ヒマラヤ紀行 Part 1

 

カトマンズ〜ナムチェバザール

 

ヒマラヤ

 

11/1(日)晴れ 千歳〜インチョン(韓国)
11/2(月)晴れ インチョン〜カトマンズ
11/3(火)晴れ カトマンズ
11/4(水)晴れ カトマンズ〜ルクラ〜バンカー
11/5(木)晴れ バンカー〜ナムチェバザール
11/6(金)晴れ 高度順応日

ネパール・カトマンズへ

日本からネパールへは、タイのバンコクを経由して行くルート、中国の成都を経由するものなど幾つかあるが、私は韓国インチョン空港を経由するルートを利用した。
このルートは新千歳から成田や関西空港に出る必要が無く乗り継ぎも一回で済むので、北海道からネパールへ行くには便利であった。

韓国インチョン空港は成田より大きく機能的で使い易い、近くのホテルも24時間態勢で利用者の送迎を行うなど、アジアのハブ空港としての地位を着々と築いている印象である。

 

 

喧騒の町 カトマンズ

カトマンズの国際空港でまず行うのが入国審査とビザの取得、審査や申請そのものは至って簡単なのだが、何故か時間がかかる。
1時間以上行列して待たなければならない、要は人の能力と言うかシステム化されていないのが原因のようだ。
これがネパールか!
腹を立てずにビスターリ! ゆっくりゆっくりでいきましょう。

空港から市内のホテルへ向かう車から見るカトマンズの街は、全体に埃っぽく交通ルールなど無いかのように我れ先にクラクションを鳴らしながら車やバイクが突進して、正直怖い。

「埃と喧騒、そして人いきれの街」というのが、カトマンズの第一印象であった。

カトマンズカトマンズの街


翌日には繁華街のタメル地区やダルバール地区を散策したが、数時間で暑さと人いきれにぐったりしてしまった。

ダルバール地区の寺院群はとても立派で歴史を感じさせるものだったが、保存状態は決して良いとは言えずもったいない。
こんな所にも国力が、経済力が如実に反映されているようだ。

寺院
ダルバール地区の歴史を感じさせる寺院群

 

ルクラ(2840m)へ

いよいよトレッキング。
期待に胸を高鳴らせながら出発点とも言えるルクラへ国内線で向かう。
国内線のターミアルは出発便の案内表示も無く、係員が「○○エアー、××便」と叫ぶだけ、それも現地なまりの英語で良く聞き取れない、自分の乗る飛行機を確認するだけで神経を使い果たし疲れてしまう。

ようやく乗れた飛行機は15人乗りの小型機、隣の人と体がぶつかるたびに「エックスキューズ・ミー」、左手にヒマラヤの山々を見ながら約30分のフライトで谷間のルクラ飛行場へ。

上り坂を利用して滑走距離を短くしようと意図されたかのような飛行場、想像以上の傾斜である。
離陸する飛行機は飛び立っても下に飛んで行き、しばらくしてから上昇に移る。
全くもって、珍妙なる飛行場ではある。

ルクラ
ルクラ飛行場、後ろの山は「コンデ・リ」

 

キャラバン隊、編成完了

ルクラ飛行場には私のガイドである「ニマさん」が迎えにきてくれ、彼の案内で近くのロッジに集結していたメンバーと合流する。

私たちをサポートしてくれるのは、サーダー(グループリーダー)のニマさん、コックのリンジさん、キッチンボーイ2名、ポーター2名にシェルパの合計7名、それにゾッキョ3頭という豪華メンバー、まさにキャラバン隊であり、大名行列である。

荷造りをしているパーティを後に、ニマさんとトレッキングの第一歩を踏み出す、お天気も快晴で私たちを祝福してくれているようだ。

歩きながら簡単な自己紹介、それによるとニマさんは48歳、若い頃は高所シェルパとして活躍し、ダウラギリ(8167m)、プモリ(7165m)、その他6000m峰を幾つも登った経験豊かなガイドであり、誠実そうな人。
素晴らしい人にガイドをしてもらえることになり、嬉しい限りだ。
ただ日本語が全く駄目なのが少し残念、意思疎通には万全を期さなければと改めて思った。

 

ナムチェバザール(3440m)へ

エベレスト街道周辺を歩くトレッカーは誰でもまずはナムチェバザールへ向かう。
いわば、ナムチェバザールはエベレスト街道の中心地とも言える町である。

ルクラから道はドード・コシと呼ばれる大きな渓谷まで一旦下り、川沿いを何回も吊り橋を渡りながら緩やかに遡って行く。

道幅も広く、トレッキング道と言うより生活道路の印象が強い道である。

吊り橋吊り橋

その道を数多くのトレッカーが点々と列をなして歩いている。
体格も皮膚の色も目の色も多種多様、世界中から集まったトレッカーの群れ、人種見本市の感さえするようだ。
ヒマラヤの大展望を期待して登るトレッカー達、トレックを終えて満足そうに降りてくるトレッカー達、彼らの荷物を運ぶポーターやゾッキョ、それに100kgを越える生活物資を運ぶポーター達、彼らの巻き起こす埃が煙のように漂いむせ返るようだ。

