蝦夷梅雨
「北海道には梅雨がない」と言われる。
気象庁の公式発表もそうだから、もちろん正しい。
だが庶民感覚で言うと「北国にも梅雨はある」のである。5月から7月にかけ本州以南では梅雨前線が停滞してしとしと雨が降り続く、北国でも6月から7月にかけ2週間ほど雨がちで肌寒い日が続くことがある。
これを称して「蝦夷梅雨」とか「リラ冷え」と言う。
雨と寒さに耐えて咲くリナリア
前者は南からの暖気が流入することで起き蒸し暑く、後者はオホーツクからの冷気が南下することで起き寒い。
今年も6月中旬ごろからこの現象が発生し、寒く鬱陶しい日が続いた。
我が家でも朝晩はストーブを焚いたほど、観光客の皆さんは震え上がり予定通りの行動を制限された方も多かったのではないだろうか?
先日、富良野岳で出会った人は「雨ばかりで花も無い、ひどい所だ」とがっかりしていた。
リラ冷えの花
そんな蝦夷梅雨の寒さのことを北国の人たちは、「リラ冷え」とも呼ぶ。
美しくも儚い感じで、素敵な言葉だと思う。
語源は知らないが、女性歌人が使った言葉と聞いた。
渡辺淳一の小説「リラ冷え」で一般的になったのかもしれない。寒く鬱陶しいリラ冷えの日が続く時、気持ちを慰めてくれるのは庭や散歩道に咲く花。
しっとり濡れた花、水滴を付けた花、晴れ間の花、どれも精一杯生きている。
その可憐でしたたかな姿勢が元気をくれるのだ。
ルピナスルピナスは寒さに強く丈夫、下から花を咲かせるので「昇り藤」とも呼ばれている。
アンデスの山中にも沢山咲いていたのを思い出すが、荒地でも咲く元気をくれる丈夫な花である。
すらりとした花穂が風に揺れるルラリアもこの時期に咲く花。
雨に打たれ、水滴を一杯付けて重そうに首を垂れる姿も可愛く感じられる。
リラリア重くならないよう、明るく軽やかなイメージを強調して撮ってみた。
リラリア
青い丁子草(チョウジソウ)もリラ冷えの時期に咲く花、私はこの花の色が大好き。
雨の雫をたっぷりと付けた花をアップで撮ってみた。
チョウジソウ
青い花といえばアルペンブルーも咲き出している。
その名の通り、原産地はヨーロッパアルプスだ。
アルペンブルー花言葉は「誠実」「貞節」と言うが、その通りの印象の花である。
赤系統の花では、ハマナスがこの時期一番の盛りだけど雨は似合わない。
その点、ひっそり濡れて咲くツボサンゴには、どこか哀愁が感じられる。
ツボサンゴ
多くのお庭にあるピンクの花、雨にも負けず元気に伸び上がっている感じが気に入って撮ってみた。
放射線状に伸び伸びと元気良く
これも何処にもあるゼラニウム、だが咲き始めや蕾は開ききった花とは味わいが異なり、雨に打たれた表情も初々しい。
ゼラニウム
散歩中、白雲木(ハクウンボク)の花が咲いていた。
札幌市内では時折見かけるが、千歳では珍しい。
木が大きく、綺麗で清楚な花が間近で見られなかったのは残念だった。
ハクウンボクの花
花はすでに終わっているけど、ホウノキの葉が梅雨の晴れ間の陽を浴びて美しい。
葉も花も大きな印象的な木ではある。
ホウノキの大きな葉
7月に入ると待っていたかのように、マツムシソウやキスゲ、ユリが咲き出した。
そよ風にお辞儀を繰り返すマツムシソウはとても良い風情。
だけど千歳に吹く風は荒々しく、千切れんばかりで可哀想。
マツムシソウ
絶えず動いてジッとしてくれないマツムシソウ、ピントを合わせるのも一苦労。
マツムシソウ
百合もクルマユリ、テッポウユリが咲き出した。
蝦夷スカシユリの分厚く硬い花弁、赤黒い色が暑苦しい。
そこでモノクロにしてみたが・・・。
蝦夷スカシユリ
それにひきかえキスゲの透き通ったような黄色、レモンイエローと言えば良いのかな?
爽やかな黄色で、梅雨空の鬱陶しさも吹き飛ぶようだ。
キスゲゼンテイカと同じ仲間だと思うのだが、我が家のキスゲは色がゼンテイカより薄いレモン色。
ユウスゲに近いのかな〜?
八重の白菊もリラ冷えの頃に咲き始める。
派手さはないのに姿・形なのか、目を惹く存在である。
八重の白菊
予報によれば、今年の夏は暑くて雨も多いという。
リラ冷えもそろそろ終わりだろう。
痛めていた膝も少しは良くなってきたのだから、爽やかな晴天のもと野山を楽しみたい。
気長に良いお天気を待って、出歩いてみることにしよう。