平標山から見る、仙ノ倉山(中央左奥)
2018.7.15(日)平標登山口 0505 送電線(1411m) 0550〜0600 松手山(1614m) 0635〜45 平標山 0800〜0815 コル 0825〜0930 平標山 0945〜1000 平標小屋 1035〜1100 登山口 1325 プロローグ
東北の旅・初日は、上越国境にある平標山と仙ノ倉山である。
7/14(土)午後、 大洗港に上陸した途端、あまりの暑さにクラクラし目眩を覚えた。
常磐自動車道・北関東自動車道・東北自動車道を乗り継ぎ、上越国境の湯沢までエアコン頼り。
休憩するパーキングエリアは軒並み36〜38℃、ラジオからは「命に危険を及ぼす厳しい暑さ」とか「熱中症の危険度と予防」が繰り返し放送され、聞いているだけで体の調子がおかしくなりそうだ。湯沢に到着後、夕方になっても気温は下がらず、食欲も湧かない。
とりあえず温泉に入り、冷たいうどんを啜り込み、街中より高い所の方が過ごしやすいだろうと平標山の登山口駐車場へ向かった。
快晴なれど・・・
登山口駐車場で目覚めるとお天気は快晴。 でも朝から暑い、それも蒸し暑い。
涼しい北海道の気候に慣れきっている私、果たして山歩きなど出来るのだろうか?様子を見ていると、普通に山登りを楽しむ様子で何人もの人が出かけていく。
「そうか、この程度の暑さはこちらでは普通のことなのだ。」と理解して、出発を決意。選択したコースは、登山口から松手山(1614m)、平標山(1984m)、次いで稜線を歩き仙ノ倉山(2026m)へ。
下りは平標山に戻ってから山小屋を経由して登山口へ戻るルートである。道は取り付きからかなり厳しく急傾斜、樹林帯の中で見通しは効かないし風は通らない、おまけに気温が高いので、たちまち汗まみれ。
厳しいコンディションに気持ちのテンションは上がらない。1411mで横切る送電線が見え始め、視界が一部開け山並みが見えてきた。
でも何処が何処やら、さっぱり見当もつかない。
見えてきた南西方向の山並み
送電線を過ぎ松手山までも急な斜面が続き、慣れぬ蒸し暑さと熱中症の不安とが相まってテンションは下がりっぱなし。
やっと松手山に着いた時は、止めて降りようかと思ったぐらい。松手山から眺めると、樹林帯は概ね終わったようだが1870mのピークに阻まれて平標山を見ることはできない。
松手山からの眺め 平標山は左手前の1870mPに隠れている
気力だ! 根性だ!
松手山からしばらくは平坦な道、視界も開け西側の山並みが見えてきた。
グルッと見渡せば記憶にある山頂部が平らな山、苗場山(2145m)である。
苗場山 (2145m)
大きなスキー場が何か所も見えていて、ゴンドラやリフト、ホテルなどが山の地形を変えてしまうほど幾つも作られている。
道は1870mPまで再び急傾斜となるが、そこからは緩やかになって平標山へと続いていく。
何時もならルンルン気分で歩く地形なのだが、何となく体調が思わしくない。
ボォ〜として足に力が入らず踏ん張れないし、何より気持ちが盛り上がらないのだ。
何でもない平坦な道なのに、何人かの人に追い抜かれる。まいったな〜! どうしたんだ? これが熱中症というものか?
気力だ。根性だ。と自分を励ますが、どうにも思うようにならない。昨日、ラジオで熱中症の対処法がしつこいほど流されていたのに思い出せない。
エアコンを躊躇わない、水分の補給をこまめに・・・、だったかな?そういえば汗だくなのに水をほとんど飲んでいなかった。慌てて補給する。
道端には黄色のキンコウカが数多く咲いて励ましてくれているが、気持ちは下がりっぱなし。
キンコウカ
天上の楽園
歩き始めて3時間、結局気持ちの高揚もなく嬉しさも感じないまま、平標山に到着した。
山頂はかなりの人で賑わっている。
山小屋に泊まっていた人たちなのだろうか。そっと目立たぬ所に腰を下ろし、お仲間に入れてもらう。
日陰の全く無い山頂、容赦ない日差しがたまらない。ただ、すぐ先に見える仙ノ倉山の美しくなだらかな山容が優しい。
仙ノ倉山への稜線
優美な仙ノ倉山、その左に見えているのは一ノ倉から茂倉岳にかけての山並みか。
仙ノ倉山まで行けば谷川岳付近の山並みもはっきり見えるかも、重い腰を無理やり上げて稜線に足を踏み出す。しかし、平標山と仙ノ倉山とのコルまで降りてきて足が止まってしまった。
たおやかで優美な景観が広がり、風が通り、花が咲き、アキアカネが群れ飛ぶ平和な光景。まさに天上の楽園。
立派なベンチがあり腰を下ろし、ぼんやり景観を眺めながら、花を愛で、涼風に癒される。
振り返れば、平標山が穏やかな姿で見下ろしている。
コルから振り返る平標山
霞がかった山々の遠景も、ぼんやり眺めていると色々な表情を見せてくれ、飽きることはない。
仙ノ倉山とのコルから、土合方面の山並み
花も数は多くないが、エゾノシモツケソウ・フウロなどが可憐な姿を見せている。
エゾノシモツケソウ
フウロ
そしてアキアカネの大群が風に逆らい空中に浮かんでいる。
彼らはいったい何を考え何を思ってひたすら飛んでいるのだろう?
花の蜜を吸ったり食べ物を探しているのでもなく、ただひたすらに風に逆らい空を舞っている。ともあれこの日初めて気持がなごみ、幸せを感じたひと時だった。
今日の山頂
1時間以上、気持ちの良いコルでのんびり、心穏やかに過ごすことができた。
すっかり、仙ノ倉山まで行きたいという気持ちは無くなった。「今日の山頂は、此処としよう」何のおごりもてらいもなく、そう思えた。
登り返した平標山には、先ほどにも増して多くの人たち。
一緒になって再度山頂からの景観を楽しみ、下山にかかる。
苗場スキー場の奥に見えるのは、苗場山から続く佐武流山だろうか。
平標山から苗場スキー場 佐武流山方面
山頂から南に降りる道の先には平標小屋の赤い屋根が見えている。
のんびりゆったりした気分で降りていく。
中央付近に赤い屋根の平標小屋
平標小屋付近からはエビス大黒と思われる険しい山容が垣間見られ、谷川岳近しの印象を受けた。
小屋付近から見る、左に「エビス大黒の頭」 遠くは武尊山か?
平標小屋はこじんまりした小屋だが、キレイで使いやすそうな小屋。
管理人サンたちも親切だ。
引かれている冷たい水も、使い放題。有難かった。平標小屋から尾根を下り、登山口へ。
尾根を下りきってもう一息だと思っていたら、そこからの林道歩きが予想外に長く、暑さとの戦いと相まって辛い時間であった。ただ一つの砂防ダムの湖面が水鏡となり、景色を写し込んで美しかった。
砂防ダムに堰き止められた水が鏡となり、木々や風景を写し込んでいた。
東北二人旅の初日は、すっかり暑さにやられてしまった。
想像も出来なかった、想定外の暑さ。
多分、熱中症の一歩手前に陥っていたのだと思う。この異常気温は当分続くと予報されている。
果たして予定の旅を続けられるものか、正直不安である。自然には勝てないし、体力も若い時とは違う。
決して無理をせず、状況に応じた判断をせざるを得ない。
厳しい気象状況が思い出になるよう、しなやかに身をかわし楽しみ笑いながら旅をしたいと思う。