サロベツ原生花園はエゾカンゾウを始めとする数々の花々と利尻山の秀麗な姿で一躍有名になったサロベツ原野に広がる楽園である。
私たち夫婦はいわゆる観光地を訪ねるのをあまり好まない。
だが敏音知岳でダニ攻撃に合い、意気消沈した私達の心を癒す場所はサロベツ原野しか思い浮かばなかった。サロベツ原野はペンケ沼、パンケ沼など泥炭湿地地帯に広がる原野、そこに美しい貴重な花々が咲き鳥や動物が生きる場所。
国立公園でもあり、広大な原野を自由に歩くことは出来ず、北部にあるサロベツ湿原センターと南部にある幌延ビジターセンターの周辺に整備された遊歩道を歩いて見物するのが一般的である。
整備された木道を歩きながら咲いている花々を中心に散策。
バスツアーで来られている大勢の人達に混じって歩きながらの観察、その様子をご紹介しよう。この原生花園の代名詞ともなっているエゾカンゾウはすでに終わって花ガラだけが残っていた。
前日、松山湿原で感動したトキソウも標高が低い分花の時期が早いのか見頃を過ぎている。その代わり、ノハナショウブ、コウホネが最盛期。
タチギボウシが咲き始めという時期であった。
まずはノハナショウブ、最初はアヤメかと思ったが花の中心に黄色のトラ模様が無い。
ノハナショウブ
アヤメとハナショウブ、カキツバタは見分けが難しい。
私にはちっとも分からないが、生花の心得があるカミさんは葉の特徴や立ち姿の微妙な違いで判るらしい。広い原野に群れを作って咲き乱れる様子はなかなかの圧巻である。
ノハナショウブの群落
この時期、原生花園を訪れる人達のお目当てはトキソウとサギソウらしい。
どちらも花の時期を終えようとしていて見られる花も痛み加減のものばかりで少々可哀想。その中からきれいな花を選んで撮ってみた。
トキソウ
サギソウは見たことがないので良く分からないが、色が濃いのだと言う。
確かに明らかに濃い赤色の花が僅かにあったのを見たが、あれがサギソウだったのかな?
トキソウ
原生花園に咲くトキソウは、他の植物に混じって隠れるように咲いている花が多く松山湿原のように存分に堪能できる状態にはないようだ。
小さなナスの花のような花を見つけた。
湿原センターに戻ってから調べたら、オオマルバノホロシと言うナス科のつる性植物で毒があるとのことだった。
オオマルバノホロシ
原生花園に整備された遊歩道は気持ち良く歩けるが、この日はもう一つの目玉である利尻山を望むことは出来ず残念だった。
霧っぽく視界が霞んで数Km離れた海岸の松林も見えないのだ。松山湿原でも見かけたモウセンゴケの花も咲いていた。
小さく目立たない花だが、良く見ると梅のようでもありなかなか可愛い。
モウセンゴケの花
食虫植物とは思えない清楚な表情だ。
モウセンゴケ 葉の食虫部分
サロベツ湿原センターの近くには豊富牛乳公社がある。
ここの牛乳は我が家でも愛飲している牛乳である。その牛乳を使った牛乳ソフトアイスなるものがあったので、食べてみた。
牛乳ソフトアイス
なんでも普通のソフトクリームには生クリームをかなり入れるそうだが、これは乳脂肪分が多いのでそのままソフトクリームに仕上げているのだそうだ。
ややあっさりしているように感じたが、とても美味しかったですよ。
幌延ビジターセンターからの遊歩道は沼の縁沿いを散策しながら観察できるようになっている。
花はサロベツ湿原センター周辺に咲いている花に加えてコウホネなど水辺の花が多い。
その第一はコウホネ、正しくはネムロコウホネと言うそうだ。
花の中が赤ではなく黄色なのが特徴だ。
コウホネ
花の位置までは最短で4〜5mあるので花のアップは撮れない。(山に行くつもりだったので望遠レンズを持ってきていないのだ)
沼の水面はヒツジグサの葉で覆われ尽くされている、葉の表情の変化の面白さは好きだがこれだけ多いとチョットね。
コウホネ
コウホネ
そしてカキツバタやタチギボウシの姿も見ることが出来た。
カキツバタの花はそろそろ終りに近い。
カキツバタ
タチギボウシが咲き始め、勢いがある。
これからはギボウシやリンドウなど紫の花が多くなってくる、秋の気配が忍び寄ってきているのだ。
タチギボウシ
サロベツ原生花園の花、事前の勉強など出来なかったけれど、それなりに楽しめた。
また花園内を手入れし整備されているご苦労を感じ取ることも出来た。
大勢の人達に自然を感じてもらうためにはそうした隠れた苦労・努力があってのこと。
「ご苦労さまです。お疲れ様」だけど私はより自然な山の中でひっそり咲く花達に大きな魅力を感じるな。
今回の道北の旅、道北の静かな自然を存分に感じたいと思って訪れたが、ダニという強敵に阻まれ目的を達成することは出来なかった。
チョッピリ残念だが松山湿原の素晴らしさはそれを十分に補ってくれた。また機会を見つけてダニの居ない時期に訪れてみたい。
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