函館と道南の旅

道南   2019.7.10(水)〜13(土)   


 

夕景

「友」とは、本当にありがたく良いものである。
歳をとり高齢になる程、それを強く感じるようになる。

カミさんの高校時代からの親友であるM子さんがカミさんに逢うために函館までやってくることになった。
逢っておしゃべりをするのが目的だと言うので二人だけの時間を過ごしてもらおうと思っていたが、計画を煮詰める内にせっかく函館に行くので可能な範囲で観光も楽しみたいということになった。

そうなると慣れない町で公共交通機関だけでは行動の自由が大幅に制限される。
そこで所謂「アッシー君」として、タクシー代わりに私が同行することになったのである。

 

香雪園

7/10 (水) 朝、自宅を出発。高速道路を利用して一路函館空港へ。
函館には待ち合わせより大分早く着いたので、ゆっくり昼食をとり空港近くの見晴らし公園へ。
そこにはかつての豪商の屋敷が「香雪園」と言う名で公開されていた。

香雪園
茶室のある建物

松や紅葉、桜など本州から移植された緑に囲まれた元豪商の庭園と家屋敷。
しっかり手入れがなされ、美しい静かな佇まいが見る者の心を穏やかにしてくれる。

香雪園
美しい緑に囲まれて

香雪園は疲れを癒し活力を与えてくれる場。このような場所をさりげなく公園として開放している函館市の豊かさ、度量の大きさを感じた所でもあった。

 

再会

定刻通りM子さんを乗せた飛行機は到着、二人は再会の喜びに包まれ高校時代に還ったかのようにはしゃいでいる。

とりあえず、近場の「啄木小公園」と「立待岬」へ車を走らせる。

啄木小公園
啄木の像の前で M子さん(左)とカミさん

 

見た目は二人とも立派な高齢のご婦人なのだが、寄り添いおしゃべりしている姿はキャピキャピの高校生にも重なる。
アッシー君としてはなるべく邪魔にならないよう控えめに、二人の時間を妨げないよう留意する。

立待岬
立待岬

お天気は朝方からの霧も晴れ、青空が覗く上々のお天気だ。
たわいない会話の合間に、立待岬のことやうっすら見える下北半島などの説明をカミさんしっかりやっている。結構勉強してきたみたい。

立待岬
立待岬 この日はうっすらだが青森が見えた

 

トラピスト修道院

ホテルに直行するにはもったいないと、トラピスト修道院へ足を延ばす。

私は函館には山歩きのために何度か訪れているが、純粋な観光地巡りは初めてだ。
トラピスト修道院は当別丸山を登ったとき訪れたが、ほとんど覚えていない。カーナビに命じられるまま車を走らせる。


トラピスト修道院

修道院内はシーンとして人の気配は感じられない、実際は多くの修道者が祈り働く生活を送っているのだが信じられないぐらいだ。
禅寺などで修行の励む僧たちと共通の観念・考え方で生きているのだろう。
少なくとも、いかにしたら儲かるかだけを考えている坊主とは違っていると思いたい。


トラピスト修道院にて

てなことを思いながら、楽しそうなおしゃべりが止まらない二人とは距離を置いて院内を散策する。


トラピスト修道院 右の花がチンシバイの花

院内に、ナナカマドに似た葉と花を持つ小柄の木が散見された。
カミさんも花好きのM子さんも分からないと言う。帰って調べてみたら、「チンシバイ(珍珠梅)」とか「ニワナナカマド」と呼ばれる中国原産の木のようである。

トラピスト修道院では、休憩がてらいただいたアイスクリームが牛乳の味が濃厚でとても美味しかった。

夕食後には函館山からの夜景を楽しみたいとの希望で、トラピスト修道院からホテルへ直行。
函館観光ホテルは市内のど真ん中、一方通行などが入れ込む道を縫って上手く正面玄関に横付けできるか緊張でドキドキだった。

 

