タンボチェの4200mピークにて
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展望のプロムナード
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大景観を楽しみながら歩く、プロムナード
11/7は土曜日で休日のせいか、子供達の姿を多く目にした。
現地の人々の生活をかいま見る一助にもなると思われるので、一部をご紹介しよう。まずはお父さんのお手伝い(?)で、ヤクを追う坊やである。
一人前に大きなヤクを恐がりもせず、しっかり歩けと大きな声を出しながら励ましている姿が微笑ましかった。
次は貧しそうな家、多分、親は働きに出ているのだろう。
人気の無い家、子供達だけで、けんかをしたり、物を分け合ったりしながら、逞しく生きている。
頑張ってね! とつい声をかけてしまった。
そして最後は、お買い物のお手伝いなのだろうか、重そうな荷物を背負い、タンボチェへの急坂を物ともせず、私を追い越して行った少女。
「タパインコ フォト キツナ サクツゥ?」(写真を撮っても良い?)
恥ずかしそうに立ち止まってくれる。
「ラムロ・ラギョ!」(かわいいね) 「タパインコ ナム ケ ホ?」(お名前は?)
「ニウラ」
「ニウラ ダンニャバード!」(ニウラ どうもありがとう!)ネパール語を勉強していないので、会話を進められないのがもどかしい。
手を振りながら、坂道を一挙に登っていった。
素直なとても良い子であった。出来たら写真を届けてあげたいな。
タンボチェへはナムチェバザールから約2時間歩いてゴーキョへの道を左に分け、一旦ドード・コシの流れる谷へ下って行く。
そしてドード・コシを渡ってタンボチェへ登って行く事となる。
200m下って、600m登り返すのだ。ゆっくり登って約2時間、派手なラマ教の仏絵が描かれたタンボチェの村の門を潜ると、これまた立派な寺院が建っていた。
この地域では一番大きく、シェルパ族の信仰の中心地であり、偉いお坊さんも居られるとの事。
ニマさんによると「イエティ(雪男)の頭皮が保存してあったが、最近盗まれて今は無い」とあっけらかんと話してくれた。
本当なの?
タンボチェの寺院
ナムチェバザールで一日高度順応をして過ごし、体調は良好だ。
体調に変化が無いという事は、高度順応がうまくいっている証拠なのかも知れない。計画ではナムチェバザールに続き、タンボチェでも高度順応をする事になっていた。
しかし、ナムチェバザールとタンボチェとの高度差は僅か400mである。
そこで昨日ニマさんに、「タンボチェで体調に変化が無ければ高度順応はディンボチェで行う事にしたい。そしてディンボイェでの高度順応日にはチョクンまで往復したい。」と申し入れ、「OK! OK!」との返事を得ていた。タンボチェの宿泊地に張られたテントサイトで暖かい午後の日差しを浴びながらのんびりしていると、ニマさんがやって来て、「やはりタンボチェで高度順応をする」と言う。
どうしてか?と聞くが、高度順応の為に一番良いというばかり。
タンボチェのテントサイトで
英語会話能力の低さを嘆くしか無いが、いくら聞いても高度順応の為だと言うばかりで会話が進展しない。
ま、有能なガイドが言うのだから信じるしか無いか?
素人がとやかく言う場面ではないだろうと、おとなしく引き下がった。
高度順応日、午前中に近くの4200mピークへニマさんと登ってみた。
一見するとかなり急な尾根にジグを切って登山道が切られている。
今回のトレックで初めての4000m越えだ。ニマさんにペースを作ってもらい、後を付いて登る。
すぐに息が切れ、10分に一回位立ち止まって息を整える必要がある。1時間ほどで、タルチョが沢山張ってあり小さなチョルテンも建っている小ピークの頂へ。
思いもかけず拍手で迎えられ、ちょっとビックリ。
イタリアの青年二人が笑顔と拍手で迎えてくれたのだ。
4200mピークからの景観 ディンボチェにはこの谷をさらに進んで行く北東方向にはエベレストやローツェ、南東にはカンテガ(6783m)やタムセルクが美しい山容を見せ広がっている。
世界の人々を惹き付けるヒマラヤの魅力なのだろう。こんな世界をカミさんにも見せてあげたい気がする。
彼女ならこの世界を何と表現するだろう?
