オロフレ山 (1231m)

道央  2019.6.11(火)  霧

 


 

ミヤマダイコンソウ

 

山笑う

 6月に入り、北国の山にも花あふれる春がやってきた。
山々が雪と氷に覆われた「白の世界」から可憐な花たちが醸し出す「色彩の世界」へ変身し、私たちを楽しませてくれる待ちに待った季節の到来である。

今回、私たちは花の名山として名を馳せている「オロフレ山」を訪れた。
昨年は6/25に訪れたのだが春の花は終わりに近く夏の花への端境期だった、そこで今年は2週間ほど早めてみたのだ。

オロフレ山はどっしりとしたとても大きな山である、麓から登れば大変なアルバイトを強いられるだろうが有り難いことに登別と洞爺湖を結ぶ幹線道路がオロフレ峠を通っているので比較的楽に訪れることができる。
それに加えて花の百名山と称されるほど花が多いので、花の時期には多くの人が訪れる人気の山なのである。

海霧

 オロフレ峠の登山口に着いたのは午前8時、車の外気温度計は7℃を指している。
少し涼し目かなと外に出てみたら、思わず悲鳴をあげて車に逆戻り。
強い風が吹き荒れていて涼しいどころか寒い。
おまけに強い南風は海霧(Sea Fog)を伴って一面の霧だ。

防寒具を着込み、意を決して外へ。
入山届のノートが飛ばされないよう押えながら記帳して歩き出す。
樹林帯へ入ると嘘のように風は無くなり、ホッとする。木々の持つ力は凄いものだ。
結局この日は下山するまで風は強めで、吹きさらしや稜線では風との戦いが続いたのだった。

 

お出迎え

歩き出した樹林帯の林床部には、スミレ・マイズルソウ・カタバミ・ズタヤクシュなどが点々と咲いている。
僅かな登りで C1003mP、道は平坦となりオロフレ山名物の羅漢岩へ続いていて、花も次第に多くなる。

イワカガミのピンクが目立ち始めた。
アカモノはまだ蕾を固く閉じて、縮こまっている。

イワカガミ
イワカガミ

霧に濡れたイワカガミ、晴れた日に見せる派手な印象とは異なり、しっとりお淑やかな表情を見せている。
小さな岩の上に姿形の良いイワカガミが咲いている、花も旬でとても綺麗。早速モデルになってもらうが、強風に煽られ振動するかのように揺れ続け可哀想なぐらい。
シャッタースピードを限界まで上げて撮影するが、10枚ほどすべて失敗。微妙にブレているのだ。
この日の花の撮影は、風との戦い。風の息を待ってシャッターを押すのが原則なのだが、それが通用しないほどの風なのだ。
素人写真家としては、「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」しか対処法はない。

羅漢岩にも霧が次から次へと吹き上がっていて全体を見ることは難しい。

羅漢岩
霧が吹き付け、霞む羅漢岩

霧の岩場には、チングルマがしがみつくように群生。素敵なコントラストの絵を作り上げていた。

岩とチングルマ
霧と岩場とチングルマ

今回、オロフレ山を歩いていて嬉しくなったことがある。それはしっかりした保護活動のおかげで明らかに花が再生し、その数を増やしていること。
特に顕著なのが、シラネアオイである。
一時は盗掘跡が目立ち花の数も減っていたのだが、最近は花の生息範囲も数も回復しているように感じる。

シラネアオイ
シラネアオイ

シラネアオイの花の時期はそろそろ終わりかけ、それでもまだまだ綺麗で目の保養になる花も多い。地道な保護活動に感謝し、大事に見守っていくことが山歩きを楽しむ私たちの務めであろうと思う。

シラネアオイ
増えているシラネアオイ

 

オロフレ山登山道のほぼ中間点に、明瞭な小岩峰がある。
「イワヒゲが丁度綺麗な時期かも」と言うと、先を歩いていたカミさんがスルスルと。

「残念だわ〜! イワヒゲもイワウメも終っているわ」
「せっかくだから、ちょっとポーズをお願い」

小岩峰とカミさん
小岩峰とカミさん

ウコンウツギが咲き出している。まだ花の内側が赤く変色していないウブな咲いたばかりの花たちだ。

ウコンウツギ
ウコンウツギ

C1062mP手前のコルまでやってきた。
濃淡入り混じった白い霧の塊が激しく吹き付け、すぐそこにあるオロフレ山本体を見ることもできない。
花が少なければ此処で止めてしまうところだが、この先ハクサンチドリやカラマツソウ、ミヤマダイコンソウなどなどが咲いている筈。
それを期待し、おやつでちょっぴり休憩して登るとしよう。

休憩
山ならぬ霧をバックに

 

真打登場

C1062mPからは斜度を増しながら一直線に山頂へと至る稜線だ。
吹き付ける強風が心配、実際は同じような地形なのに風を通す場所と遮る場所があるようで、常に吹き曝される訳では無かった。

登り始めると、間もなくハクサンチドリがお出迎え。しかも何輪も。超嬉しい!

