水鏡に映える
日高花巡りの2日目、目を覚ますと抜けるような青空と眩いほどの日差しが輝いている。
山々もご機嫌で輝いているに違いない、早速ご挨拶に行かなくては・・・。国道を走りながら日高の峰々を邪魔されず眺められそうな場所を探して廻る。
どこからでも良さそうな気もするが、実際にはなかなかであっちをウロウロこっちをウロウロ。まずは十勝幌尻岳、冬の厳しい姿を優しげに変えている。
牧草地と新緑の林越しの堂々たる姿が朝日を浴びて神々しい。
十勝の盟主 「十勝幌尻岳」
田園風景に日高の名峰たちが溶け込み、一幅の絵のようだ。
まさに、坂本直行さんの絵をそのまま鑑賞している気分である。
田園風景と山々
十勝ならではの広大な畑と長大な日高の山並みの共演。
スケールの大きさに圧倒され声もない。
日高の山並み
防風林に囲まれた耕された大きな畑、その向こうには白い峰が端座している。
農業大国・十勝ならではの光景だ。
防風林とバーコードの畑 その先には日高の白い峰
日高の山といえば登ることしか思い浮かばなかった私だが、遠くからゆっくり眺めるのも良いものだ。
十勝の広大な田園風景に山々が溶け込み一体となっている。日高の新しい魅力を改めて発見した気持ち。
数カ所場所を替え、夢見心地で何十枚もの写真を撮り、気がついたら2時間以上の時間が経っていた。
日高の山々の勇姿を眺めながら「日高山脈山岳センター」のある札内川園地にやってきた。
道路はここで完全に閉鎖され、札内ヒュッテやカムエク、コイカクなどへはここから歩かねばならない。
3〜4時間のアルバイト、これでカムエクなど日高中部の山々は更に遠い印象になってしまうだろう。周囲の山を見上げると朝日を受けて木々の芽吹き色が優しく春らしい。
芽吹きの色が優しい
思い出
ここにある山岳センターにはカムエクや1839峰に登った時立ち寄っている。
特に2010.8のカムエクからコイカク縦走時、嵐で3日間動けずセミ遭難を体験した時は下山後大変お世話になった。
カミさんもその時取る物も取り敢えずこの山岳センターへ駆けつけようと走り回ったらしく、来たこともないのにしっかり覚えていた。今は桜と新緑に覆われ、山岳センターは自然の中に静かに佇んでいた。
以前お世話になった山岳センター
園地の花
今日は山歩きではなく目的は花巡り。
ピョウタンの滝を一見してから園地で花巡りを楽しむ。ピョウタンの滝は何の変哲もない砂防ダムなのだが、ダム壁から大岩が出ているため見ようによっては自然の滝のようにみえるのだ。
しかも相当な迫力と凄みを感じる滝に。
勇壮! 迫力満点のピョウタンの滝
よく手入れされ気持ちのよい静かな園地を散策。
派手目な花は咲いていないが、ひっそりとスミレ、ニリンソウ、ヒメイチゲ、エンゴサク、キジムシロ、ネコノメソウ、モイワナズナなどが咲いていて一面清涼な空気に支配されているかのような雰囲気だ。
タチツボスミレ
ナズナやハタザオの種類はスミレと同様に私にとっては見分けが難しい花。
札内園地で咲いていたのは葉の形からモイワナズナのように見受けられたのだが、どうだろう。斜めからの順光で花の表情と美しさを
青空をバックに
同じ花でも逆光で撮ると雰囲気が一変するから面白い。
逆光に光るモイワナズナの群れ
日差しを浴びるネコノメソウ、黄色の突起が愛らしさを演出している。
ネコノメソウ
ニリンソウはこの時期に何処にでもある花、多分少しピンクがかった花になるのだろう面白い蕾を見かけたので思い切りアップに切り撮った。
チュウリップ? ちょっとニリンソウとは思えない
ピョウタンの滝のある札内園地、シーズン前のせいで、とても静かな山里の春を楽しめました。
札内園地を後にして十勝幌尻岳の登山口近くにある「岩内仙峡」へ足を向けた。
十勝幌尻岳を訪れる度に気になっていたのだが、山歩き主体なものだから立ち寄ることもなかった。
紅葉の時期が素晴らしいという評判は知っていたが、花の岩内仙峡はどうであろうか。
岩内川の流れ
素朴
戸蔦別川に合流する岩内川が渓谷を刻んでいる所を岩内仙峡と呼んでいるらしい。
オフシーズンで閉まっていたがレストハウスなどがあり渓谷を散策できる約3Kmの周回路が整備されていた。誰も居ない周回路を渓流の音を聞きながら素朴な雰囲気を楽しみながら歩く。
花は同じ日高山裾と言うことで札内園地と同様の花が咲いていた。
ニリンソウ
ニリンソウやエゾエンゴサクがまだまだ私達の出番と、主力の座を占めている。
自分の美しさはさりげなくアピールしつつ、他の花達が咲き誇る時期になると潔く姿を隠してしまう控えめな花、愛おしく感じられる花達である。
エゾエンゴサク
渓谷を流れまで降りられる道もある。
祀ってあるお不動様にお参りしながら川へと降りる。
岩内川へ注ぐ支沢の穏やかな流れ
あった〜!
渓谷の岩場まで降りると結構な迫力だ。
カミさんが「あっ! アレじゃない?」と声を上げて指をさす。対岸の岩肌にピンクの花達が・・・
今回の花巡りで出会えればと楽しみにしていたヒダカイワザクラとソラチコザクラ。
そのどちらかもしれない。約10m離れた対岸にあるのがもどかしい。
良く見ると対岸の大きな岩肌のあちこちに点々と花を咲かせて貼り付いている。しっかり確認できないが、葉の形状はヘラ状でカエデ型では無いようだ。
カミさんもいわゆるサクラソウの葉とは違うようだという。それなら多分「ソラチコザクラ」なのだろう。
近くでじっくり観察できなかったが、見れてよかった。見せてくれてありがとう!
