遍路37日目

(67大興寺 ・・・73出釈迦寺)

香川の風景

 

遍路37日目
2008.4.10(木) 雨

0615 民宿 青空
0700〜0720 67番 大興寺 
0930〜1005 68番神恵院 
69番観音寺
1100〜1120 70番 本山寺
1345〜1440 71番 弥谷寺
1515〜1535 73番 出釈迦寺
1550〜1610 72番 曼陀羅寺
1615 門先屋旅館
   
今日の歩行距離
54,543歩
36.8km
総歩行距離
1706,479歩
1073.5km

寄り合いのお寺

予想通りの雨、夜中は台風を思わせる暴風雨でガラス戸がガタガタ鳴り、何度も目が覚めた。
風は概ねやんだが、雨は降り続いている。
6時過ぎ、宿のご夫婦に見送られ出発、おにぎりをお接待して頂いた。
ほのぼのした、遍路の気持ちを知っている良い宿だった。

大興寺山門
興寺山門

雨で静かな山里の景色を楽しみながら、1時間弱で67番大興寺。
山門を潜り入って行く、本堂の縁に近所のお年寄りが10人程座り住職を囲んでコーヒーを飲みながら話をしている。

 

大興寺本堂大興寺本堂

地元の人達から親しまれ、気さくに集まる場になっているようだ。
その人達の横でお参り、小さなお寺だが暖かさを感じるお寺である。
納経し、出発しようとすると奥様からバナナと紅葉まんじゅうのお接待を頂いた。
ありがとうございました。

 

同居のお寺

次に神恵院を目指すが雨と低くたれ込めた雲。
遠景は見えず遍路マークを頼りに歩くのだが方向感覚がおかしくなり、どこをどう歩いているのか見当もつかない。
観音寺市内に入ってようやく位置が判り安心する。

68番神恵院と69番観音寺は同じ敷地にあり、よく見ないとどちらがどちらか判らない。
納経所も共通で、いわば同居のお寺である。

神恵院神恵院

神恵院は山門を入って観音寺の境内を通り過ぎ、階段を上がった所にある。

神恵院への階段神恵院

本堂、大師堂が寄り合って建っていて観音寺に気を使いながら遠慮しているようにも見える。

神恵院から観音寺を見る神恵院

 

観音寺は朱塗りの本堂が目立ち美しい。

観音寺観音寺本堂

納経所で両方の納経をして頂く、何だか徳をしたような気分だ。

 

孤高のお寺

雨は強弱をくり返しながら降り止まない。
観音寺からは川の堤防沿いをのんびり歩く。
河川敷には菜の花が咲き乱れとても美しい。
しばらく歩けば前方に雨に煙る本山寺の五重塔が見えて来た。
堤防の桜とマッチして絵のようだ。

雨に煙る五重塔桜と五重塔

本山寺は平地にありながら風格を感じさせるお寺。
建立当時の姿を保っている珍しいお寺の一つでもあるという。

本山寺本山寺五重塔

国宝に指定されている本堂は実に立派、古い五重塔とよく似合っている。
このお寺は建設当時の姿を守りながら、一人静かに佇む孤高の人の感じがした。

本山寺本山

ゆっくりお参りし、雨の境内でおにぎりとバナナで早めのお昼を食べた。

 

霧に浮かぶ試練のお寺

次の弥谷寺へ向かう。
雨が本降りになって、騒音と水しぶきで話も出来ない国道を歩くのは辛い。
幸い、1時間程で国道から外れ遍路道へ入る。
孫の話、この冬に死んだ愛犬の思い出話などで気を紛らわせながら歩く。
篠突くような雨、景色も楽しめずひたすら歩くしかない。
足を交互に出しさえすれば、そのうち着く。

