オコタンペ湖(道央) 2003.9.17(水) (曇り)
オコタンペ湖北側から見る、恵庭岳 |
オコタンペ湖は神秘の湖として有名で観光客が多く訪れるのですが、展望台から見るだけで湖面に降りることは禁じられています。
冬には小漁岳から降りてオコタンペ湖を横断し国道へ抜ける登山者がいるようですが、冬以外は訪れる人はまず居ないでしょう。
千歳市の環境・自然調査の一環としてオコタンペ湖の植生調査が行われ、その一員として行ってきましたので実態をお知らせしたいと思います。
本当に静かな美しすぎる別世界でした。
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今回の調査はオコタンペ湖北側に点在する湿原草地の植生調査がメインです。 調査メンバーの誰もが行ったことが無く、私はガイド兼助手としてお手伝い。とは言え私も15年ほど前に経験しているだけで、自信がある訳ではありません。 オコタンペ湖への入口はオコタンペ湖展望台からオコタン・キャンプ場へ下っていく途中の、第一オコタン橋の脇にあります。 オコタン渓谷は滝となって流れ落ちていて、渓谷自体も深く切り立っていてとても険しく感じられます。 調査に当る専門家先生はそれを見て、不安顔。「大丈夫、あそこを登るわけではありませんよ。大きく左側を巻いていきますから心配いりません」と励まします。(本当はこっちだって、不安なんだよ〜)
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湖への入口、第一オコタン橋で準備を整えます。
足元は湿原を考えると長靴が良いのでしょうが、予想されるオコタンペ湖までの急坂・藪を考えると悩むところです。私は安全第一と山靴、先生はこれしか持っていないと長靴、もう一人のお手伝いの狩猟を趣味とする人はスパイク付き長靴と三者三様です。
装備も調査道具が思っていたより大掛かりです。GPSも携帯型ではなく大きなアンテナと電源を入れた背負い式のものですし、その他、木の高さを計る六分儀のようなもの、巻き尺、カメラ、調査記録用具そして分厚い植物図鑑などなど。(今回は国立公園内の保護地区なので標本採取を行わないからこの位なのだそうです)
私自身もロープやナタ、ピンク・テープなどがありますので、2人で持つにもかなりの量です。
オコタン川の急流 |
オコタン渓谷 |
いよいよ出発、湖までの標高差は約150〜200m位でしょうか、最初から薄い踏み跡の急坂です。先生の様子を見ながらゆっくり行きますが、遅れ気味。大丈夫かいな?
すぐに笹が被ってきて倒れた笹で滑りやすく、急坂と相まってかなり苦戦です。救いは踏み跡が薄いながらもしっかり付いていて、迷うことは無いことでしょう。
湿原の調査と言うことでレインウエアを着込んでいる先生は、汗びっしょりです。概ね半分ほど登った所で様子を見に振り返った時です、笹にメガネを取られてしまいました。アッ!と思ったときにはもうありませんでした、すぐに探しましたが見つかりません、5分ぐらい探しても見つからないので諦めようと思っていると、6・7mも後ろの笹の先に引っ掛かっているのを見つけてもらいました。笹の反発力で飛んでいったのでしょうが、濃密な笹藪で見つかるなんてこんな偶然もあるのですね。
何とかロープやナタを使うこともなく登りきり、後は標高差で50mほど降りると湖面に着きました。
着いた所はオコタン渓谷のオコタン川流出口から北に100mほど、ここから目指す湿原草地まで概ね半周歩くことになります。
ここにも微かながら踏み跡があり、岸辺の水深が浅いところは水の中を、深いところは生い茂った木々を乗り越え・潜りながら進んでいきます。(釣り人は魚がいればどんなところにも出没するのですね)
濡れない訳にはいきません。山靴で来たのが悔やまれますが、後悔先に立たず、沢歩きと思ってジャブジャブ歩きましょう。
降り立った所から調査地点(真ん中左)を見る 遠く後ろは漁岳 |
左側の明るい草地が調査地点の一つ |
空は曇りで、恵庭岳や漁岳の山頂は雲に隠れたり、出たりしています。
それでも湖面は明るいグリーンとブルーが混ざった美しい彩りで、静寂そのものです。
1時間ほど湖岸を歩いて、目的地の一つに到着です。
湿原の草地は湖水側からスゲ、ヨシ、笹の順で覆われていて、土は泥炭の泥沼状態。平均で足首まで、深いところは底なし沼状態で太ももまでズブズブと入ってしまいました。(もうチョットで大事なところが泥まみれになってしまいそうだった)
こうなったら、胴長でも履かないかぎり関係ありません。皆、やけのやんぱちです。
最初の調査地点で |
湿原草地から北側、小漁岳方面 |
これから約4時間場所を移動しながら、湿原、草地、樹林帯と10カ所で植生調査を行います。
ちなみに調査方法を簡単に紹介すると、調査地点に10m四方の枠をロープで作り、その中の植物、木からコケまで一つずつC'Kし記録していくのです。
先生は泥の中、四つんばいになって一つたりとも見逃さないぞと真剣そのもの。良く似ている種類を判別するため、葉を揉んだり、噛んだり、虫眼鏡で見たりと正に研究者の姿です。記録を取ったり道具を運んだりするだけの私達も冗談なぞ言える雰囲気ではありません。
湿原からオコタン展望台方向 |
オコタン展望台から調査地点方向 |
小漁岳やフレ岳の麓に近づくと岳樺やミズナラの大木が立つ樹林帯、合計5本の大小の沢が山から流れ込んでいました。
静かで、美しいのに、何か物足りないような気がします。何だろうと考えているうち、ハタと思い当たりました。
生き物の気配がしないのです。狩猟を趣味としている同行者もこの日、鹿の足跡を一度見ただけだと言っていました。
美しいものにはトゲがあると言いますが、美しすぎる所には食べ物が無いのでしょうか?
私達人間にとっても余り居心地の良いところではないように思います。こんなに静かで美しいところ、本来なら昼寝でもしたくなるのでしょうが、ドロドロ・ベチャベチャではそんな気にもなりませんです。
流れ込む沢の一つ |
草地から樹林帯方向 |
4時間掛けてやっと調査終了です、先生の真摯な態度に再度敬服です。
帰りは皆、わざと水の中を歩いて、汚れを落としながら進みました。
湖水から上がって、後は標高差約50mほど登れば、下るだけ。笹にしがみつき、何度も転びながら何とか無事にオコタン橋に戻りました。
今回、行ってみて、オコタンペ湖はやはり冬以外は行くところでは無く、見る所と言うのが正直な印象でした。