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屋島寺
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道は次第に登りになってくる。
住宅地なのに急坂で小樽の町を彷彿とさせるような坂道だ。道はやがて屋島の遊歩道となり、三々五々朝の散歩を楽しんでいる人達が歩いている。
かなりの急坂だが舗装されていて歩き易い。
「くわず梨」というお大師様伝説の場所を過ぎ、20分程登った所でカミさんが咳をしだした。
やばい! 喘息の兆候のようだ、すぐに吸入薬を使いしばらく休む。
タイミングよく薬を使えば何事もなく過ごせるのだが、タイミングを遅らせてしまうと弥谷寺の時のように苦しむことになる。たっぷり汗をしぼられた屋島の台地は思っていたよりずっと大きく平らで、お寺のみならず水族館やホテルが建ち並んでいる。
屋島寺
屋島寺は山門を入ると正面に朱色も鮮やかな本堂、その本堂の脇には何故か大きな狸の夫婦が像が並んでいる。
本堂と狸像
お堂の他にも宝物館などもあり、広大なお寺であった。
大師堂
日曜日とあって朝の境内は静か、ゆっくりとお参りさせて頂いた。
八栗寺へ向かう下り坂から屋島の合戦の場所を見下ろせる所があり、こんな所で源平の合戦が行われたのかと妙に納得した。
その正面には八栗寺のある五剣山が見えている。
屋島の合戦の地
壇ノ浦へと下る遍路道は自然の山道、標高差280mを一気に駆け下りる。
降り切って州崎寺へ渡る橋から見る源平合戦の主戦場「壇ノ浦」は狭く、これなら弓矢でも戦えたろうと思う幅であった。
州崎寺
八栗寺の麓辺りは石屋が多い町であるらしく、古風なものから超現代風の石の置物、飾り物が作られ展示されていた。
八栗寺は五剣山の中腹にあり、次第に登りになってくる。
ケーブルカー駅の左手に道が続いていて、道は奇麗に整備されているが結構な急坂だ。
五剣山といわれるように峯が幾つも並び聳え独特の形をしている。
札幌にある八剣山に良く似ていると思う。
八栗寺
屋島寺に引き続き一汗かいた八栗寺はケーブルカーが通っているせいか参拝の人が多い。
八栗寺本堂
大きな岩盤を背に建つ八栗寺はそれだけで厳粛な気持ちにさせるようだ。
ゆっくりとお参りするがこのお寺、本堂と大師堂がかなり離れている。
本来なら両方をお参りしてから納経するのだが、ちょっと目をつぶって頂いて大師堂をお参りする前に納経して頂き大師堂を経由して志度へ下った。
八栗寺大師堂
八栗寺から230mを下りきると、志度湾が静かに広がって養殖棚が一面に並んでいた。
四国には至る所にお地蔵様や石仏があり、近所の人達によって手厚く守られ大切にされている。
この志度でも幾つものお地蔵様があり大切にされているが、普通なら赤い前掛けがここでは水色で新鮮に感じた。
もしかしたら海の町だからであろうか。道の駅「源平の里 むれ」で一休みしてお腹を満たし、志度へと向かった。
志度ではそのまま今日の宿へ行き荷物を預かってもらって志度寺へ。
志度寺
志度は平賀源内の出身地、お墓もあり急に身近に感じてしまった。
志度寺は海辺の町中、本堂は古く年月を感じるが、五重塔は新しいもののようだ。
志度寺五重塔
このお寺、敷地内に診療所や老人介護施設があったが何故なのだろう。
昔からお寺が診療所としても使われてきたのかしら。志度から長尾までは約7km、途中には桃の農園があり花の時期で桃色に染まって美しい。
溜め池や川には大きなコイやフナが沢山いてバシャバシャ跳ねている、白鷺、青鷺、鵜が魚を狙っている。自然豊かな良い所だ。長尾寺も町中にあるこじんまりしたお寺。
長尾寺山門
多くの人にとって結願直前のお寺、そのため全てに控えめなのだろうか。
そんな気にさせる雰囲気を持った静かなお寺であった。
志度行きのバスには2時間強の時間がある。
大窪寺の方へ塚原と言う川と道が交差している所まで足を伸ばし、引き返した。
大窪寺からの志度コミュニーバスは結願したお遍路さんで一杯だった。
皆さん、さすがに満足そうな穏やかな良いお顔をされている。
一応に嬉しそうだ。おめでとうございます。後部座席から一人の女性がやって来て私達に挨拶する。
わぁ! 鹿児島のバイク姉ちゃんだ!
「おめでとう」と結願を祝福すると嬉しそうに「明日高野山に行って、それから室戸岬で日の出を見られなかったので、もう一度行こうかと思ってます」
彼女、すっかり四国病に取り憑かれてしまったようだ。笑顔が輝いている。私達が今日は長尾寺で宿が取れなかったので志度に戻るところだと言うと、
「大師の道を歩く会」という団体がかなり前から宿を押さえていて、影響を受けている人も多いと教えてくれた。
このところ私達も連日のように宿を断られていてその理由が分かったが、同じ歩いている人達が相手では仕方ないと納得した。私達も明日結願で来たらどんな気持ちになるのだろうと話す。
どんなになるか分からないけど、明日一日精一杯歩こう、それが大事だと思う。
それにしても四国へ来て本当に良かった。
普通だったらとてもこんなに歩き続けることなど出来ない。
時々、札所をけなしたりしたけど札所と言う目標があるからこそ歩き続けることが出来た。
点と点を結んでいくから線になる。
それが四国遍路の魅力なのかも知れないなどなど、おしゃべりを楽しんだ。
今日の宿はひょんなことから志度の富士屋旅館。
料理旅館の看板を出しているだけあって、夕食の美味しかったこと。
40日に及ぶ遍路旅の中でも、1・2を争う程の美味しさであったし、宿の人の温かい気配りにも感激した。
四国最後を飾るにふさわしい、有終の美の旅館であった。
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