夕景・夜景

二人をホテルへ送った後、私も函館市の夕景を楽しもうと城岱高原へ。
高原展望台へ着いたのは、夕方6時過ぎ。夕日が全体をほんのり赤く染めはじめていた。

夕景
18時過ぎの函館市街

約1時間後の19時には周囲はまさにほの赤い色に包まれ、幻想的になってきた。
やや霞んで見えていた駒ケ岳も、夕日に照らされ良い表情だ。

駒ケ岳夕景
夕照・駒ケ岳

夕日が高度を下げまもなく日没となると、空一面が橙から赤紫に染まり遠くの山々のシルエットと相まって素晴らしい夕景を繰り広げてくれた。
自然の素晴らしき営みに感謝である。

夕景
城岱高原からの夕景

 

そして午後8時を回ると、空はまだうっすら明るさを残しながら街の灯りがまばゆさを増してきた。
かなりの距離から見ているせいか、派手さは余り感じないけれど確かに美しい夜景である。
海上には漁船の灯りが点々とあり、遠くには下北半島の灯りが微かに見えていた。

夜景
城岱高原からの函館の夜景

 

大沼

カミさんの親友M子さん来道2日目は、午前中に大沼を歩き視界が良ければ「きじびき高原」からの展望を楽しみ、午後は市内散策やショッピングを楽しんでもらうつもりである。

朝8時半にホテルへ迎えに行き大沼へ、早朝は霧が深かったが晴れつつあるようだ。
大沼では島巡りコースを散策するが、霧の影響が強く残っていて雲が低く駒ケ岳は残念ながら姿を隠している。
日差しが無いので湖面の色も冴えない、でも肝心の二人は残念そうな顔も見せず景色がダメならおしゃべりがあると明るく楽しそう。

大沼
大沼 駒ケ岳が裾野をちょっぴり見せていた

大沼では睡蓮がちょうど見頃、だけど光という演出家がいなくてはせっかくの美しさも半減以下だ。
仕方なく、看板の駒ケ岳と睡蓮で我慢なのである。

大沼
本当ならこう見えるはずと看板の前で 

M子さんのリクエストで訪れた大沼、誇る秀逸な大景観を楽しんで頂きたかったのにお天気に恵まれなかった。
函館市内に戻る途中、道の駅と「昆布館」に立ち寄って男爵館での見事なディスプレイを楽しんだり、お土産を物色したりで過ごした。

 

市内散策

ホテルに送り届けてから明日の昼までの約1昼夜、カミさん達は二人で歩いたり路面電車を使って市内のお店をひやかしたり観光施設を気ままに巡りたいとのことで、アッシー君の私はお役御免となった。
そこで二日目の午後は、私も一人で市内散策をしてみることに。なにせ、山歩き以外で函館を訪れたことはないので、市内の観光どころを歩いたことなどなかったのだ。

緑の島に車を停め、のんびり元町付近を歩く。
表通りにおしゃれでちょっと気になる建物が・・・、レトロな雰囲気が街並みに溶け込んでオシャレ。
「金森」との屋号、もしかしたらレンガ倉庫と関係がある商店なのかもしれないな。

商店
ちょっとオシャレな商店

坂の上に教会の尖塔らしきものが見えるので、上っていく。
写真かTVで見た記憶がある教会だ。
社会見学なのか5・6人の小学生のグループが来ていて、ノートを取ったりふざけ合ったり楽しそう。
私自身の経験でも、団体で引率された遠足や見学で記憶しているものは皆無だが、自分たちで計画し訪ね歩いた京都の寺院は今でも強い印象でしっかり記憶に残っている。
この子達にとって記憶に残る社会見学となるよう願いながら、彼らの行動を微笑ましく見守った。

教会
小学生の小グループが

この近くには私でも知っている有名な教会や寺院が幾つもあり、同じ学校の生徒さんらしい小グループが訪ね歩いていた。
グループのリーダーによってか、生真面目そうに何かを調べているグループ、ふざけ合って騒いでいるグループ、あまりやる気が見えないグループなど違いが見えて面白い。

