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岩木山
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朝目覚めてすぐにお山を見る、山頂部は雲の中だ。
ちょっぴり意欲を失いかけるが、予報では日中は晴れ間が出ると言っていた。
それを信じて、行ってみようと準備を整える。
朝の岩木山 時々雲に覆われる
信仰の道であった登山道は、概ね穏やかに樹林帯を登っていく。
足にやさしい土の道、クッションを一枚余計に敷いているようだ。視界の効かない道をひたすら晴れてくれるよう祈りながら進んで行く。
1時間ほど歩いた所にあった大岩に注連縄が付けられている。
どういうものなのか、なんの為にあるのか分からないが、ここにも一礼してお願いする。
大岩様
歩き始めて1時間半、やや視界が開けたと思ったら、そこに焼止りヒュッテが建っていた。
かなり古い小屋である。この辺りで優しかった土の道は終りとなり、ゴツゴツした岩の積み重なる大沢を遡るようになった。
沢と言っても、ルートはしっかり出来ており、特に心配はいらない。
大沢 ルートもテープやペンキで示されている
沢の中を登っていると、点々とピンク色が。
ルートを示すピンクテープではない、コザクラだ。これが有名な固有種、ミチノクコザクラらしい。
ミチノクコザクラ
やや時期を過ぎているものも多いが、まだ十分鑑賞に絶える花も多く嬉しい。
ミチノクコザクラ
最初は少なかった沢を流れる水も、次第に水量を増やしている。
暫く行くと、樋から勢い良く大量の水が吹き出している。
錫杖清水と呼ばれる水場である。
相変わらず曇り空で、そんなに喉は乾かないが、ここは休憩だ。
甘いものを口にし、元気をつける。晴れればもっと元気がでるのにな〜!
錫杖清水 冷たく美味しい水だ
錫杖清水を過ぎれば、大沢は間もなく終了だ。
水が枯れ、岩混じりの沢筋を詰めていく。
ここを詰めれば、大沢を登り切る
前方にガスに霞んだ岩峰が屹立しているのが目に入る。
これが大倉石の尖塔だろうか?
大倉石?
少しづつガスが晴れていくようだ、先程の岩峰も姿がはっきりしてきた。
いいぞ! このまま晴れてくれ!
大倉石もはっきり見えるようになった
谷筋を登り切ると右手に小さな池がある。
種蒔苗代と呼ばれる所だ。
嬉しいことに山頂が見え、池に映っている。
何だか嬉しくなり、気持ちが急く。
種蒔苗代と岩木山山頂部
道は完全に岩場となり急な斜面を登っていく。
鳳鳴ヒュッテと言う小さな小屋の前を通り、岩の急坂を登る。
鳳鳴ヒュッテ(右)と種蒔苗代(中央)
一旦斜度がゆるみ、そこから山頂へ最後の急登となる。
山頂へもう一登り
ゆっくり確実に足を進める。
もう目の前にそれ以上高いところがなくなった。山頂である。
晴れてもいないし、眺望がきくほど視界も良くないが、それでも嬉しい。
山頂に設置されていた鐘を打ち鳴らし、感謝を表す。
山頂の鐘
岩木山神社奥宮にお礼に向かう。
岩木山神社奥宮
奥宮にお礼の拝礼
しっかり霞んでいて、遠望は全くきかない。
登り始めた百沢スキー場が何とか見える程度だ。
微かに岩木山神社と思われる建物が見えていた。
樹林が刈られた所がスキー場
スッキリした大展望は望めなかった。
でも、昨日の白神岳のような失望感はない。
岩木山山頂に腰を落ち着け、ゆっくり時を過ごしながら思いを巡らす。
考えが纏まりカミさんに電話、今岩木山の山頂に居ること、天気が変わり目に差し掛かっているようなので今後の計画は取りやめ帰ろうと思うこと、などを話す。
カミさんからは、この二三日は曇りがちのお天気が続く予報であること、今回の山旅はお天気に恵まれたのだから欲張らず帰っていらっしゃい、美味しい物を作って待っていると。これで踏ん切りがついた。
下山したら神社にお礼のお参りをして、八戸へ向かいフェリーに乗ろう。
鎮魂の歌今回の東北の山旅は本当にお天気に恵まれ、ほとんど休むことなく存分に山を楽しむことが出来たと思う。
全体として満足出来る良い山行だった。訪れた山々の中で、飯豊連峰と鳥海山はやはり別格に素晴らしい山だった。
初めて訪れた山の中では、神室山と大平山がお気に入りだ。東北の山は、単純に標高の高さではなく歴史的背景・文化などに裏打ちされ、地元の人々に誇りとされ愛されている山、それが良い山なのだと言う気がする。
神室山しかり、大平山しかりである。東北地方の復興に今回の山旅がどの程お役に立ったのかは分からない。
でもお話をした多くの人からは一応に感謝され、また来てくれと言われた。
甘いと言われるかも知れないが、その言葉を信じ、紅葉の頃カミさんと共にもう一度訪れてもいいなと思う。
その時はもう少しお金も使わなければ・・・。