谷川岳 一ノ倉沢全景
昨日、まだ本州の暑さに順応していない体で猛暑の仙ノ倉山に立ち向かい、あっけなく敗退を余儀なくされた私。
今日はそれを教訓に、山歩きは諦めて山々の姿を眺め歩きながら、体を暑さに順応させていこうと思いたった。登る予定の谷川岳、歩く代わりにその勇姿を麓の谷筋から存分に眺めようというものだ。
さらに時間があれば、予備としていた妙義山の鋭い山容をも眺めてみたいと思う。
早朝、水上町の谷川岳登山口を目指す。
谷川岳
ルート
谷川岳の立体駐車場から川沿いに北西に伸びる林道(車両進入禁止)を利用して、マチガ沢・一ノ倉沢・幽ノ沢・芝倉沢の景観を夫々の出合いから存分に眺めようというルート。
整備されたトレッキング道を歩くだけなので、軽装でも十分だ。
谷川岳登山指導センターから、日に何便か専用車両による見物ツアーも開催されている観光客向けのルートでもある。
マチガ沢
谷川岳登山指導センターで入山届を提出し、林道を歩き出す。
道の周囲はブナ林が続いていて静かで気持ち良い、谷川岳にこんな立派なブナ林があったのかと再認識させれる思いだ。
谷川岳山麓一体が美しいブナ林で覆われている
30分も歩くと、最初の出合い「マチガ沢」
学生時代、このマチガ沢で雪渓訓練を受けたことがあって懐かしく思い返される。
かと言って、どの辺りで訓練したのかは全く記憶にないのだ。
マチガ沢出合いから
マチガ沢から正面に見える辺りが谷川岳の山頂付近だった筈だが、雲が多く特定できなかった。
マチガ沢出合いから谷川岳
マチガ沢出合いから巌剛新道という結構厳しい道の登山道が伸びている。
丁度、相前後して歩いて来た中年男性がこの道を利用して登るという。
「お気をつけて」と声をかけた。さらに30分ほど歩くと・・・
一ノ倉沢
日本三大岩壁の一つとされている「一ノ倉沢」が圧倒的な迫力で迫ってきた。
一ノ倉沢 全景
クライマー憧れの岩壁、死の岩壁とも言われ、墜落死した登山者を収容できず自衛隊に依頼してロープを銃撃して遺体を収容した事件などで一躍有名になった岩場でもある。
雪渓の残る沢筋の両岸は、眺めるだけでも恐ろしい迫力満点の岩が屹立している。
一ノ倉沢 南面の岩稜
一ノ倉沢 北面の岩稜 この岩稜がロッククライマー達の聖地
私などには触れることもできない(触れようとも思わないが・・・)断崖絶壁、衝立岩とか烏帽子岩と名付けられ様々な困難なルートがあるらしい。
雲に隠れているが、一ノ倉沢の正面奥は国境稜線になっていて、谷川岳と一ノ倉岳の中間部付近の筈だ。
一ノ倉沢出合いを少し過ぎた林道に大型のテントが張られていて、クライマーと思しき人達7・8名が朝食をとっていた。
多分、一ノ倉沢の岩壁で登攀訓練をしているのだろう。
「注意して楽しんでくださいね」と声をかけて通過させてもらった。
切り立つ岩壁の厳しさと裏腹に、林道を覆う木々の緑は朝日を受けてキラキラ輝き美しい。
厳しさと優しさ、緊張とリラックス、相反する要素が渾然と入り混じっているのも、谷川岳の魅力なのだ。
ブナ林の木漏れ日
幽ノ沢
一ノ倉沢から幽ノ沢にかけての林道脇の岩壁には、遭難したクライマーたちの慰霊のプレートが点々と打ち付けられていた。
剱岳馬場島登山口にも多くの慰霊碑やプレートがあって、慰霊と祈りの場となっている。
是非ともその意義を忘れずに、自己の限界に挑戦しつつも身の安全の確保だけはしっかりやってもらいたいものだ。
幽ノ沢出合いからの眺め
幽ノ沢出合いからは、一ノ倉沢で感じたほどの迫力は感じなかった。
ただ沢の正面奥に、一ノ倉岳と思われるピークを確認することができた。また幽ノ沢周辺には、岩穴状のビバークも出来る窪みが幾つもあると聞いていたので、探してみたら本当に一夜を過ごせる岩穴があった。
慰霊のプレートが打ち付けられた岩とその奥にビバークできる岩穴が
岩穴の近くには、ビバークを余儀なくされた人の気持ちを癒すためではあるまいが、アジサイが淡いブルーの花を咲かせていた。
淡いブルーが美しいアジサイの花が
芝倉沢
幽ノ沢をすぎると傾斜が幾分きつくなり、「道が荒れているので通行注意」の看板。
と言っても、僅かに道が流されている程度。やがて、最初に滝が目に飛び込んでくる芝倉沢の出合いに到着。
芝倉沢出合い
雲が切れ、芝倉沢の全景がスッキリ見渡せる。
奥の国境稜線の山は、どの辺りなのだろうか?
