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県境
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もう一つはこの時期小辺路を歩く人は少ないが、2011年の台風12号の災害普及工事が大々的に行われていて、作業員の人たちの宿泊施設がなく民宿は何処も満杯状態。
なので、歩く人達が宿泊できないこともあり困っているとのこと。
私達は偶然空きがあって泊まれたとのことだった。
その話を聞いて慌てて今後の宿の手配をしたら、幾つかは満室で断られ少し離れた場所の宿を予約せざるを得なかった。
朝、大股バス停で
この日はC1344mの伯母子岳を越えるだけの行程だ。
晴れの予報が出ていたが空はどんよりした曇り空、気温も低い。
もしかしたら紀伊山地は日本海側気象の影響を受けやすいのかも知れないと思った。
予報に反し、どんよりした空伯母子岳登山口から助走のないかなり急な上り坂、汗をかかないようゆっくり目のペースを刻む。
体がじんわり温まってきた頃、傾斜が緩み菅小屋という2・3人なら泊まれる小屋があった。
綺麗に片付けられ、薪なども用意されている。みかんなどを口にしながら一休み、時雨がやってきそうな空模様だ。
菅小屋から傾斜の緩んだ道を約1時間、桧峠を越えて一旦下る。目指す伯母子岳は雲に隠れ姿は見えず、登山道も雲の中に入ったのか次第にモヤって来た。
伯母子岳本体の登りにかかり、8合目付近からだろうか木々の枝先が白く染まりだした。
雪が少し被さり、霧氷のような感じで白くへばりついている。
雪が付いて霧氷のようになっている
「あら〜、熊野で雪を見るとは思ってもいなかったね!」二人ともびっくりである。
やがて地面も雪で白く染まり始めた。山頂と峠の分岐点、せっかく来たのだからと山頂へのルートを選ぶ。
積雪は2・3cmでほど、登りついた山頂は晴れていれば素晴らしい景観が自慢らしいがあいにくの雲の中、視界100mが良い所だ。
うっすら雪に覆われた山頂山頂標識をバックに記念撮影のみだ。
何も見えない伯母子岳山頂(1344m)にて
一瞬、雲が切れ景色が少し見え出した。
一面の銀世界が広がって、まるで冬景色。
温かいと信じてきた紀州で雪とは、これも良い記念だろう。
伯母子岳山頂から
山頂は風が強く、ジッとしていると寒いほど。
休むこと無く峠に逃げ降りる。
峠への下りは少々急で、滑らないよう注意しながら下るが二人とも一回づつ尻もちだった。
風が強い所なのか、木が捻れている
伯母子峠には避難小屋が建てられている。
時間も丁度良いので、小屋の中に入り昼食にさせてもらう。
火の気のない小屋でも冷たい風から開放されてホッとする。
宿で作ってもらったお弁当を半分づつお腹に入れると、暖かくなってきた。
伯母子峠からは概ね下り一方。
途中、上西家という旅館跡や水ケ元茶屋跡などを通って行き、結構長い道のりだ。杉の植林地に混ざって時折落葉樹林があって美しくほっとする。
落葉樹林の紅葉
歩き始め当初は珍しく感じた杉や檜の植林地、山の大半99%が植林地でいささか飽きてきた。
生活の糧だし、多くの人達が林業で生活しているのだから致し方ないと思う。
でもこれが熊野の豊かな自然というのか? という素朴な疑問にも突き当たる。手入れが十分されている植林地は日光もかなり入り明るいが全体量として少ない、多くは手入れ不足からか不気味な暗い林と化している。
鳥や動物などの生き物の気配も感じられない。
それでも自然というのだろうか?
