いすみ鉄道、養老渓谷

 


粟又の滝 (別名・養老の滝)

 

房州生まれのカミさんが、千葉の鉄道なのに乗ったこと無いのよ。と言っていた「いすみ鉄道」、上京したのを機に乗ってみることにした。

房総半島を横断する形で、内房の五井と外房の大原を鉄道が結んでいる。
五井から上総中野までの39.1Kmが小湊鉄道、上総中野から大原までの26.8Kmがいすみ鉄道である。

両者とも小さな鉄道会社だが小湊鉄道はバス部門を有しておりこちらが主力で経営は比較的安定している。
いすみ鉄道は廃線の危機に陥ったが、2009年に社長公募により航空会社の部長だった人が社長となって以来、自己資金による運転手の養成・採用やムーミン列車、レストラン列車など斬新な経営が評判となり経営を立て直しているそうだ。

この2つの鉄道を乗り継ぎ内房から外房へ出る、でもそれだけではもったいないと途中にある養老渓谷を合わせて訪ねることにした。

 

養老渓谷

お昼過ぎに養老渓谷駅に到着、時間が押しているのでゆっくり散策するのは諦め、中心部分である粟又の滝付近を中心に見て回った。

駅からバスの乗ること約15分、何の変哲もない川沿いを進んでいく。
渓谷なんてあるのか? といささか不安になる風景である。

バスを降りるとすぐ横に川へと降りる道が付いて、緩やかな大きな岩盤一杯に流れが広がっている。
この岩盤をひたすような流れが滝なのだ。

粟又の滝
粟又の滝 (養老の滝)

 

滝壺付近まで降りると、なるほど滝だと納得できる。
20mほどの落差で100m位の長さを流れ、滝壺での幅は約20m、勇壮とはいえないが滑り台のような優しい表情の滝である。

夏には子供たちの良き遊び場と言った雰囲気。

養老の滝
養老の滝にて

 

周りが紅葉したら見事かなと思うのだが、紅葉は始まったばかり。

温暖な房州に似合う優しく穏やかな滝、設置されている遊歩道を小1時間散策してバス停へ戻った。

養老の滝
養老の滝

 

いすみ鉄道

上総中野駅から大原駅までカミさん念願の「いすみ鉄道」の小さな旅。

明るいカナリア色の車両が駅で待っていてくれた。

車両
いすみ鉄道の列車

 

車体にはムーミンの絵が描かれメルヘンチックな雰囲気が漂う。
何故ムーミンなのか分からないが、そんなことはどうでも良いのだろう。

いすみ鉄道
ムーミン列車

 

実際に乗ってみて他の中小鉄道との違いに気付かされた。

停まる駅では小学生やおばさんが当たり前のようにホームを掃除している。
待合室に花が活けられている。
周辺住民の方たちが自分たちの鉄道として応援しているのが感じられる。

運転手が沿線の説明をし、必要に応じて速度を落とすなど配慮している。
運転手のほか駅員や車掌はいない、運転手が全てを一人で行っている。

経営手法、経営方針が徹底されている印象で、自費で運転手になった人なのか好きで好きでたまらないと言った表情でテキパキ仕事をこなしている。まさに「好きこそものの上手なれ」である。

この日は平日で、名物レストラン列車は運行されていなかったが一度乗ってみたいという気分にさせられる。
同情だけでない、人の心をくすぐる経営の上手さを実感させてくれる評判通りの鉄道だった。

 

リゾートホテル

この日は外房大原付近のリゾートホテルで一泊。
外房のリゾートといえば鴨川とか勝浦が思い浮かぶが、大原なんて知らなかった。

古いリゾートホテルだったが、従業員は親切で純朴、料理もとても美味しかった。
お財布を叩いて特注したアワビの踊り焼きとお造りは、さすが絶品で二人共絶賛、まさに幸せ〜であった。

外房の海
ホテルから外房の海

 

朝目覚めると夜明けの気配。
生憎曇り空で日の出は見られなかったが、雲間から差し込む朝日が美しく神々しかった。

朝日
雲間から差し込む朝日が創り出した光が神々しい

 

 


 

成田山新勝寺

 

成田山
成田山新勝寺 山門

 

成田山新勝寺と言えば節分時に有名人たちが豆まきをしたり、お正月の参詣人の多さが話題になるなど、関東を代表する古刹の一つである。

それなのに日光東照宮と同様、私は訪れたことがなかった。
宗教無関心にも程があるの典型である。なので今回を機会に訪れてみようと思い立ったのだ。
案内人はもちろん房州生まれのカミさんである。

朝、大原を出て千葉からJR快速で成田へ。
午前中で人影もまばらな土産物屋が並ぶ参道を歩いて新勝寺へ。
山門前の駐車場には観光バスが何台も停まり、最近観光地でよく聞く甲高い声というより騒音が押し寄せてくる。

山門を入り、節分の豆巻きなどTVで見たことある本堂、鐘楼、塔などが立ち並ぶ境内へ。
東照宮でも感じたが、成田山の建造物も贅を尽くして建てられている。
ケバケバしい色使いの装飾がお堂や塔を覆っている。
もったいなくもありがたいと感じる人も多いのだろうが、私などは品位に劣ると思うだけだ。

塔
派手な装飾や塗装は見事だが・・・

 

「貴方はこういうお寺、嫌いでしょう。でも成田山は広くて裏にとても素敵なところがあるのよ」
さすが私の事良く知っている案内人、そそくさと本堂の境内から奥へと進んでいく。
急に騒音はなくなり、静かさと冷えた空気が支配している林に入った。

豊かな緑の中に紅葉し始めた木、緑から黄色・オレンジ・朱へと変化する葉のグラデーションがひときわ目を引く。

紅葉
紅葉初期の美しいグラデーション

 

暫く行くと大きな池、鯉が泳ぎ、庭師が計算し尽くした木々や石が配置された庭園だ。
何処から見ても見事な景観が創りだされている。

同じお金をつかうなら、派手な建造物よりずっと良い。
こんな所に質素な御堂を建て人生や幸せを考えるなら、宗教も魅力的だと思うのだが。

庭園
計算され尽くした庭園風景

 

成田山新勝寺には心落ち着く素敵な場所も存在していた。
案内人がいなかったら、嫌なところで終わっていただろう。
カミさんに感謝。

成田山で食べ物といえば、うなぎが一番だそうだ。
参道にある名の通ったお店では何人もの職人が客の目の前で鰻を捌き調理しており、お店の二階には例の他人のことなど気にもしない人達で一杯だ。

我が案内人、鰻屋の前を素通りして連れていてくれたのは「鴨せいろ」のお蕎麦屋さん。
蕎麦好きの親戚に連れられて何度か来たお店だそうだ。
なるほど蕎麦も香りよく美味しかったし、肉厚の大きな鴨は食べ応えあり美味かった。
客は日本人数組と欧州の若者カップル一組、日本酒を盃で舐めながらのはにかんだ笑顔が印象的だった。

 


 

ひょんな事から実現した1周間の関東の旅。

日光や房州の自然に触れ、それぞれに素敵なところがあると見なおした。
下町の生活の息吹や、都心の貴重な自然にも少しだけだが触れることが出来た。
同時に北国の豊かな自然・清々しい気候を改めて再確認もした。

これから先の然程長くない人生、他者への配慮を忘れず、自然を慈しみ、家族を愛し、地域に溶け込み、地道にコツコツ精一杯生きていきたいと改めて思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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