遍路12日目

(金剛頂寺、吉良川町、奈半利町、27番神峯寺、安田町)

 

ぶつ像

 

遍路12日目
2008.3.16(月) 晴れ

0700 金剛頂寺宿坊
0800 吉良川町
0915 羽根町
1130〜1240 奈半利駅
1345〜1400 安田町
1510〜1540 27番 神峯寺
1630 民宿 浜吉屋
   
今日の歩行距離

51,335歩
32.4km

総歩行距離
479,405歩
304.7km

お勤め

金剛頂寺では朝6時からお勤めが始まる。
昨日お会いしたお坊様も参加されていた、どのような方かは知らないがお寺はかなり気を使っている感じであった。
読経はお坊さんの声も大きく聞き易い、拍子木のようなものでテンポを取ってくれるのでリズミカルでスムースに出来るが、音感の無い私には1人では難しそう。

読経の後、四国にまつわるお話があった。
昔四国中の悪霊という悪霊は全て足摺岬に追われ、その時足を引きずりながら逃げたので足摺岬と呼ばれるようになったこと。
金剛頂寺の大師堂は本堂に背を向けているが、これは悪霊のいる足摺岬の方を監視している為である。など面白い話であった。

 

土佐街道の古い町並み

7時に宿坊を出発、へんろ道を使って行当岬西側へ降り国道へ出る。
昨日右足にマメを作ってしまったカミさん、処置をしテーピングテープで保護をしているが心配だ。
足の調子、様子を確かめながら旧土佐街道を歩く。

椿の遍路道椿で赤く染まった遍路道

1時間程で吉良川の町並み、古い民家が良く手入れされて並びしっとりした落ち着いた雰囲気のいい町。
生花が道路に面して軒並み活けてあったり、門や戸に竹筒を花器にして花を飾っていたり、住む人々の粋な心が伝わってくるようだ。

次に通る羽根の町も同じような感じで、小京都と言っても過言ではない。
どこからそのような文化、風習が伝えられたのか興味がわく。

軒が何層もある独特の家民家

羽根の市街地を過ぎ遍路道は国道から離れ中山峠を越える。
山道へ入って行く途中に市営住宅があり、そこに居た5人程の漁師さんと思われる1人が「この道は違うぞ、とんでもない方に行ってしまう」と言う。
そんな筈はと思ったが「道を教えて下さい」と言うと、もう1人が「でも、この前もお遍路さんがこの道を通っていたぞ」とわいわいがやがや。
地図を取り出して「ここから山を越えるのです」と言うと「それならこれで良い、でも何でわざわざ山を越えて行くんだ。きついだろう」
皆さん悪気は無い。楽で良い道を教えてくれようとしたのだ。
有り難うございました。

漁師さん達の心配とは裏腹に中山峠の道は良く整備され、気持ちの良い遍路道だった。

 

お昼ご飯の大お接待

遍路旅に出てから2週間、毎日洗濯が出来、着替えは一組で十分と分かった為、機会があれば家に送り返そうと話していた。
奈半利近くでみかん屋さんが並んでいたので、丁度良いと子供達にブンタンやデコポンなどを送り、その中に送り返す着替えなども入れてもらった。

山歩き大好きの私達はHYML(北海道の山メーリングリスト)と言う会に入っていて、山に関する情報交換などをしながら一緒に山歩きを楽しんでいる。
その会員の1人が現在高知におられ、今日奈半利の駅でお会いする事になっていた。


約束の11時半に着けるよう歩いていると、これまで快調だったカミさんの様子が少し変。
足のマメが痛むようだ、庇いながら歩いているのが分かる。
取りあえず、もうすぐの奈半利駅まで行って手当をする事にする。

レンゲソウ余り見なくなったレンゲ畑

奈半利駅に着くと、NMさんが待っていた。
初対面の挨拶をする暇もなく、高架線の下の日陰にテーブルを出し昼食とは思えないような数々の手作り料理をすすめてくれる。
山男らしくコンロで器用に熱いみそ汁やコーヒーも作ってくれた。
旅館生活で生野菜やフルーツに飢えていたので、家庭菜園で作られた新鮮な野菜やフルーツを遠慮なく沢山頂戴した。
彼は6年程前に札幌勤務をし、そのときにHYMLに入ったとの事。
後半の人生を悔いなく楽しむため、今後は北海道に移住する予定だとか。
そんなこんなで楽しい時間はあっという間に1時間以上経ち、再会を約束してお別れした。
大お接待だったのに、食べるのに夢中で写真が一枚も無くごめんなさい。

心配だったカミさんの足をC'Kしたら昨夜処置したマメに再び水が溜まり、それが圧迫されて親指と人差し指の間の皮膚の柔らかい所に押し出されたように溜まっていた。
水を出し、テープで皮膚の弱い部分をしっかり補強したら痛みは和らぎホッとする。

 

緊急事態、ヘルプ!

