山陰・山陽を巡る旅  第3日目

 

天橋立、伊根の舟屋、浦富海岸、鳥取砂丘

2016.5.13(金)   晴れ


 

天橋立

 

 

天橋立

舞鶴の道の駅で気分良く目覚め、朝食を食べ準備をして宮津にある天橋立へ。
知恩寺そばの駐車場に車を停め、橋立の松林である砂州へのんびり歩く。

知恩院は立派な建物、特に多宝塔は松とのバランスもよく見事な佇まいを見せている。
ここのおみくじは小さな扇に記されていてそれを松の枝に結ぶのが作法らしく、どの松の枝にも小さな扇がイヤリングの様に揺れていたのが目を引いた。

多宝塔
知恩院多宝塔


「股覗き」で有名な展望台へは9時からしか登れないので、まず天橋立の松林を朝散歩。

さすがに古い松林で重厚、しかも手入れが行き届いて見通しも効くし明るいのが清々しい。
対岸まで約2Kmの砂州は観光客ばかりではなく、地域の人々の散策コースや高校生の通学路にもなっている、挨拶を交わしながら気持ちの良い朝散歩だ。

松林
気持ち良く整備された天橋立の松林

 

砂州の幅は数十mほどで右側に宮津湾、左側に内海の阿蘇海を眺めながら、静かな松林を進んでいく。
所々に案内看板があり、天女の衣を掛けた松だの、大正天皇お手植えの松、名水などの説明が書かれていた。

松
衣を掛けるのには丁度良いのでは?

 

与謝野晶子と寛の歌が刻まれた歌碑もある、与謝野寛の出身地なのだそうだ。ちなみに伊根に行く途中に与謝野町と言う所があり、この付近の有力な名主の家であったらしい。

時間を見計らって、展望台に登るべく引き返す。
砂州の宮津湾側では数隻の漁船が漁をしている、アサリやシジミでも採っているのかな。
砂州の砂は白砂、白砂青松とはまさにこのことを言うのだろう。

漁船
漁から戻る漁船

 

股のぞき展望台

9時になるのを待って展望台へ。
よく晴れていて、ポスターなどで見慣れた光景が目の前に広がる。
なるほど第1級の展望ではある。
ただ砂州を歩いた時にも気づいたのだが、俯瞰してみると砂州の砂が抉れてノコギリの刃状態になっている、美しい景観がいつまで続くのか不安を感じざるをえなかった。

天橋立
展望台から見る天橋立 右側の砂浜がノコギリの刃状態になりつつある

 

せっかく来たのだ、どんなものかと「股のぞき」をしてみた。

私の感性が低いのか、なんと言うことない同じ絵柄の景観が見えただけだった。
もっとも隣にいた男性は「すごいよ〜! これはやってみなければ」と興奮気味、感性が高い人は何か別物が見えるのかも知れない。それとも頭に血が上って、龍の頭や目玉が赤く見えたりフラフラ揺れて見えるのかも・・・。

股のぞき
股のぞき

 

何はともあれ、もう来ることはないだろうから記念写真を。

橋立

 

日本三景の天橋立を満喫し次の目的地である伊根に向かうため、再びリフトで下っていく。
この数分の景観もなかなかのものだ。

リフト
日本三景を眺めながらリフトで下る

 

伊根の舟屋

伊根に向かう道は比較的スムースで天橋立から30分ほど。
だけど、道幅が狭く神経を使う。ばあちゃんやじいちゃんが出てくるかも知れないと思うと、制限速度で走るのも怖いぐらい。
後続の車には迷惑をかけてしまったかも、ごめんなさい。

伊根湾
伊根の海岸

 

伊根ではまず湾内を遊覧船で一周、小さな湾を取り囲む様に立ち並ぶ舟屋の様子を眺めながらの30分だ。

舟屋
立ち並ぶ伊根の舟屋

 

漁民たちが船の上で忙しく作業をしている。
舟屋はまさに生きるための知恵、遺跡や観光資源ではなく今も必要不可欠で現役の住まいの一部なのだ。


舟屋の前で作業に勤しむ漁民達

 

伊根の高台に道の駅が設けられていて、そこから伊根の町が俯瞰できる。
小さな湾に漁民の集落がひっそり張り付き、自分たちの営みを守っている。

伊根
伊根の街並みが密集して固まっている

 

伊根の集落は決して観光地ではなく、住民の方々の普通の暮らしが当たり前の様に展開され、誰彼と区別することなく穏やかに丁寧に接してくれる人たちが多く住んでいる所の様に感じた。
伊根の舟屋。私はこういう町が好きだし、とても良い印象を受けたのだった。

 

浦富海岸

伊根から次の目的地である鳥取の浦富海岸までは、車で約2時間。
コウノトリで有名な兵庫県豊岡市を通り(残念ながらこの日は見かけることはできなかった)、後は日本海沿いに鳥取県へと抜けていく。

京都府から兵庫県、鳥取県と3県を駆け抜けると聞いて、カミさんが「そんなに遠くまで一気に大丈夫?」と心配そう。
「遠く感じるけど、札幌から日高の山に行くより近いんだよ」と言うと「エッ! そうなの?」

郷に入れば郷に従えの言葉通り、こちらに来たからには北海道感覚を捨てなければいけないと思う。
だけど道路の幅が狭いこと・曲がりくねっていること・交通量が多いことには、歳のせいかすぐに対応できない。
そんな場面に遭遇した時は、「スンマセ〜ン! 札幌ナンバーなもんで・・・」と呟きながら頭を下げる。

そんなこんなで日本海の風景を楽しみ、ドライブインで休憩しながら目的地の浦富海岸へ。
浦富海岸は国立公園、出来る限り自分の足で見て歩きしっかり脳裏に刻み込みたい。
この海岸、狭い様にも思えるが歩くとなれば広くて全てを見るわけにはいかない。
私たちは浦富海岸の中でも、鴨の磯地区と千貫松島地区の2ヶ所を重点的に歩いて見て回ることにした。