芝倉沢
雪解け水が小さな流れと滝をつくっている。
その水のきれいなこと、思わず一口飲んで見た。
芝倉沢の小滝
反芻しながら
谷川岳の主要な沢の出合からの景観は、初めて訪れた私の感性を痛く刺激し満足させてくれた。
芝倉沢から同じ道をたどり引き返す。
夫々の沢の出合から、再び景観を眺める度にその迫力に圧倒される。美しく静かなブナ林の道や谷川岳東側の山並みも印象深く、訪れて良かったという思いに浸ることができた。
明るく静かなブナ林の道
谷川岳東側の山並み
妙義山
昼過ぎに谷川岳駐車場から一路、妙義山へ。
渋川、前橋、高崎を経由して走る地点の気温は軒並み38〜39℃を示し、見るだけで頭がボォーとしてくる。
そして晴れているのだが、スモッグやヘイズが溜まっているのか霞んで見通しが全く利かない。
途中通る、赤城山や榛名山もその姿を見ることはできなかった。
逆光のシルエット
高崎から進路を西にとり、妙義山を目指す。
近づくにつれ、ぼんやりした奇っ怪な形のシルエットが見え始めた。
まずは近いところからと、市立美術館が建つ丘の上に。
妙義山
午後4時近く、西日で逆光となり岩肌の細部を見ることはできないが、黒い影となったシルエットが印象的。
妙義山
妙義山神社からの道
近くにある妙義山神社にお参り。
黒漆塗りの建物は荘厳で、日光東照宮を思わせる雰囲気を持っている。
妙義山神社
案内表示を見ると、神社から関東ふれあいの道(中間道)が通じている。
今は道路崩壊のため通行禁止になっているが、第2見晴までは行けるという。日没までには戻れそうなので、半ズボン・素足にサンダルという褒められたものではない格好だが行ってみることに。
15分程の第1見晴は、先程居た美術館など、里の景観が見られるだけ。
第1見晴からの展望 手前が市立美術館
それではと、さらに25分ほど歩いて、第2見晴へ。
ここは先程の美術館の丘より近く、大きく妙義山の西側半分である金洞山を眺めることが出来る。
妙義山 西側の金洞山
第2見晴からは、真上に妙義山白雲山の岩肌を見上げられるが、この時は日没寸前で暗く写真にはならなかった。
急ぎ足で妙義山神社へ引き返し、暗くなる前には車に戻り、温泉に直行した。
朝焼けの妙義山
シルエットの妙義山だけでは物足りないと、翌朝日の出前に美術館の丘に行き、朝焼けの妙義山を期待する。
空が深い青から薄い青へ、黒黒とした岩肌が少しづつ明るくなり、一瞬赤く染まった。
「オォ〜!」思わず見とれてしまう色の変化。
写真を撮るのも忘れてしまうほどだった。
朝焼けの妙義山 白雲山
朝焼けの赤色は、またたく間に薄れていく。
1分後に撮影した画像と比べると、その違いは明らかである。
朝焼けの妙義山
東北地方山見の旅 第2日目は谷川岳と妙義山を麓から眺め歩く旅となった。
体は楽で、それぞれの山の特徴や素晴らしさを堪能することが出来、満足している。
でも、体温を上回る異常な気温にはとても慣れそうもない。
かと言って、旅を中止するもの忍びない。
体のコンディションと相談しながら、臨機応変に対応して楽しんでいこう。明日からは、カミさんも旅に加わる。
彼女の体調もしっかり考えてあげねば・・・。