奈半利から海岸線を約1時間歩けば、安田町。

奈半利近くの海辺奈半利の海岸

今日の宿「浜吉屋」に荷物を置かせてもらい、27番神峯寺へ向かう。
神嶺寺へは、真っ縦と呼ばれる急坂を往復する約7kmの道のりだ。
往復2時間少々あればと何も持たず空身で宿を出る。
カミさんを先頭に快調なペースで坂を登って行く。
ところがである、お寺の駐車場まで500m程に来た所でカミさんの足がピタリと停まった。
見ると汗をびっしょりかいていて、顔色が青白く動悸が激しい。
喘息の気配はないしどうしたのかと聞くと、目に幕がかかったようで体に力が入らないと言う。
「シャリバテ」である。
お腹が空き過ぎた時に良く起き、血糖値が下がって動けなくなるのだ。
昼食にご飯を食べず、美味しい美味しいと生野菜ばかり食べたツケが回って来たのだと思う。
とにかく何か糖分を摂らせなくてはならないが、空身で何も持って来ていない。
ザックの中にはエネルギーゼリーやカロリーメイトも入っているのに大失敗だ、でもここで反省しても仕方がない。

急がなくてはと、山道の日陰に座らせて寺まで走りだした時、昨日お会いしたアメリカ人女性(Helenさん)が降りて来た。
これ幸いと事情を話し(正確に伝わったかどうかは不明だが、エマージェンシー状態だと言う事は理解してくれた)持っていた飴とチョコを頂いた。
彼女も心配してしばらく居てくれたが、甘いものを食べさせ10分もすると顔色が戻って来た。
聞くとお寺には売店もあったというので、もう大丈夫と彼女には降りて頂いた。

神嶺寺の登りゆっくりだぞ

さらに休ませてから超スローペースで売店まで登り、甘いジュース、アイスクリームなどを食べさせると少し元気が出て来た。
良かった〜!!

 

神峯寺

 

神峯寺神嶺寺

カミさんのこと、アメリカ人女性に助けられた事、お大師様に心からお礼を申し上げ、ゆっくり神峯寺をお参りする。
格調を感じさせる境内、特に登ってくる人達を見ておられる大師像は風格と言うか神々しささえ感じ、思わず合掌してしまった。

大師像参拝する人を見ている大師像

境内には湧き水があり、冷たくて美味しい。
静かでしっとりとした山の中の境内である。

神峯寺山門神嶺寺山門

神峯寺からの下りも体調に注意しながら1時間かけゆっくり降り、民宿に帰り着いたのは午後4時半になっていた。

フラフラしながらも頑張ったカミさん、知らず知らずに痛めた右足を庇っていたのだろう今度は左足にもマメが出来てしまった。
今日は彼女の厄日であったのかも知れないな。

今日の宿の浜吉屋、気配り上手のおばあちゃん1人で切り盛りしている感じの宿。
特段何かが素晴らしいという訳でもないが、何となく居心地の良い宿であった。

 

 

油断大敵の言葉通り、ここまでマメらしいマメも出来ず来れたのに、脚の裏にマメ、水の行き場がなくて指の間の柔らかい所に入り込んで飛び上がる程痛い。
どんなに頑張っても自然に脚を引きずっている自分が情けない。
加えて、神峯寺に行くのに宿にザックを置いて、不用意にも何も持たず出かけてしまった。
急坂に次ぐ急坂で「シマッタ〜!」
低血糖、目の前がぼんやり暗くなり、脂汗が体中にべったり。
大変な事になってしまった。

救いの神は昨日おしゃべりしたアメリカ人。
甘いものを頂き、少し元気に。
売店では血糖をあげる為に食べまくり、やっと山門に立つ事が出来た。
ご主人様、心配おかけしました。

 

山越えて 峠のうぐいす 待ちて鳴く


 

 

 

 

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