考えさせられる問題だ。
倒木更新で芽生えた杉の赤ちゃん
お天気は次第に回復気味、時々日差しがさすようになり紅葉を明るくてらして美しい。
時間も十分すぎるほど、あまり早く着くと宿にも迷惑だろうとゆっくり休憩を取りながら下っていく。
水ケ元茶屋跡
麓に降りてきた雰囲気が漂いだし、伯母子岳登山口の標識。
川を渡って舗装道路を少し歩くと三浦口のバス停に出た。
今日の宿は三浦口からだいぶ離れているそうで、バス停からTelするよう言われていた。
Telすると奥さんが車で迎えに来てくれた。
3kmぐらい離れた山中にある民宿は農家民宿。
客のための部屋はなく、部屋は与えられるが他は全て家人と共用なのである。
三浦口の農家では稲を昔ながらの方法で干していた最初は何時も見られているようで気が休まらなかったが、宿のご夫婦はあけっぴろげな明るい人達。
家族同様に接してくれるし、こちらもそのように対応することを期待しているようだ。料理もなかなか上手で地の物をふんだんに使い、田舎の家庭料理を振る舞ってくれた。
食べきれないほどの量だったが残すのが申し訳なく、全部完食したらかえって感謝されてしまった。このようなスタイルの民宿は初めての経験だったが、慣れれば良いものだ。
ご主人をの話で、十津川村は村民全てが神道でお寺はないと言う話はとても興味深かった。
また、多くを自給自足で生活しているが必要な物は五条か橋本まで出て購入しているそうだ。さらに林業のほか産業もなく、近年林業だけでは食べていけないので若者は全て村を出て行き帰ってこない。
従って、村の行事も衰退し姿を消していくばかりだと嘆いていた。お話を聞いて、山間部の老人集落の厳しい生活ぶり、深刻な悩みを実感することとなった。
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迷惑鳥
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三浦口から吊り橋を渡って
この日は朝から良い天気、熊野を歩き出してから一番の上天気である。
吊り橋を渡ってすぐに三浦峠への登りにかかり、すぐに防寒具代わりの雨衣を脱ぐ。
良いお天気に黄葉も映える汗をかかないいつもの登山ペースで足を進める。
相変わらずの杉の植林地の中を登り、約30分で吉村家跡。
大きな家跡でかつての山持ちさんだったのかな?
家などの跡地は平坦で防風林が何本も大きく育っている。約1時間で三十丁の水という水場、あまり冷たくないが美味しい水である。
大した急な登りもなく、約1時間40分で三浦峠に立った。
立派な林道が東西に走り、山頂部の植林を行っているようだった。
三浦峠からの展望 稜線の右ピークが伯母子岳
三浦峠からは昨日歩いた伯母子岳もしっかり見えて嬉しい。
伯母子岳から降りてきた尾根筋もハッキリ見え、その下には三浦口を流れる川も一望できる。
昨日歩いたルートが頭の中で鮮明に蘇った。峠にはムラサキシキブが鮮やかな実を沢山付けていた。
こちらでは山の中で自生しているのだな。
ムラサキシキブの実
峠から南側の果無山脈が見えるのではと期待したが、林で全く視界は得られなく残念だった。
三浦峠からは杉林の中を淡々と下るだけ。
さして新鮮に感じるものもなければ興味を引くものもない。1時間半近く峠から下ると、矢倉観音堂に。
矢倉観音堂
ここでお昼ごはん、民宿で作ってもらっためはり寿司を一つづつ食べる。
玉子焼きなどのおかずも手作りの愛情がこもっていて嬉しい。
お堂に祀ってある観音様は優しそうなお顔をしている。
優しそうなお顔の観音様
お昼すぎには西中のバス停まで降りてきた。
西中を流れる川を見下ろす
今日の宿がある十津川温泉まで歩いて約2時間、十分歩ける時間だったがカミさんが足首が少し変と違和感を訴えたので少し先にある川合神社で大休止し、そこからバスを利用して十津川温泉へ向かった。
今日の宿は十津川温泉の真ん中にある和風旅館「えびす荘」。
明日歩く果無峠に向かうに便利な宿が全て満室だったので、少々離れている温泉街の宿になった。古い宿であるが、代替わりしたばかりで若いご亭主が張り切って切り盛りしている。
自分の色を出そうと一生懸命なのだがやや柔軟性に欠け、先代の女将さんが心配そうにウロウロしている様子が微笑ましい。とは言っても、お風呂は源泉掛け流しで大変気持ちよく、食事はさすが老舗の旅館と思わせる洗練されたとても美味しい料理が並んだ。
美味しい料理と温泉にゆっくり浸かり、明日への英気を十分養うことが出来た。
ただ今日の行程で痛めたカミさんの足首が心配、シップ薬を貼りテーピングで固定して明日へ備えた。
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