やがて前方に山の気配、真っすぐそちらに向かって道は続いている。
雨雲が低く、小山はすっぽり覆われている。

弥谷寺の山門は霧と言うより雲の中、神秘的・幻想的な雰囲気が漂っている。

弥谷寺山門弥谷寺山門

山門からうっそうとした木々の道を登り仁王門石段を上って行く。
さらに108段の階段を上がって本堂と大師堂の分岐点に出た。

お腹もすいたのでお参りの前に満たそうとベンチに座り、雨の中おにぎりや紅葉まんじゅう、みかんなどを食べる。
1・2度、カミさんが咳き込んだ。
あれ!と思ったら、これが引き金になり喘息症状・・・。
急いで吸入薬を取り出し吸入しようとするが、呼吸が苦しくて吸入できない。
気管が狭まって呼吸が出来ないのだから、どうすることも出来ないのだ。
とても苦しそう、雨をさえぎってやることも出来ない私はただ背中をさするだけだ。
2・3分して息が僅かに出来るようになってきたので、吸入薬を渡す。
何度か試みるがタイミングが合わず上手く吸入できない。
どうやら成功、とたんに呼吸がそれまでとは比べものにならない程、整い始める。
5分も待つと気管が開いて嘘のように平常に戻った。
薬の威力の凄さである。ありがたい。

大丈夫と言うので、ゆっくり本堂へ登る。
右手の岩壁には石仏が彫られ、それが霧と雨で数m先が霞んで幻想的かつ神秘的である。
写真と撮ろうとしたが、フラッシュを使うと霧が反射して真っ白になっていまい、フラッシュを使わないと露光不足で写真にならなかった。

本堂をお参りし一旦下り大師堂へ、ここは靴を脱いでお参りするようになっている。
雨でずぶ濡れの歩き遍路にとっては辛い要求だ。
タオルで体を拭き、廊下などを汚さないようにするには10分位の時間を要した。
大師堂ではいつもに加えて、先ほどの緊急事態が大事に至らなかったお礼を心から申し上げた。

霧に佇むお大師様弥谷寺お大師様

弥谷寺は岩場にある数少ないお寺。
岩山を工夫してお堂が建ち、独特の雰囲気を有していて是非晴れた日にお参りしたいものだと思った。
高台から見渡す景観も素晴らしいのではないだろうか。

本来は弥谷寺のそばにある温泉施設を今日の宿として予定していた。
あいにく満室とのことで今日はもう少し頑張ることになった。

 

老女のお寺

弥谷寺からは山の中の遍路道を下って行く。
山道には雨が小川のように流れ、やや歩きにくかったが距離的には僅か。
40分ほどで73番出釈迦寺、山の中腹にある小さなお寺だ。

出釈迦寺出釈迦寺

本来であればこのお寺の奥の院である捨身が嶽にお参りするのであるが、この日は雨で奥の院は雲の中、残念ながら諦めた。

出釈迦寺出釈迦寺

72番曼陀羅寺へ戻り、お参りする。

曼陀羅寺曼陀羅寺

 

こちらも小さいお寺ながら風情を感じる中々良いお寺である。

曼陀羅寺鐘楼曼陀羅寺

納経所におられた老女から「雨で大変だったね、今日のお参りはここまでかい? ゆっくり休んで頑張りなさい」と言われ、疲れた心がその一言で癒されたような気がした。
人柄というか、威厳というか、これまでの人生を感じさせる尊敬していまいそうな老女であった。

 

今日の宿は曼陀羅寺の門前、門先旅館。
純朴でおっとりした女将が色々面倒見てくれる。
大きなお風呂にゆっくり入ると、疲れが飛んでゆくようだった。

 

 

花の季節も深まって、どこも桜の盛りと言うのに、また雨。
弥谷寺近くの宿がとれなくて73番出釈迦寺まで歩くことになった。
弥谷寺の階段で呼吸が乱れ、吸入が間に合わない。
雨の中、発作に苦しむ。
ここまで風邪を引かぬよう気をつけて早め早めの吸入でしのいできたのに残念!
気を取り直してお参りする。
天気ならば良い景色だろうと残念な気持ちもあるが、もやの中のお寺も霊験新たか。

 

濃きもやに 溶けいる如く 岩仏
      霧をまといて 静かに座る

 

 

 

 

Homeへ
Page Topへ
36日目に戻る
38日目に進む

 

inserted by FC2 system