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芽室岳
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今回の山旅、本当の目標は南日高の神威岳であった。
しっかり準備を整えもう一度天気図をC'Kすると、高気圧が東寄りに移動し北海道は南風が吹くような気圧配置に変わりつつある。
予報は浦河も晴れを予想しているが、海霧が流れこみ平地は勿論、下手をすれば山の上まで霧に覆われる確率が高いと判断した。
急遽方針変更、北部日高であれば海霧の影響はないだろうと芽室岳に転進することにしたのである。芽室岳の登山口へ行くには御影の牧場を通過しなくてはならない。
牛の脱走を防止するため2ヶ所にゲートがあり、通過するたびに閉めるようになっている、面倒でも協力したい。登山口には小さいけれど綺麗な小屋が立ち、水場もトイレも整備されている。
駐車スペースも十分あり、使い勝手の良い登山口である。
登山道は西峰とのコルから延びる北尾根に沿って付けられている。
出だしは平坦なエゾマツの人工林の中を進んで行くだけだが、臨床には季節の花々が咲き出し目を楽しませてくれる。
ズダヤクシュ、タチツボスミレ、オオサクラソウ、ミヤマエンレイソウ、シラネアオイ、ミヤマカタバミ、ヒメイチゲ・・・。
エゾオオサクソウ
オオサクラソウはすでに盛りを終えている、シラネアオイとミヤマエンレイソウが旬の感じである。
ゴゼンタチバナやイソツツジは蕾も硬く、もうしばらく待つ必要がありそうだ。
シラネアオイ
花たちと言葉を交わし写真を撮っているとなかなか足が進まない。
急ぐわけでもない、チンタラ楽しみつつゆっくり登っていく。
北尾根に乗ると笹被りの道が尾根通しに一直線に延びている。
斜度に緩急の変化はあるものの、日高の山道らしくジグも切らずに登っていく。
やや煩い笹も下半分は刈られていて歩きやすい、多分残りの半分も近日中に刈り払って頂けるのでは・・・、いずれにしても整備をしてくださる方々に感謝である。C1300m付近から登山道の直ぐ東側に雪が繋がるようになり、コルまで延びている。
そして木々の間から芽室岳の東峰が尾根の左に、西峰が右に望まれるようになってきた。
東峰
芽室岳は東と西の双耳峰と記述したが、良く観ると東峰そのものも双耳峰のようになっており、西峰のほうが凛々しく見える。
西峰
標高の高くなったこの辺りには、ゴヨウラクツツジ、ツバメオモト、ヒメイチゲ、ミヤマエンレイソウなどが咲いていて、シャクナゲやコケモモ、イワツツジは蕾である。
ゴヨウラクツツジ
真面目な急登に汗をかきシャツ一枚になって足を進めているうちに、空が急に大きく広くなったと思ったら西峰との分岐であるコルに飛び出た。
最初に芽室岳山頂である東峰へと向かう、稜線の風が心地良い。晴れてはいるのだが春霞が掛かっていると言うかスモッグと言うのか、空気がどんよりして澄み切っている時とは景観が異なるのである。
北日高の展望台と言われているだけあって、素晴らしい大展望なのだが、心の底から喜びが沸き上がってくるようなスッキリとした大展望とはひと味違う感じである。
芽室岳山頂から、重畳たる北日高の山並み
伏美岳からピパイロ岳〜1967峰へ続く稜線が目を引く。
伏美岳(左)からピパイロ岳(中央右)への稜線と1967峰(右奥)
幌尻岳と戸蔦別岳はピパイロ岳の陰になっている。
エサオマンの北東カールも見えているが、霞がかかって迫力が感じられない。西南西にはチロロ岳とその稜線が存在感をアッピールしている。
主稜線からチロロ岳(右)へ続く稜線
帯広や中札内の市街は霧で覆われている感じ、谷間に霧が侵入してきている。
視える限りでは山は霧に覆われてはいないようだが、南日高の方はどうなのであろうか?
神威岳から芽室岳に転進して正解だったような気がする。
伏美岳(右手前)と十勝幌尻岳(中央左)からエサオマンへの山並み
時間はまだ8時前だ。
コーヒーを飲みながら、ぼんやり山々の景観に見入る。この景観を見せてあげたかったカミさんにTel、山頂の様子を伝えると「良かったでしょう! 千歳は霧雨が降りだしたし、襟裳や釧路も濃霧と言っているわよ。ゆっくり楽しんで気をつけて帰ってらっしゃい」
そうか、やっぱり。多少視界が良くなくても幸運な方だったんだ、そう思うだけで幸せな気分になれる。
暖かく風も弱い陽射しの中、山頂の大きな岩に寝転んで30分近くお昼寝。いい気持ちだ。
芽室岳山頂で
小1時間のんびり過ごした芽室岳山頂、誰も訪れる気配もない。
腰を上げ、西峰へ行ってみることにする。
コルまで戻って西峰へ、此処から見る西峰の姿もなかなか良い。
コル付近からの西峰
夏道は雪に隠れ、登りの中間付近から再び現れた。
西峰へは距離こそ短いが、結構な急傾斜。ハイマツに掴まり体を引き上げながらの登りである。西峰山頂からの景観は東峰からのものと大差ないが、幌尻岳が見えるようになることと北西方向がすっきり見渡せるようになった。
ピパイロ岳(左)と1967峰(中央右)の間に幌尻岳が見えている
北西にはペケレベツ岳が意外に大きな山容を見せ、北には日勝峠方面に続く山並みが見えている。
ペケレベツ岳(左)など北西方向の景観
そして東には芽室岳本峰が優しい山容を見せている。
東峰
西峰の山頂で小腹を満たしながら、日向ぼっこ。
ゆったりした時間が流れ、話し相手がほしいぐらい。まだ時間はタップリあるが、そろそろ下山するとしよう。
尻滑りを楽しみつつ西峰を下ってコルへと戻り、夏道をひたすら下る。
笹の刈分道はダニが怖いが避けては通れない。下りも花を見つけては写真をとったり、眺めたりしながら単調さを紛らわす。
ツバメオモト
タチツボスミレ
西峰から2時間半近くかかって、登山口へ戻ってきた。
いつの間にか、車が一台停まっている。
登山届を見ると、北広島からの二人が入山している。体の手入れをし荷物を片付けていたら、かなり山慣れた感じの女性二人連れが降りてきた。
私が西峰へ行っている間に東峰へ向かったようで、すれ違っていたのだ。
今日はじめて出会う人達。今日の芽室岳は彼女達と私の三人で貸切だった。
すこしお喋りして、帰路についた。