テントサイトに戻り、昼食後は写真を撮ったり、暖かい日射しを浴びながら昼寝を楽しんだ。
ローツェ(8516m)
タンボチェからはローツェが均整がとれ、凛々しく見える。
エベレストと同様にイエローバンドと呼んで良いような岩肌があるのが良く分かる。
きっと同じ褶曲作用で出来上がった山系だからであろう。
エベレスト山頂エベレストはヌプチェ(7864m)の稜線に遮られ、山頂部しか望まれない。
この後、カラパタールやゴーキョからしっかり眺めてみたいものだ。1時間ほど、気持ち良くうたた寝をしてしまいゾクゾクして目が覚めた。
あわててパーカーを羽織ったが、時すでに遅し。
どうやら風邪を引いてしまったようなのである。薬を飲み、早々に休む。
夜中、熱が出て寝汗をかく。
翌朝、熱は下がったようだが、咳が出て喉が痛い。ちょっとした不注意で、せっかくのトレックを台無しにしてはもったいない。
体調管理にはもっと注意を払い、慎重に行動するようにしよう。
トレッキングを開始してからよい天気が続いている。
気温が平年並みなのかどうなのか分からないが、行動中は長袖シャツ1枚で大丈夫だ。
夜も冬用シュラフに入っていると下着だけで暑い位。
正直、予想以上の暖かさが続いている。毎日、午後遅い時間から夜にかけて「ド〜ン!」と言う音を耳にしていた。
ニマさんに聞くと、どこかで雪崩が起きている音だと言う。この日の午後3時過ぎ、テントから外を見ていたらカンテガの山頂部から雪煙が広がるのを目撃した。
雪崩である。山頂部から落差1000m以上も谷に向かって雪煙が走り、しばらくしてから「ド〜ン! ザ〜!」と言う轟音が響き渡った。
非情の力、なす術も無くただ見守る事しか出来ない、まさに自然の力の凄さであった。
雪煙を挙げて走る雪崩
風邪は少し良くなった気がするが、咳が止まらない。
食欲も無く、朝食はお粥と生卵。
コックは生卵をそのまま食べる習慣が無いらしく、どう料理するのか真剣に聞きに来る。
持って来させて、お粥の上に割り、そのまま食べたら驚いていた。トレックを初めても、体の芯に熱がある感じ、時折ふらつくような感じである。
ニマさんは一定のペースで歩いてくれるのだが、苦しく辛い。
パンボチェ付近からのアマダムラム
パンボチェ、ショマレを過ぎ、ディンボチェに近づくにつれ、景色は広大、荒涼さを増し、ヒマラヤの奥地に近づきつつあるなと言う印象に変わってきた。
近くのアマダムラム(6814m)が次第にその姿を変え、エベレストがヌプチェの稜線にその姿を隠されてゆく。
アマダムラム
広い丘陵地帯をゆっくり登って、ディンボチェに着いた。
ディンボチェは良い所だ、川の合流点の上にあり、川下を一望出来る。すっかり姿を変えたアマダムラムは同じ山かと思わせるが、美しさは失っていない。
この山は何処から見ても凛々しく美しい山だ。
ヒマラヤの名峰と言ってはばからない山では無かろうか?
ディンボチェからのアマダムラム
だが、この日はそれを楽しむ余裕は無かった。
テントが張られるのを待って、薬を飲みシュラフへ。
何としても、早く風邪を治して、ヒマラヤを楽しまなくては・・・・。この夜、ニマさん達スタッフは私の風邪が良くなるように、皆で祈ってくれたと後で聞いた。(ありがとう)