イルムケップ山 (865m) 沖里河山 (802m) (夕張) 2006.1.29(日) 曇り
|
イルムケップ山は深川市の南、夕張山地の北の端に位置する音江連山の主峰と言える山です。
昨年の早春、音江山を訪れてその素晴らしい景観に酔いしれた私達はもう一度その感動を味わいたいと音江山の東側に位置する沖里河山とイルムケップ山を歩いてみようと計画しました。 イルムケップ山には赤平市のエルムダムから登るルートが一般的のようですが、私達は深川スキー場のリフトを利用して楽をする企みです。 天気予報は全道的に穏やかに晴れ渡ると言う待ちに待った絶好の登山日和です。 所が、思いもかけなかった一大ハプニング発生。 と言う訳ですので、深川スキー場のリフトを利用して音江連山を歩こうと思われる方はスノーシューではなくスキーでの山行をお勧めします。 |
何だかんだで、予定より出発は30分ほど遅くなりましたが、スキー場横の林道を歩き出します。
林道をラッセルしながら進む |
一汗かいた頃、スキー場のゲレンデを通らず第2リフト乗り場に出、ここからは文明の利器の恩恵を戴きです。
僅か10分で標高差400mを登り切ってしまいました。
リフトの山頂駅からは、なだらかな尾根筋を進んで行きますが、思ったより深い雪にたちまち汗が噴き出してきました。
パーカーを脱ぎ、カミさんと交代しながらラッセルです。
沖里河山山頂直下の登り |
約20分で沖里河山に着きました。
予報とはかけ離れた曇り空、となりの音江山も霞んで見えるほどで視界も良くありません。
お天気フォーキャスターを恨む訳にも行かず、こればかりは神頼みです。
沖里河山山頂、後ろは深川市方面 |
沖里河山には山頂直下まで観光道路が通っているようで、立派な案内板や望遠鏡まで備え付けられていました。
沖里河山からは稜線伝いに無名山(804m)、830mP、を歩いてイルムケップ山を目指します。
稜線上や風が通る場所は足首ぐらいなのですが、樹林帯や吹きだまりでは膝近くまで雪があり、ラッセルに苦戦します。
ウサギやテンの足跡が私達を道案内してくれています。
彫刻のような樹氷 |
直ぐ近くに見え、夏なら気持の良いプロムナードのような標高差60mほどの稜線歩きもラッセルしながらですと遅々として進みません。
足に負担が掛かるので頻繁に交代しながら「本当なら右側には樺戸連山や暑寒別の山並み、左には十勝や大雪の峰々が見える筈なのに〜」と愚痴もこぼれます。
無名山山頂 |
802mの無名山に着くと少しずつ明るくなってきたようです。
「太陽頑張れ! 晴れて!」
音江山もスッキリと見えてきました。良く見ると音江山の山頂に5〜6人の人影が見えます。
同じような思いで歩いている人が近くに居ると思うだけで、嬉しくなってきます。
音江山 |
音江山の向こうには頭は雲に隠れていますが、樺戸や増毛の山々が姿を見せ始めました。
樺戸の山々が見え始めた |
お天気が良くなり始めたようで、元気も出てきます。
赤平市の方にはイルムケップ山の登山口の一つであるエルムダムも見えていました。
中央にエルムダムが見える赤平市方向 |
無名山からは深川市やその向こうに三頭山がハッキリと見え出しました。
無名山から深川市と遠くに三頭山を見る |
再び、標高差50m程を降りイルムケップ山手前の830mPに向かいます。
次第に明るくなってくるお天気に元気を貰い、軽口を叩き合いながら830mPのピーク直前の所まで来ると、突然チェーンソーのエンジンのような爆音が響き渡ったかと思う間も無く、ピークの向こう側からスノーモービルが飛び上がるように姿を現し、私達の方に直進してきます。
ビックリして動く事も出来ません。スノーモービルも私達を見てビックリしたようにハンドルを切り直ぐ脇を通り抜けて行きます。
そして次から次にスノーモービルが飛び出してきます。
合計10台ものスノーモービルが私達の周囲を走り回って私達が来た無名山の斜面を爆音を撒き散らしながら登って行きました。
待ちに待った青空と太陽の光が |
誰の足跡も無い汚れを知らないような新雪と自分たちのラッセルの音しかない静けさを楽しんでいたのに、180°世界が変ってしまったかのような出来事でした。
周囲はスノーモービルのトレースが斜面をズタズタに引き裂いています、そして排気ガスの嫌な匂いが濃密に漂っています。
イルムケップ山の斜面も彼らのトレースでズタズタにされています。
なんだか急に嫌になってしまいました。
カミさんも呆気にとられたような感じで、いつもの笑顔もありません。
「嫌になっちゃった。もう止めようか?」
「丁度お昼だから、ご飯食べて戻りましょう。」
木陰に敷物を敷いて、コーヒーやオニギリ、果物を食べながら、気分転換を図ります。
一体、何が起こったの? |
イルムケップ山まではあと20分も歩けば行ける距離ですが、「もういいや」と言う気分です。
簡単な食事をして、打ちひしがれ叩きのめされた気分で来た道を引き返します。
スノーモービルの大きなトレースと比較して私達の付けたトレースのなんとひっそりとして控えめなこと。
830P付近からの音江山 |
振り返るとイルムケップ山も残念そうな感じで佇んでいました。
イルムケップ山 |
沖里河山まで戻ってくるとこれまで雲で隠れていた十勝連峰の山々がその姿の一部を現していました。
「元気を出せよ!」 とでも言っているように感じました。
チョッピリ姿を現してくれた十勝連峰 |
深川スキー場の山頂駅にあるパトロール小屋に居たパトロールの方に下山の報告をしゲレンデの脇を降りますと言うと、ゲレンデの右側を歩いて降りて良いとのこと。
ゲレンデを滑る子供達から「何してるの?」と物珍しそうな視線を浴びながら、スキー場センターハウスまでラッセルの必要ない軽くなった足取りで意気揚々と降りてきました。
降りながら、スノーモービルで遊んでいた若者達の事を考えていたら、次第に彼らだけを悪く思うのは止めようと思えてきました。
なぜなら、彼らも自然の中で思いきり遊ぶことに楽しみを見いだしている、それは私達と同じだ。
それに私達だって、スキー場のリフトを利用して山歩きを楽しんだ。
夏山の時だって、入れるギリギリの所まで林道を車で入り、もしかしたら他の人達に迷惑を掛けながら山を楽しんでいるのかも知れない。
同じじゃないか、五十歩百歩だ。
ただ、一般社会でも、山でも、どのような場面にも、自分たちだけでは無く色々な思いの人達が居て夫々を楽しみ過そうとしている。
その人達の思いを邪魔をせず尊重しながら自分たちも楽しむ。
そんな風に皆が思ってくれればいいのにと、思いながらイルムケップ山を後にしたのでした。