小学生たちのおかげで、私自身にとっても結構面白い社会見学となったのである。

教会
教会群の一つ

 

ブラブラ坂を下りて行くと、赤レンガ倉庫群が立ち並ぶベイエリア。
レトロな風情が感じられ、それでいて何となく新しさも感じられるエリアである。
レンガの建造物は年を経ると風合いが深くなって、古さを感じさせない特徴があるようだ。
もっとも建物の風合いはさておき、倉庫内は商業主義がまかり通る雑多な商店が並んでいるだけなので入る気にもなれない。

赤れんが倉庫群
古さと新しさが渾然一体としている赤レンガ倉庫

倉庫群の目の前は、小さな港とヨットハーバー。
人が途絶えた時を狙って、ヨットのオーナー気取りで一枚。本当のオーナーさん、無断でごめんなさいね。


ヨットなど乗ったこともないが・・・

 

恵山へ

午後4時前には市内散策もあらかた終わってしまった。
明日の昼まで無罪放免である、どうしようか?

お天気は思ったより良い、明日も期待できるなら恵山と海向山を歩こうか?
早朝に登り出せば、昼には温泉で汗を流して函館まで戻れる。
と言うことで、急遽恵山の麓にある「道の駅恵山」へ。約1時間弱の行程だ。

久しぶりに見る恵山は、上機嫌で出迎えてくれている。明日も頼むよ!

恵山
道の駅から眺める、恵山

ところが夜中、車の屋根を叩く雨の音で目覚めた。『ありゃ〜!」
明るくなって土砂降りの雨を避けながらコーヒーを沸かす。
いつもはテンションを上げてくれるコーヒーも、土砂降りで暗く落ち込んだ気持ちに火をつけることは無理なようだ。

カミさん達もこの雨では、歩くことも儘なるまい。
アッシー君役に戻り、お二人には朝寝を楽しんでもらい午前9時に迎えに行くことにした。
五稜郭タワーまで送り、2時間後に同じ場所で待ち合わせ。幸い、雨は小降り程度。
タワーからの展望や五稜郭奉行所などで丁寧な説明を受けたと喜んでいた。

 

トラピスチヌ修道院

M子さんの函館最後の訪問先は「天使の聖母トラピスチヌ修道院」、通称「天使園」と呼ばれる女性専用の修道院である。


トラピスチヌ修道院

初日に訪れた男性のトラピスト修道院より人数も少ないだろうから小さく質素なのかと想像していたが、とても立派な建物で大きく優雅。
施設内は凛とした空気に包まれ、綺麗に整備されていて厳しい戒律の下で自らを律し生活している様子が見て取れた。


トラピスチヌ修道院にて

驚いたことがもう一つ、売店内に浄財用の木箱が置いてある。
その木箱が浄財で一杯になり、投入口からお札が溢れて何枚も飛び出ていたのだ。

こんなに寄付する人が多いのか、と言う思い。
裕福で修道院の運営には困っていないことの証なのか、と言う思い。
人々の悪意を誘発する要因になってしまうのでは、と言う思い。
などなど色々なことが頭の中を駆けずり回り、考えさせられた出来事であった。


トラピスチヌ修道院にて

トラピスチヌ修道院とても素敵なところ、二人ともいたく感激した様子であった。

修道院の見学を終えると既にお昼過ぎ、そのまま空港へ。
出発まで2時間ほどあるので、別れの時間を二人で過ごしてもらうことに。

M子さん、わざわざいらして下さって有難うございました。
カミさんも大変喜んでいましたし、お二人の友情には感じ入るものがありました。

 

道南一周へ

空港でカミさんと合流、さてどうするか。
当初の予定では、道南を訪れることはそうそう無いから、渡島・檜山地方をグルリと一周しようと思っていた。
途中できれば、大千軒岳・白神岳・ヤンカ山などを登れれば嬉しいとも。

