口無沼・七条大滝・丸山遠見

道央   2013.6.1(土)   晴れ


 

七条大滝

 

プロローグ

春と秋の年2回、千歳市主催の自然観察会が行われている。
千歳市環境課と環境省支笏湖自然保護官事務所が連携した事業で、千歳市民に支笏湖周辺の景勝地を巡りながら自然と親しんでもらおうとするものである。

現地でのガイド役は環境省支笏湖パークボランティアが担当し、今回は私もその一員として参加することになった。
参加するパークボランティア(以下PVという)は、先輩のOさん、私、昨年からPVに参加された新人PV5名の7名。
事前にOさんと調整、全般の統制をOさん、現地でのガイドを私が主に担当することにした。

現地での下見、参加者へ配布する参考資料の作成など事前準備を整え、6/1(土)の観察会に備えた。

(観察会当日はガイドや危険防止、体調確認、新人PVの配置など慣れない気働きで写真を撮る暇もなく、本ページに掲載の写真は下見時のものを主に使用している)

 

参集場所で

6/1朝8時過ぎ、市職員、自然保護官、支笏湖PVなどが集まり夫々簡単なミーティング。
参加者の皆さんも次々と集まってきた。
参加者は15名、小学生が数名居ると聞いていて中高学年を勝手に想像していたら何と1年生。
理解力は大丈夫だろうか? 少々不安だ。

市の行事などに参加されるのは何処でも圧倒的にご婦人が多い、今回も大半がご婦人で男性は数人だ。
その中に10年以上ご無沙汰していた古い友人の姿・・・、それに気付き、お互いビックリ。
無礼を詫びゆっくり話をしたいとことだが、他の参加者の手前そんな訳にもいかずもどかしい。

最初の観察場所である口無沼までバスの中では、Oさんが千歳や支笏湖にまつわる逸話や歴史・文化について軽妙な口ぶりで解説。
ただバスの中なので静かに聞いてもらえる状況にはない、小学生たちは自分の世界で大騒ぎだし、顔見知りのご婦人たちは世間話に余念がない。

現地でのガイドが思いやられ、気持が重くなる!!

 

口無沼

久しぶりに青空が広がり風もない、数日前までが嘘のように気温も高く暑くなりそうだ。
日陰に集まってもらい観察会の進め方を説明、皆さんのお目当てに応じたグループを編成して歩き出す。

口無沼は樽前山の南側山麓にあり、豊かな森に包まれひっそりと佇む静かで小さな沼。
私としては参加者の皆さんに自然の持つ静謐さ、神秘さ、不気味さと言う側面も感じて貰いたいと思っていたのだが、晴天下の口無沼は明るく・開放的。

写真で夫々の表情を比較して見て頂こう。
まずは、晴天時の口無沼


口無沼
晴天時の口無沼 (観察会当日)

 

 

次いで、曇天時の口無沼

口無沼
曇天時の口無沼 (下見時)

どうお感じだろうか?
口無沼は小雨や霧の巻く風情が似合っていると私は感じているのだが・・・。
ま、明るく開放的な口無沼もそれなりだし、皆さん感動している様子なので良しとしよう。

 

この沼には入ってくる水の流れがなく、出て行く川もないので、「口無し」の名が付いたといわれる。
それを実際に自分の足と目で確認しようというのが、今回の観察の目玉の一つ。
咲き出し始めた花を眺めたり、落ちていた羆の糞や至る所にある鹿の足跡・鹿道などを話題にしながらワイワイガヤガヤゆっくり目に歩く。
羆の糞は初めて見る人もいたが、やはり北国の人で羆の話題に慣れているのかそれほど驚いたり慌てたりする人はいなかった。
オオバナエンレイソウの花びらに緑色の蜘蛛がじっとしているのを見つけた。
蜜に誘われて来る獲物を待っているのかな?

エンレイソウ
緑色の蜘蛛が花びらに(ワカバグモ?)