多分 ソラチコザクラ
岩や小さな滝もあり小さめの渓谷、気持ちが安らぐ流れではある。
岩内仙峡の流れ
ソラチコザクラを遠目に楽しみながら、おやつの時間。
満足感に浸りながらの岩内仙峡での一時だ。
うれしい出会いに笑顔が溢れる
札内園地と岩内仙峡での花巡りは派手さこそ無いが、静かな雰囲気の中ひっそり咲く花達と出会えることが出来た。
まだ時間はある、次は何処で花達と出会おうか?
十勝から富良野・美瑛にかけて花巡りに適した◯◯の森とか◯◯の庭と謳った庭園や花苑は知っているだけでも何十とある。
その大半は花の多さと派手な色のヨーロッパ原産の園芸種などを様々の演出で展示してある所。
私達はそう言う花園にはあまり興味がない。
野の花・山の花が自然な表情で咲く様子を見たいのだ。そんな庭園の一つが私達のお気に入り「六花の森」。
実際には多くのスタッフが大変な手間と時間を掛けて手入れしているのだが、それを感じさせない自然の空間が広がっている。
その中に配置されているのは地元の自然の植物ばかり。
自然の花々の美しさ・可愛らしさを間近で見られ楽しめる場所として、近くを訪れた時には季節を問わず立ち寄るようにしているのだ。
緑に染まる
係の方に聞くとオオバナノエンレイソウが見頃でお勧めという。
歩いて行くと、すご〜い!
一面オオバナノエンレイソウでいっぱい
オオバナノエンレイソウとニリンソウが緑の絨毯の上に白い清楚な花を振りまいたように散らばっている。
エンレイソウは皆旬の咲いたばかりの花でとても綺麗。
昨日の観音山やシーサイドパークの花も素晴らしかったが、それとは桁違いに美しく息を呑むほどだ。
花の量ばかりでなく香りもほのかに辺りを包んでいる。
オオバナノエンレイソウ
オオバナノエンレイソウと一緒だとニリンソウはかわいそうなほど目立たない。
そこで流れの傍に単独で咲いていた一群を特別掲載。
ニリンソウ
珍品?
森を流れる小川の傍に白い花を付けた木があった。
シウリザクラかと思ったが、似ているけれど少し違うようにも感じる。
近くで作業している人に尋ねると、若いお嬢さんが「エゾノウワミズザクラ」ですよと笑顔で教えてくれた。
ここの従業員たちは明るく笑顔で接してくれ、ディズニーランドを思い出す雰囲気だ。帰って調べてみると、日本では北海道と青森、世界ではユーラシア大陸の冷涼な場所に分布している桜。
日本では数が減っている種だという。(シウリザクラとは親戚)札幌では滝野すずらん丘陵公園で見られるようだ。
旬の花達
さすがはしっかり手入れがされている庭園である。
今が盛りの旬の花、これからの花、まだ見られるの?という花達が夫々の居場所を得て気持ち良さ気に咲いている。まずは旬の花の中からオオサクラソウ。
エゾオオサクラソウと同じように見えるが茎や葉の毛が少ないのが特徴だ。
オオサクラソウ
そして時期を迎えているシラネアオイ、萼が大きく見栄えがするがこの日は異常なほどの暑さのため少々グッタリかわいそう。(帯広では真夏日を記録したそうだ)
濃い紫のシラネアオイ紫の薄い、赤みの強い花も
赤みの強いシラネアオイ
次はまだ咲いていたの? とチョッピリ驚きの花。
ミズバショウが大きくもならずまだ見頃の花を付けていた。
一体どんな管理をしているのだろう?
普通なら今頃は花も終わり葉が巨大化している時期だと思うのだけど。
この時期に見頃の水芭蕉が・・・
そして季節を先取り気味に咲き始めていたのが、エゾノリュウキンカ。
園内を流れる小川(多分人工的に作られた)に沿って帯のように連なる光景は心やすまる一幅の絵だ。
このところの暑さで一気に咲き始めたとのことだったが、係の人もビックリの様子。
エゾノリュウキンカで黄色に染まった山里風景
8月頃まで残った雪渓の畔で咲くエゾノリュウキンカは可憐な感じだが、明るい日差しの下に群れ咲くエゾノリュウキンカはたくましい。
エゾノリュウキンカ
園内を堪能しつつ、記念写真を
花々を堪能して歩き着いた森の中の小高い丘、そこでは思いがけず十勝幌尻岳がこちらを見下ろしていた。
花巡りと山景色を満喫しきった喜びの表情で、充実した旅も終わりを告げたのである。
六花の森の隣にある工場直営のお休み処で甘いものでもと誘うと「この近くに美味しいアイス屋さんがあるのよ」
フロマージュとか言うお店でカミさんはラムレーズンとカマンベール、私は黒ゴマとミルクのアイスを。
何処がどう違うのかわからないが、確かに美味しいのは判る。その後、帯広でケーキ屋さんと和菓子屋さんに立ち寄りお土産を買い求めた。
何処も美味しく値段もリーズナブル、十勝には美味しいお店が多くて羨ましい。
千歳の食べ物屋さん、お客さんが遠くからでもわざわざ訪ねてくるような商品やメニューをよろしくお願いしますよ。
・雪解けの水のせせらぎ響ききて
エゾノリュウキンカの黄の色眩し・白樺の防風林は若葉満ち
表情緩むポロシリの峰