ハクサンチドリ
ハクサンチドリ

色の濃いもの、薄いもの、勢ぞろいしてのお出迎え。
しかも咲き出して間もない旬の花たちばかり。


色味の濃いハクサンチドリ

風のご機嫌を伺いつつ何枚も撮影、ここでも相当の弾数を無駄にしつつ苦闘したのはご想像のとおりだった。

「色が薄くて白に近いのがあるわよ」


色の薄いハクサンチドリ

ハクサンチドリは、山頂稜線の下半分に集中して分布し美しい花を見せてくれていた。

ヨツバシオガマも咲き出していた。羅漢岩付近のはまだ咲いていなかったのに山頂稜線のが咲き出しているのは何とも不思議な感じがするが、これも現実。

ヨツバシオガマ
ヨツバシオガマ

「まあ、白花のハクサンチドリ!」カミさんの喜びに満ちた声。
たった一輪だけが、ひっそりしかも端正な姿で咲いている。


白花のハクサンチドリ

「うあ〜、本当に久しぶりに見るな〜!」
低い位置で咲いているので撮影する姿勢が苦しい。おまけに風で花が止まらない。
ずっとカメラを構えていると腕が疲れて震えてくるし、吐く息でファインダーが曇る。
カミさんが風上に立って風よけになってくれるが、シャッターが押せない・苦しい!


白花のハクサンチドリ

 

何時もの見覚えのある場所、小さな黄色が見えてきた。
咲いているみたい・・・、期待が高まる。

 


ミヤマダイコンソウ

今年もミヤマダイコンソウに出会えた。風の中、諦めずに登って来て本当に良かった。
理由は分からないが、私はなぜかこの花が大好き。名前が庶民的だからかな〜?
嬉しいことに、この花も確実に増えている。


ミヤマダイコンソウ

お天気は相変わらず、濃霧が風と共に南の太平洋側から吹寄せて景観は何も見えない。
良くて数百m、濃い霧が来ると50m位の視界なので、花を見るしか楽しみが無い。

霧のオロフレ山
霧のオロフレ山

山頂間近には、カラマツソウがたくさん咲いている。
霧を纏ったカラマツソウも上品でなかなか素敵である。

カラマツソウ
カラマツソウ

そうこうしている内に、オロフレ山の山頂に着いてしまった。
霧の山頂は無表情、花たちのようなお愛想もなく数mでの記念写真も霞んでしまう有様だ。

オロフレ山山頂
オロフレ山山頂 僅か数mなのに霧で煙っているかのよう

 

慎重に!

簡単なエネルギー補給を済ませ、登頂後わずか10分後には下山開始。
先日の恵庭岳では、下りで性も根も尽き果てボロボロ状態で下山した。
今回は全く疲れていないように感じるが、慎重の上にも慎重に下ろうと気持ちを引き締める。

でも折角花たちが綺麗な姿を見せてくれているのだから、大いに楽しみ愛でながら下りたい。
山頂直下に旬を過ぎ大分疲れた表情のミツバオウレンがあり、思わず自分自身の姿と重ね合わせてしまう。お互い、頑張ろうな!

ミツバオウレン
ミツバオウレン

山頂稜線を下っていると、登ってくる人たちが多くなってきた。皆さん、私たちと同年輩。
「山頂の風はどうですか? あとどの位?」「まだ花はあります?」・・・
「景観は全くですが、風は何とかしのげます」「お花は最高〜 この歳になって急ぐことはありません、お花見を楽しんでください」・・・挨拶と軽口を交換しつつ、すれ違い。

C1062mPまで降りれば、あとは概ね平坦な道を下るだけ。注意は突風だけだ。
それでも危なそうな所では、声を掛け合い慎重に。

ミヤマカタバミとイチゲが咲いている。どちらも可愛い。
ヒメイチゲより一回り大きな花、エゾイチゲである。登りで見逃していただけに得したような嬉しい気分。

エゾイチゲ
エゾイチゲ

羅漢岩の近くで面白い木の造形が、アーチ状になった形とアーチの中に飾られた草が一服の芸術品のように見えなくもない。

面白い造形
面白い木の造形 アーチの中にシラネアオイでも一輪咲いていれば・・・

羅漢岩付近の霧は朝から変わらない。深い断崖が霧に霞み、少し優しそうに見える。

羅漢岩
霧に包まれた羅漢岩付近の断崖

登山口への樹林帯には林床部に可憐な小さな花が咲いている。
その中から、マイズルソウをUPで撮ってみた。いささかアップし過ぎて少し変かな?

マイズルソウ
マイズルソウ

無事、登山口まで戻ってきた。
来馬岳寄りに、白く何かが咲いているので行ってみると、チングルマであった。
すでに盛りは過ぎていたが、どなたかが観光客のために植えたものが定着したのかも。

チングルマ
チングルマ

また、ハコベかフスマの仲間と思われる花が咲いていたが、私には判別できなかった。
どなたかご存知の方がおられたら、お教えください。

花
私には判別不明の花

 

ともあれ、二人とも思ったより元気に下山。
霧で景観は残念だったが、さすがに花の名山であるオロフレ山。花には大満足した山行だった。

下山後の疲れや筋肉痛も無く、先週の恵庭岳とは大違い。
恵庭岳とオロフレ山の格の違いか、私たちの体が山に馴染んできたのか、どちらにしろ山を楽しめて嬉しい限りなのであった。

 

 

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