だが、天気予報は雨がちの日が続くとある。
出直すか? 相談のしどころである。
出した結論はせっかく来たのだから雨でも巡って、足跡を繋げるだけでも繋げてみようだった。

夕暮れの霧雨降る中、一路道南の福島町・松前町へ。
松前の温泉で体を癒し、道の駅で車中泊。
雨の止み間には、青森の竜飛岬の灯台の火が良く見えていた。

 

松前城

7/13 (土)、霧雨が降ったり止んだりしながら強い南風が吹いている。
雲はどんより垂れ込め、海は白波が目立っている。

青函海峡
荒れ模様の松前の海

山歩きはとても望めない、道南の町や海岸を巡りながら帰路に着くことに。

まずは、桜で名高い松前公園を散策。

松前の街並み
昔風に統一された松前の街並み

早朝で人通りも無いが、昔風に統一された街並みが目を引く。
商店街のすぐ裏手に、松前城のある公園。
さすがは桜の名所、多種多様な品種の桜が植えてあり枝には名前が吊り下げられている。
太い幹に瘤ができ樹齢を感じさせる木、若いすんなりした木、5月の連休には見事な美しい花を咲かせ人々を魅了したのだろう。

松前城
松前城

お城の北側に寺町、松前藩の菩提寺などが点在している。
散策路なども整備され、町の人たちの観光にかける意気込みが感じられるようだ。

寺町
松前藩菩提寺

この時期、当然ながら桜に花は無い。その代わりに紫陽花が目に優しい。
水色の紫陽花がひっそり咲いている様は、松前藩の時代でも同じだったことだろう。

紫陽花
美しく咲く紫陽花

 

荒れる海

松前から江差に続く国道228号線、人家も少なく荒涼とした感が強い寂しい海岸沿いの道だ。
海は荒れ模様、古びた漁師の作業小屋などがうら寂しさを一層際立たせている。

海岸
荒涼としたうら寂しい海岸風景

時折、風が運んでくるのか強い雨が襲ってくる。まさに驟雨である。

海岸の岩に大波が襲いかかり岩を飲み込んだと思うと、岩にはじき返され砕け散っている。
眺めていると、次第に口数が少なくなり、黙って見ているより仕方なくなる。
昔の人はこんな時何を思い何をしていたのか、にわかには想像すらできないほどだ。

波
果てしなく続く、波と岩のせめぎ合い

 

江差 開陽丸

民謡で有名な江差、松前から遠いように感じたが実際は1時間と少しの距離だ。

鴎島の手前に開陽丸が復元展示されている。
展示施設はまだ開館時間前で閉鎖されていたが、開陽丸そのものは見学できる。
幕末にその重厚な戦闘能力を期待され導入されたオランダ製の軍艦、悲劇の軍艦とも称せられるが実際は操船能力の欠如からその能力を全く発揮することなく座礁沈没した船だ。

奇しくも、少し荒れた海に舳先を向けた開陽丸はまさに座礁せんとする姿にも見受けられた。

開陽丸
開陽丸

 

江差から北上すること、約40分。熊石町に着いた。
ここは遊楽部岳の南に位置する「冷水岳」を訪れた時、帰路アワビをお土産に買い求めた記憶がある。
したがって渡島半島を南周りで走ってきて、ちょうどこれまでの足跡と繋がったことになる。
大したことではないのに、なんだかちょっと嬉しいような気分がするのはなぜだろう。

ともあれお天気の悪い中、車を走らせてきた甲斐があったというものだ。
カミさんと二人、何をした訳でもないのにちょっぴり満足感を味わって八雲経由で帰宅することに。
ちょうど交通安全運動中で嫌いなパンダがあちこち隠れている、気色悪い思いをしないよう気をつけながら高速道路を快調に走り夕刻には自宅へ帰り着いた。

 

 

 

 

 

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