十石峠からユニ石狩岳
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ユニ石狩岳
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登山口に着くと車が三台停まっている。どうやら先行者が居るらしい。
歩き出してすぐに沢を二度丸木橋を渡って徒渉する。
二本目の丸木橋は直径1.5mはあろうかという大木で、驚くと同時にもったいなく感じる。
大木が橋に
苔に覆われた針葉樹林の中を整備された道が続き、気持ちよくしかも安心して歩くことができる。
良く整備された道を辿る
緩やかな道を30分ほどで「鳴兎園」、苔に覆われた岩場でいかにも鳴きウサギが好みそうな所である。
鳴兎園
鳴兎園を過ぎてしばらく行くと左手からゴロゴロした岩が積み重なっている斜面に出た。
「大崩れ」と呼ばれている所らしい。
概ね正面に十石峠と思われるV字谷のコルが見え、道はその左斜面をトラバース気味に登っていく。
右下の沢にも道らしきものが見えピンクテープも散見される。多分沢を登ってブヨ沼方向に登るルートであろう。この先何カ所か、ゴロゴロ岩が積み重なった所を通りV字谷の源頭部を登っていく。
あちこちから、鳴きウサギの鋭い鳴き声が響く。
足を止め姿を見ようとするが見つけられない、諦めて無心で歩いているとすぐ傍をチョロチョロと走り抜ける姿、岩に座って何か食べている姿が目に入る。
だがとにかく動き回っていてジッとしていない、カメラを取り出す暇もない早業である。登山口に車と止めていた人達は皆さん、鳴きウサギ狙いのカメラマン達。
凄い望遠レンズを付けたカメラで狙っていたが、顔の表情は余り冴えたものではなかったような気がする。
V字谷を詰めて行くと右手にピラミダルな三角錐の山容が目につく。
多分1725m峰であろう。
1725m峰
十石峠には反対側の十勝三股から登り、朝露でびっしょりになった記憶がある。
その時は日帰りで音更山・石狩岳を歩いたので、時間がなくユニ石狩岳はパスしていた。
ユニ石狩岳方向を見上げると、山頂部が岳樺越しに見え始めた。デフォルメされたような扁平な姿が面白い。
見上げるユニ石狩岳山頂部
十石峠が近づいて来た。
と思ったら、峠を巻いてユニ石狩岳へ向かう道がある。
峠は帰りにと、真っ直ぐ山頂を目指す。
十石峠直下からのユニ石狩岳
峠から山頂までは写真で見ても分かる通り結構な登り、1時間を想定した。
少し岳樺の樹林帯を登ると森林限界となり、見晴らしが利いてくる。
景色を楽しみながら急な斜面を小さくジグを切りながら淡々と登る。1725m峰の陰に隠れていた音更山がその頂を見せ始め、表大雪の山々がその姿を主張し始めると山頂は真近かである。
振り向けばニペソツがあるのは分かっているが、山頂から見たくて意識して振り向かない。
ああ、早く見たい。 あと少し・・・。 そこには・・・。
山頂に着いた。峠から40分である。
山頂
燦々と降り注ぐ陽光を受け、まばゆいばかりの景観である。
まずは、石狩連峰の主役たち。石狩岳と音更山。
堂々とゆったりした姿で端座し、動じる気配も無い。
1725m峰(中央手前)を挟んで左に石狩岳、右に音更山
音更山と石狩岳のコルから下に延びるシュナイダー・コース、一部しか見えないけれど辛かった事が思い出される。
そして石狩連峰の左手には名峰ニペソツ、逆光で霞んではいるけれど優雅さ、鋭さが強調されているようだ。
天を突くニペソツの鋭峰
そして近くに見える表大雪の主峰たち、主役は俺だとばかりに裾野の紅葉を前景に座り、目を惹き付ける。
旭岳〜白雲岳・緑岳の表大雪の山々
9月の寒気で降った雪がまだ残り、高根が原の昨年からの残雪との白さの違いを見せている。
裾野の紅葉はまさに燃えるよう、ただ息を呑むばかりだ。南東方向には朝登って来た三国山やクマネシリ山塊が見えている。
三国山は登らなければ見ても分からないだろうが、登れば一目で同定できる。
クマネシリ山塊には雲が掛かり始めている。
そう言えば、ウペペサンケは雲に隠れ、然別湖周辺の山々も雲で見る事は出来なかった。
雲に覆われ始めたクマネシリ山塊
独り占めのユニ石狩岳山頂、どっかと腰を下ろし山座同定、そしてお昼を食す。
心が弾めば質素な食事もおいしく感じ、食が進む。
熱いコーヒーの香りが食欲増進剤だ。カミさんに霧男返上のTEL。
「楽しんだら早く帰っていらっしゃい、今日はお誕生日のお祝いを用意していますから・・・」
そうか、今日で66歳とさよならだ! 明日から67歳、「元気だけが取り柄な爺だと言われても良い、山を楽しみ続けたい」と心から思い願った。
下山時には十石峠に立ち寄り、帰りながら周りの紅葉を楽しみつつ降りる。
ウラシマツツジの紅葉が真っ赤に光り輝いている。
コケモモの実も透き通るように熟れ、苦さも無くなり甘くて美味しい。
光り輝くウラシマツツジの紅葉
由仁石狩川沿いの木々も紅葉の真っ盛り。
赤色の見事さが、ここは大雪なのだと意識させてくれる。
すっかり秋色の錦絵だ。
まさに色とりどりの錦絵
ユニ石狩岳、お天気にも恵まれ本当に楽しめたが、一つだけ気になる点があった。
それは無用のピンクテープがやたら多い事、酷い所は10mおきに吊るされている。
訪れる人が多く迷う人も多いのだろうが、あれではテープが目障りで煩く静かな山を楽しむ事も妨げられる。
必要最小限にしてほしい、テープを付けた人は帰りに撤収して持ち帰って頂きたいものである。
今回の2日間の東大雪の山々を巡る秋の小さな山旅、1日目は霧と雲に邪魔され少し残念だったけど、2日目は霧を避け北に逃げたのが良かったのか素晴らしい秋らしい山旅を満喫することができた。
今回計画したのに訪れる事が叶わなかった、クマネシリ岳と南クマネシリ岳、来年にはきっと訪れたいと思う。
先般の北アルプス再訪の旅で穂高でも劔岳でも霧で行動を制限され、先週は十勝岳でも同様な目にあった。8月のカムエク〜コイカクではもっと悲惨な目にあった。
カミさんや娘から「霧男になっちゃたみたい」と言われ気にしていたが、大丈夫。
俺はやっぱり晴れ男!66歳の一年も健康で山を楽しむことができた。
67歳の一年も元気で健康で過ごせるよう、節制し鍛錬して多いに楽しもうと願っている。