錆と人生

 


 

錆びたピッケル

 

 

錆びたピッケル

屋根裏を整理していたら古びた山道具を入れた衣装ケースが出てきた。
20年ほど前一度整理して、捨てられない愛着のある品だけを仕舞っておいたものである。

改めて見ると決して使わない使えない物ばかり、この際終活の一環として思い切って捨てることにした。

ニッカボッカやダウンジャケットなどの衣類、ガソリンバーナーやロープ・コンパスなどの用具、ペナントやバッジなどの記念品たちだ。

その中に一本のピッケルが大事そうに布に包まれて入っていた。

お神酒をふりかけ感謝の気持を込めて、処分する。

が、ピッケルだけは今回も捨てられず手元に残った。
込められた気持ちや思い、それと決別できないのだ。

 

錆びたピッケル
何の価値もない 錆びたピッケルだが・・・

 

人生の錆

捨てられず残った錆びたピッケル、そのままにはしておけない。

取り敢えず、サビ取り。
薬品や研磨剤などは使いたくない、自分の手で手間暇かけヤスリとサンドペーパーでサビを落とし、磨いていく。

毎日少しづつ丹念に磨き続ける。

「ゴリゴリ、シュッシュッ・ゴリゴリ、シュッシュッ」
不思議なもので、そのうち自分の心を磨いているような気持ちに。

ピッケルの錆落しは二次的なものになり、自分の心の錆を磨くことが目的になってくる。

 

花

 

考えてみると、人生には二種類の錆があるのかもしれない。

「心と体に付いた錆」。

心の錆とは、ヒリヒリするような感激や興奮する気持ちが持てなくなること、感じなくなることではないだろうか。
毎日を惰性で過ごしていると、溌剌さや夢を持っていた時のような興味や張りを無くしてしまいがちになる。
そして自分自身も感じるのだが、表面的にも口角が下がり仏頂面になって、一人こもりがちになる。
心の錆を落とすのは難しい面もあるけれど、気持ちの持ちようと努力によって減らすことは可能だと思う。

体の錆とは、文字通り老化による体の不調。
私自身も体調維持には気を配ってきたつもりだが、今は膝の痛みで運動すら出来ない。
体の錆はある程度予防や対策を取ることが可能だが、不老不死の薬や手段は無く、取り去ることは出来ないので上手く付き合っていくより方法はない。

山



心を洗い、心を磨く

一週間かけて錆びたピッケルを磨きあげた。

乾ききっていたシャフトにも亜麻仁油を染み込ませてやった。

機械や薬品、研磨剤などは一切使わなかったので、新品の輝きは戻っていない。
傷や黒い小さな斑点が無数にあるけれど、かえってそれが生きてきた証、年輪のようにも見え、風格すら感じれて愛おしい。

 

今回は、部屋の棚に飾った。

時々ゆっくり眺めながら自問自答してみようと思う。
「心を洗い・心を磨いているか」と。

 

よく識者の声として、老いを防止し若々しさを保つための方法なるものが紹介されている。
曰く、仲間を作りなさい。人と交流しなさい。
その為にはサークルや趣味の会、などなど・・・。

たしかにその通りと思うのだが、どちらかと言うとストイックな性格の私は人付き合いが上手くない。
色々な人達の間を上手に泳ぎまわり、吸収したり切り捨てたり割り切ることが下手なのだ。

私だけではなく世の中一般にこの手のことは、女性は得意で男は苦手らしい。
人付き合いが少なく、孤立するのが圧倒的に多いのは男だそうだ。

たしかにカミさん達女性陣はそんな雰囲気は微塵もなく、誰とでも当たり障りなく仲良く付き合っていて孤立の気配など全くない。

多分、私も人から見れば人付き合いの悪い、付き合いにくい人間の部類なのだろう。
それで良いのか?と問われれば、答えは決まっている。
でも性格や言動を180度転換することは出来ないし、装ったとしてもそれがストレスとなっては元も子もない。

そうであれば、見かけだけでも人嫌いの印象は少なくしたい。
せめてへの字の仏頂面は止めて、笑顔の立ち居振る舞いに努めよう。

心からの笑顔は素敵なものだが、それが難しいなら出来ない自分を笑うことで人嫌いと思われないならそれも良いではないか。

「あの人は群れたりしないけれど、付き合いにくいって程でもないよ」が目標かな?

 

 

世の中努力した者全てが報われる訳では決してないが、少なくとも成果を得た者は必ず努力しているものなのだ。
そう思って、これからの老後を過ごしていこう。

 

話は変わるが、体の錆で今悩んでいる膝の痛み。
山歩きはおろか、散歩もできないと言うことが、こんなにもストレスになるとは思ってもいなかった。
体の錆は落とせないとわかっているのだが、何とかならないものか。

やっぱりお医者さんの言うとおり手術しかないのかな〜?

 

 

 

 

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