 

沼を概ね半周すると、小さな湧き水が湧出している所に出る。
皆さん湧きだす水に触れたり、ぬかるんだ地面に無数に付けられた鹿の足跡に見を見張ったり、流れ込む水を見つけた事実に感動したりしている。
ここで火山灰台地の地形の特性や樽前山の伏流水、湧きだす水と染み込む水の絶妙なバランスなどについて、説明し口無沼の仕組みについて考えてもらう。

沼
水面のゆらぎにも静けさと不気味さが交錯して・・・

 

水の流れこむ小さな川を発見した皆さん、意気揚々と沼を一周すべく歩き出す。

途中、大きな苔むした倒木から木が育っている倒木更新の様子や日当たりの良し悪しによって植物の育ち方が大きく異ることなどに皆さんの関心を向け、興味をそそったり、休憩を兼ね草地に腰を下ろし目を閉じて音と匂いだけの自然を感じたりしながら観察を進める。

倒木更新
倒木更新

沼一周の冒険ももうすぐ終わりという頃、沼を挟んで樽前山が姿を表した。
距離が近いため、樽前山の象徴である溶岩ドームが手前の外輪山の稜線に隠れている。
さすが皆さん千歳市民、溶岩ドームのない樽前山の姿を話題に話に花が咲いた。

私は口無沼の静寂さなどを通じて、自然の持つ神秘さや不気味さをちょっぴり感じてもらいたかったのだが、逆に明るく開放的な沼でちょっと冒険を楽しんだという結果になってしまった。
それでも皆さんそれなりに楽しまれた様子だし、その時時の自然の持つイメージなので良しとするか。

沼
口無沼 こんな静かな表情が好きだ

 

七条大滝

口無沼からバスの乗り込み次の観察地である七条大滝へ。
市の行事なので閉鎖中の林道も森林管理署の許可を取り車で入れるのがありがたい。

七条大滝ではマイナスイオンを浴びながら谷間にぽっかり開いた空間に舞い落ちる滝の優雅な姿を素直に鑑賞してもらう。
ただ滝へと降りる急な道や滝周辺での事故や怪我防止のため、PV達に適切な配置、確実な援助を行うようお願いする。

滝口へ降り、滝の近くへ行くと、皆さんその美しさに嬉しそう。
だが見物する地積が狭い上、足場も悪いので安全配慮に気が抜けない。
滑ったり転んだり水に落ちたりの危険が常に伴い、特に小学生から目が離せない。
PVを適切に配置しようと思うが、新人さんたちは初めての滝に自分も参加者になりきってしまっている。
私とOさんであちこちせわしない。

滝
優雅に流れ落ちる七条大滝

 

一段落してから、滝の裏側に回り込み裏から眺められることを説明し、順番に案内する。
川を横切る時は私が流れの中に入って一人ひとりの安全を確保せねばならず、下見の時よりずっと疲れる。
それでも滝の飛沫に濡れながらも滝裏からの景観に喜ぶ顔を見れば、こちらも嬉しい。

滝裏から
滝の裏側からの景観

 

滝に出合った最初の興奮も鎮まり、皆さんゆったりした時間を楽しみ始めた。
せかせか見て回るだけでなく、目を閉じて音だけの世界を感じてみるとか、谷間に咲く花を探してみるとか、ゆったり自然と接する喜び・気持ちよさを感じてもらえたのなら、本観察会の目的は達成したのも同然で嬉しい。

七条大滝の見物を終え、その後は昼食に支笏湖の休暇村園地に移動、昼食と午後の散策を楽しんでこの日の観察会は事故もなく無事終了した。
参加された皆さん、お疲れ様でした。

 

丸山遠見

観察会から離れるが、下見の時に口無沼からほど近い「丸山遠見」に立ち寄った。
丸山は樽前山の東側山麓の標高321mのこんもり盛り上がった丘にあり、はるかに広がる樽前の裾野を見渡せる場所。
そこに高さ13mの物見櫓が建っていて、丁度標高333mからの眺めを楽しむことが出来るのである。

午前中覆っていた霧も晴れ、果てしなく広がる裾野に山桜のピンクとキタコブシの白、ベニイタヤの黄緑などが点在する中、樽前山と風不死岳そしてその間に子供のペウレ峰がちょこんと座る三山の姿が美しく見えていた。

丸山遠見
丸山遠見からはるかに広がる山裾と樽前山・ペウレ峰・風不死岳

 

 

オジロワシ歌壇

 

 

・樽前に生まれし風は春を呼び
        口無沼にさざなみ光る

・点描の辛夷の白に誘われて
        若芽明るき獣道ゆく

・頑なな心解れてゆくように
        七条の滝、豊水踊る

・嬉しきは日差しに映えるさみどりの
        林に辛夷、桜も見えて

 

 

 

 

 

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