雑な気持ちである。
飼い主の男は大声で写真代を請求しているようであった。
観光用リャマ
写真撮影予定地へやって来たが、あいにくどんよりした曇り空、山は全く見えず諦めるより仕方がない。
その先に見える次の集落にはキリスト教の教会らしき立派な建物が見える。
何所に行ってもマリア様の像があり、教会も多い、しっかり根付いているのだろう。
細い道には次々に集落が
車まで戻る道すがら、羊毛の糸を紡いでいる女性に出合い、挨拶するとニコニコしている。
身振りで写真をとっても良いかと聞くと、ポーズをとってくれたので撮らせてもらった。
写真を気にしない人も居るようだ、それともたまたま虫の居所が良かったのかな?
糸紡ぎをする女性
標高3500m前後のトレッキングは僅かな上り坂でも体が重く感じる。
ガイドはそれを承知で上り坂になると速度を極端に遅くして皆の様子を見ている。
アンデス入りしてすでに数日経つのに、まだ高度順応は完全ではないらしい。
車に戻ると、皆さん疲れたようでぐったりと座り込んでいた。
車で昨日通ったヤンガヌコ峠へ戻り、今日も撮影だ。
お天気は昨日が快晴、今日は雲が多く山の多くを隠している。
皆さんに言わせると、雲の流れる表情が良いのだそうだ。
言われるまま観察していると、確かに雲の流れによって山の表情が違って見え、コントラストや遠近感が違って見える事に気がついた。
カメラ屋さんはこれを狙っているのか・・・少し判ったような気がしてきた。
ワンドイ南峰(6160m)と西峰(6356m)
チャクララフ(6112m)南壁
ワンドイ南峰(6160m)山頂部
ワスカラン(6768m)
ガイド達が大きな声で「コンドル」と叫んでいる。
指差す方向を見ると峠とワスカランの間に黒い大きな鳥が羽ばたきもせず、滑るように滑空しているのが目に入った。
僅か数十秒の事であったが、初めての体験に嬉しく、しばし興奮が続いた。コンドルよ、姿を見せてくれてありがとう。
ヤンガヌコ湖付近まで降り、北東に延びるデマンダ谷を散策してみる事になった。
広々としたU字谷の底をのんびり散歩、気持ちが良い。
放牧されている馬や牛も気持ち良さげに草を食んでいる。
気持ちの良いデマンダ谷
おしゃべりを楽しみ、花を楽しみ、出会う人達と気軽に挨拶を交わしつつ、心から楽しんだ1時間のお散歩であった。
ワンドイの南に位置するワルカという丘から夕照のワンドイを撮影してみようと車を走らせる。
素晴らしいロケーションでイギリス人が現在ロッジを建設中の所だ。
その一角に三脚を並べ、構図を決めいつでも来いと待ち構える。それなのに日没直前に雲が湧くように流れ込み、ワンドイを隠してしまった。
こればかりは何とも致し方ない。
残念であったが教えて頂いた要領で帰国してから試してみようと思う。
夕照 (ワンドイ西峰)
諦めて引き上げようとしているとワスカランの横から月が昇り出した。
三脚も望遠も仕舞っていたので、ブレ覚悟の手持ちで一枚シャッターを押してみた。
ワスカランと満月
暗くなってホテルに入り、遅めの夕食時になって、一人の人がパスポートと別に仕舞っておいた日本円が盗まれたと騒ぎ出した。
しっかり探したが、無いと言う。
現金も大変だが、パスポートがなくては帰国する事も出来ない。
ツアーリーダーは早速対応に動き出したようだ。盗難は盗まれた人だけの問題ではない。
ツアー参加者は自分たちの周りに盗人が居るのかと不安な気持ちになり疑心暗鬼になるし、何より当然嫌疑もかかるのである。
自分たちばかりではなく、ホテル従業員やガイドたちにまで疑惑がかかる。
楽しかったツアーの雰囲気は一変してしまう、盗難とはそういうものである。折角の旅の途中でこんなことが起きて残念だ。
でも起きてしまった事は仕方がない、捜査にも積極的に協力し、速やかな解決を模索するしか無い。
そして何よりも他の仲間に嫌な思いを掛けないよう、貴重品の管理をしっかりしなければならないと改めて思った。