鴨の磯

まずは鴨の磯と呼ばれている地区、道路脇の小さな駐車スペースに車を停め細い道を辿って海を見下ろせる場所に出た。


浦富海岸・鴨の磯

 

強い日差しを受け青く輝く海、点在する険しい姿の小島、岩の砕ける白い波、岩に張り付く松、
小さいけれど明らかなリアス式海岸の輝きと小島が織りなす景観はまさに絵にも言われぬ絶景である。

小島
磯近くにこんな小島が点在している

 

鴨の磯地区だけでも幾つもの入り江が複雑に絡み合い、数多くの小島が浮かんでいる。

途中の磯で地元のカメラマンに出会った。私より少し年配、大きく重そうなカメラとレンズ、三脚を据え付けシャッターチャンスを狙っている。
「この洞窟越しの夕日と遊覧船が絵になる、あと30分か1時間も待てば船は来るから待ってみたらどうだ」と教えられたが、私の腕では残念ながら芸術写真は撮れませんとやんわりお断り。

洞窟
この洞窟越しに見る夕日が素晴らしいのだとか

 

芸術写真は無理な私でも、記録写真は撮れる。
なにせ、シャッターチャンスを粘り強く待たなくてもモデルさんが言う通りに来てくれるから・・・

洞窟

 

小さな入り江を巡るには絶壁を上り下りしながら廻らねばならず、かなり厳しいものがある。
でもあまりもの素晴らしさに二人とも根を上げることなく約2時間、目を輝かせて磯を巡り歩いた。

磯
絶壁に道が付けられている

 

千貫松島

鴨の磯から西へ浦富海岸への遊覧船の発着港がある所から、千貫松島方面への道が伸びている。

こちらも鴨の磯に劣らず美しくも凄い景観が広がっている。


洞窟の島や岩って、意外いに多いんだな

 

お天気が良いためだろう、海の色が青く冴えている。
それがこの海岸風景を素晴らしく感じさせる根源なのではないか。
日本海やオホーツク海と言えば鉛色の重く沈んだ色が頭に浮かんでくるが、こんなにも晴れ晴れとした冴えた色の時も多いのだ。


船で海から見る景観もきっと素晴らしいのだろう

 

さすが国立公園、恐れ入り屋の大感動である。


こちらも絵になる小島と松だ

かつて鳥取藩主がここ浦富海岸で舟遊びをした際「この岩付き松を我が庭に移した者には千貫のお金を与える」と語ったことから千貫松島の名で呼ばれるようになったそうで、大納得。

やはり国が名所だとか名品だと指定している物は、大したものだと改めて感じる。
昨日、いたく感動した彦根城も琵琶湖渡岸寺地区の観音様も国宝だし、今日の浦富海岸も国立公園だ。
私がパークボランティアをしている支笏湖も国立公園、日本の一級品なのだとの意識を高く持ってご案内したり解説したりしなくてはと改めて思った。

 

鳥取砂丘

今日は浦富海岸で終わりにして温泉へと考えていたが、時間はまだ3時前。
これなら鳥取砂丘にも行けそうだ。調べると車ならわずか15分だ。

砂丘まで行ってみるが、この日は気温が高くてとても日の高い内に砂丘を歩くなんて思っただけでゾッとする。
砂の彫刻といえば子供の砂遊びを連想するが、それを芸術品にまで高めた作品を展示しているミュージアムがあったのでそこで見物がてら時間をつぶす。

砂丘
鳥取砂丘の全景、暑くて歩いている人影もまばら

 

砂の彫刻、馬鹿にしていたけれどお金を取るだけあって大したもの。

砂の彫刻
高さ3m 横幅5m もある砂の彫刻

作品は作者の出身地なのか、南米インカのものが多かった。

彫刻
コーヒー摘みの光景

 

砂のミュージアムで時間を潰したが、まだ日は高い。
砂丘は日没時に楽しむことにして、それまで鳥取市内まで赴きショッピングや食事。
知らない都会だ、慎重に慎重にと自身に声を掛けつつ運転する。
それでもナビが少々古くて地図が最新のものでないため、新しい道や改修された所では間違ってあらぬ方向に行ってしまい焦った。

時間を見計らって砂丘へと戻り、夕日の砂丘をゆったり散策。
期待していた風紋は多少確認できることは出来たが、人の足跡だらけで予想していたのとは大違い。やはり砂丘の風紋は早朝でなければ、無理なのかも知れない。

夕日そのものは美しかった、だけど砂丘に登ると海岸から夕日を見ているのと大差ないし、砂丘を意識すると海が見えなくなるしで撮影ポイントを探すのに手間取る。
結局探せず、手短な観光ラクダ乗り場近くから夕日を眺めることにした。

夕日
日没までもう少し、手前に砂丘が広がっている

 

 

夕日
間も無く日没 もう少し高い所からだと海の表情も写せるのだが

 

 

夕日
そして日没

 

日没まで鳥取砂丘にいた私たち、この日の宿を神話「因幡の白うさぎ」の場所でもある道の駅「神話の里白うさぎ」に決め赴いた。
この道の駅、夜も営業しているレストランなどもあり利用者の利便を優先して考えられている使い勝手の良い道の駅であった。

 

 

オジロワシ花壇

.

 

・内海に舟屋ひしめく伊根に来て
         膨らむ樫花の匂いにむせる

・荒海の造り上げたる浦富の
         奇岩の松の姿いとしき

・日没を砂丘に待てば仕合せの
         極みと思う夕焼けに逢う

 

 

 

 

 





inserted by FC2 system