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体調を考えて
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伊尾木海岸に出るとへんろ道は国道から離れ防波堤の上を歩くようになっている。
国道からわずかな距離だが離れ、海のすぐ脇を歩くのは気持ちが良い。
堤防の上を歩く
堤防と国道の間には土佐鉄道が走っていて、野菜の絵や阪神タイガースの虎模様が描かれた列車が通り面白い。
9時頃、海から一旦離れ、安芸市へ入る。
阪神タイガースの春期キャンプが行われている町だけあって、タイガース応援のペイントや幟が至る所に立っていて微笑ましい。
一方、この町には古い造り酒屋や醸造工場などもあり、落ち着いた静かな町でもあった。通りを歩いていると妙な看板を見つけた。
行政への批判看板、行政に不満を持つ人はどこにでも居るが、こうして公然と反対意見を表明する人は少なく、思わず笑ってしまった。
安芸市を過ぎると道は再び堤防道路となり、海沿いや松並木の中を進んで行く。
八流山極楽寺と言う小さなお寺の横を通り赤野の休憩所で休んでいると、清掃ボランティアの地元の方が少し行くとお遍路さん用の休憩小屋があるからそこで休むと良いと教えてくれた。
1km程行くと、立派な小屋というより家がありコーヒーやお茶を頂けるようになっていて、感謝の納め札や色紙で埋め尽くされていた。
奇麗な休憩所
室内はきちんと整理され、花なども飾られていて、ゆっくり休んでもらおうと言う気持ちが熱く伝わってくる休憩所で本当に有り難い小屋であった。
そして間もなく琴ヶ浜と言う広くて長い浜、長さは5キロメール位あったと思う。
浜には漁船を引き上げる為なのだろうか、ウインチや小型のブルトーザーにワイヤーを付けた物が数百m間隔で並び、何人かの人達が待機していた。
琴ヶ浜
松林の中を通るへんろ道を歩いていると、おばちゃんに呼び止められ大きな夏みかんを2つもお接待して頂いた。
大感謝でお礼をし頂いたが、正直重くなるのは嫌、でもみかんは嬉しいと板挟みである。
妥協案で少し進んだ所で美味しくお腹の中に納めてしまった。
ありがとうございました。
松林の中を行く
夜須の町へ入る少し前、異様な光景を目にした。
道を切断したかのような物がそのまま垂直に立っている感じなのだ。
何かと思っていたら、可動橋とのこと。
定められた時間になると開き(垂直に立つ)、船を通すのだと言う。思いがけず珍しい物を見る事が出来て得をした気分。
午後1時頃、道の駅「夜須」へ。
結構賑わっている。
トマト、コロッケ、じゃこ天、おはぎなどを食べ、今日は低血糖対策に抜かりは無い。
食べている最中、バスで来ていた団体遍路の女性が「バスに乗って寝てても飽きてしまうのに、歩いていたら退屈で仕方ないでしょ?」と話しかけて来た。
そこで「歩いて寝たら危ないっしょや。車に乗っていては見えない物が見えて楽しいですよ。試しに次のお寺までお歩きになったら如何?」と言うと、手を横に振ってバスにさっさと戻って行った。
これって、おちょくられた訳かい?
夜須の海岸
夜須から約1時間歩くと国道沿いに今日の宿「かとり」はあった。
この宿、規模は結婚式も出来る大きな旅館。
でも、おへんろにとってはお風呂や食堂に行くのに一々外に出て別館へ行かなくてなならないなど、ちょっと不便。(贅沢な願望かな?)
でもさすがは料理旅館、食事はとても美味しかったですよ。
長い単調な道を歩いているとフッと考え事をしている自分に気付く時がある。
国道沿いなどは車に注意を払わなければならないし、風や雨などでもボォ〜としていられない。
今日のような防波堤歩きは他に人もおらず、会話が途切れたりしたとき、1人で何か考える時間が出来る。今日は何度か宗教って何だろうって考えていた。
今の幸せの為か、現実逃避なのか、心安らかに過ごす方策なのか、安心して死ぬ為か、来世の幸せを信ずる為か、あれこれ馬鹿な理論が頭の中でぐるぐる廻っている。
勿論、結論が出たり真実が分かる筈も無い。
怪しげな新興宗教は別として、宗教の持つ意味合いはとても大きく宗教戦争が起きる位すさまじい。
それなのに私はその意味合いを理解していない。
私が馬鹿なのか、それとも教えない教育に問題があったのだろうか。
頭の中で枝葉末節な部分が大きくなったり、本筋から外れたり、これが妄想という物か。「お父さん、危ないわよ!」カミさんの声で我に返る。
自転車が後ろからやって来たのだ。
これを機にまたカミさんと、子供の話、四国の風景の話、道ばたに咲く花の話など、とりとめもない会話に戻るのである。
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