正面に端正な岩山が見え始めた。
クーンビ・ラ(5765m)と言う山、神の住む山とされ登ることを禁じられている聖なる山である。

クーンビラ
シェルパ族の聖なる山「クーンビ・ラ」

やがて川は二股となり一方はドード・コシ、一方はボーデ・コシに分かれる。
その分岐から道は尾根を辿り、ナムチェバザールへと標高差600mの結構厳しい登りとなる。

山のような荷物を背負ったゾッキョ達が追い手に励まされ黙々と坂道を上って行く、それを追い越す訳にも行かず、舞い上がるほこりをかぶりながら歩くのはなかなか辛いものだ。
若い西欧人グループに道を譲りながらも2時間弱の頑張りでナムチェバザールの町の門に到着した。

ナムチェバザール
ナムチェバザール、後ろの山はコンデ

ナムチェバザールの町から一番近く目立つのは「タムセルク(6618m)」鋭く尖った精悍な印象の双耳峰、私が泊まったロッジからも良く見え飽きずに眺めていた。

 

キャラバンの一日

ここでキャラバンの典型的な一日を簡単にご紹介しよう。

0630 起床 キッチンボーイが紅茶とビスケットを持って、起こしに来る
0645   洗面器にお湯を持ってきてくれる
0700 朝食 お粥、パンケーキ、オムレツなどの卵料理、飲み物
0745 トレック 午前中のトレックは約3時間程度
1100 昼食 先行しているコック達が待っていて、温かい料理をサービス
1300 トレック 午後のトレックは2時間程度
1500 宿泊地到着 テント設営、ティタイム、洗面器にお湯
1800 夕食 かなり贅沢な料理が並ぶ
1900 就寝 明日のスケジュール確認、湯たんぽの配布

コックなどを引き連れて歩くキャラバンの最大の特徴は大人数ならではの機動性と柔軟性の無さ、ガイドとポーターを一人連れて歩くように気軽に宿泊地を変えたりコースを変えたりすることはまず出来ない。

その代わり、食事の豊かさや身の回りのサービスは極めて手厚い。
食事にしても、一般的なトレッカーはロッジで単品の食事を注文し食べることになる、味も好みもロッジ任せである。
ところがキャラバンではコックが腕によりをかけ、何品ものコース料理がヒマラヤの山の中で提供される。しかもこちらの好みや注文に気軽に応じてくれ、体調不良時などには本当にありがたかった。

長年にわたってイギリス初め西欧の人たちが作り上げたネパール式サービスは、トレッカーに歩くことだけに専念してもらえるよう、他のことに気を使わなくても良いようにシステム化された優れたサービスのように感じた。

「タムセルク」夕照タムセルク

 

高度順応日

ナムチェバザールで一回目の高度順応の為に停滞する。
3400mで停滞するのはどうかと思わない訳ではないが、多くの経験則から生まれたのだろうからおとなしく従うことにする。

高山病はこれまで経験が無いだけに不安も大きい。
ゆっくり歩く、深い呼吸、多めの水を飲むなど、良いと言われることは出来るだけ実践してみよう。

この夜、高山病予防薬「ダイヤモックス」を半錠飲んだ。
ところが大変、数時間置きに小用に起きだす始末。
とても熟睡など出来ない、私には合わないとダイヤモックスはこの日限りで使用を止めた。
これは体質にもよるようで、問題ないという人も多いようだ。

 

エベレスト初見

高度順応日、3860mのエベレスト・ビュー・ホテルまでの散策に出かける。
ナムチェバザールの町を見下ろしながら約300mほど登る。

ナムチェバザール
馬蹄型のナムチェバザールの町を見下ろす

ガイドのニマさんがゆっくりしたペースで歩き、付いて行くだけなのだが息が弾み、高度の影響を実感し始める。
立ち止まればすぐに回復するが、甘く見ないで深い呼吸を意識して歩く。
10分に一回位、一休みしつつ歩くのが良さそうな感じではある。

シャンボチェの丘からは、聖なる山「クーンビ・ラ」が真近に見え、ラマ教の経文が掘られた大きなマニ石もあった。

くーんびらk聖なる山「クーンビ・ラ」

ほぼ平らになった道をホッとしながら会話を楽しみつつ歩いて行く。
そして、左への曲がり角を曲がった時の事だ。

見た事のあるような山々が青空を背景にズラリと並んで、目に飛び込んできた。
息を呑むとは、こうゆうことを言うのだろう。

ヒマラヤ

正面奥にエベレストとローツェ、右手にアマダムラム、左手にタウツェ、チョラツェが白く神々しい姿を惜しげも無く見せていた。
しばらく立ち尽くして動けない。こんな形で突然ヒマラヤの核心部の山々と相まみえるとは思いもしなかった。

エベレスト・ビュー・ホテル近くの広場から思う存分山々の姿を堪能する。
ここからエベレストが見えるとは聞いて知っていたが、小さく僅かに見える程度なのだろうと思っていた。
こんなにしっかり見えるなんて、嬉しい誤算であった。

エベレスト
エベレスト(左)とローツェ(右)

そして眼を惹くのが、特異な姿を見せているアマダムラム(6814m)。
母の首飾りという別称があるそうだが、腕を広げて「さあ、いらっしゃい」と言っているように見えなくもない、とにかく印象的な山である。

アマダムラム

明日からは今、感動しながら見ている山々の内懐へ入り込み、もっと近くから接するようになる。
楽しみであり、思うだけで気持ちが高ぶるような気がする。

明日からはテント生活が始まる。多少の不便は覚悟の上、高山病に気をつけながら何とか目的のカラパタール、ゴーキョへ行きたいものである。


 

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