|
古き信仰の道
|
この道で良いの?
登山口へ向かっていると、短い距離に「大石神社」「赤倉神社」と神社が二つも建てられている。
どんな関係があるのか分からないけれど、この地域は信心深いところなのには違いない。
赤倉神社
神社横の空き地に車を止めさせてもらい、歩き出す。
小沢を渡ると、更に赤倉神社の建物。拝殿やその他の建物が幾つもあるようで一般的な神社とは形が異なる感じ。緩やかな林道のような道が続いている。
道路脇には簡易電柱が立ち電線も張られ給電されているようだ。
15分近く林道のような道を歩くが、山道の感じはしない。
道を間違ってしまったかも? とちょっぴり疑心暗鬼。辛抱してさらに約5分、小屋が数軒見えてきた。
これも赤倉神社に関連したものらしい、行者小屋か。そして小屋群のすぐ上側に、1番観音様が祀られていた。
1番観音像ごく最近お参りされた形跡があり、現在も信仰が盛んであることが分かる。
ここから本格的な山道となり、尾根に取り付いていく。
ブナの美林に癒やされて
まだ歩きだして20分ほどなのに、暑く汗もかいている。
気温は朝でそんなに高くはない、湿度が高く蒸し暑いのだ。
樹林帯で虫も寄ってくる、虫よけ剤を吹き付ける。観音様は短い距離で祀られ、その横を頭を下げながら通過させていただく。
6番の観音様
周囲はブナの美しい林となり、明るい緑が美しく癒やされる。
此処のブナは、木肌が白いのが特徴のようだ。
明るく美しいブナの美林
9番の観音様は道の真中に居られ、登ってくる私達を見守ってくれているよう。
ありがたく頭を下げる。
端正なお顔立ち 9番の観音様道は落ち葉の積もった土の道から、次第に石混じりの道へ。
ゴロゴロ岩を乗り越えて
伯母石と書かれた台形の石がある場所へ。
1番の観音様から概ね1時間だ。
気温も上昇とても暑く、蒸し蒸しする。
すでに二人共汗びっしょり。水分のこまめな補給を心がける。
伯母石と10番観音
伯母石で道は左右に別れ、どちらを行っても少し上で合流するそうだ。
私達は右を選択、大きなゴロゴロ石の中を通過していく。この辺は大きな岩稜の下側になっているようで、ゴロゴロ岩が連続している薄暗い地帯を越えるのに10分ほど岩を登ったり降りたりしなければならない。
やがて左から道が合流してくれば、岩稜地帯はおしまいだ。斜度が強くなり、暑さはますます厳しく、喘ぎながらの一歩一歩。
木々で見通しも効かず、耐えるしかない。
観音様に出会う度に、お参りする素振りで休憩だ。
15番の観音様
頭上の空間が切れてきたような感じ。
「もう直ぐ、稜線に出そうだよ。頑張って!」
鬼の遊び場?
樹林が切れ、空が青い。
斜度が緩み、平になった所に何体もの観音様と一匹の鬼
鬼の土俵
建てられていた小さなお社が、風で吹き飛んだのか近くの斜面に転がり落ちていた。
休憩しながら、鬼が観音様たちを守っているというより観音様に見守られ遊ばせてもらっているみたい。など勝手に想像。
観音様何体かをお祀りするため登ってきた信者さんたちが、きつい登りに疲れ、ようやく平らになったこの地にまとめてお祀りしたと言うのが本当かな。私達も暑さと湿度でぐったり。鬼に負けてダウンさせられた邪鬼か。
普段は飲んでも不味いスポドリのゼリーがとても美味しく感じられる。
カミさんも一気に飲んでしまった。二人共少し熱中症気味なのかな?15分も休んだら、少し元気が出てきたみたい。
体調を見ながらもう少し行ってみよう。
コメツガの森
少しの間、斜度が緩みコメツガが群生している道をゆっくり登っていく。
コメツガの小さな球状の果実が沢山付いていて可愛い。再び急な登りになる、途端に足が重くなりちょっとした段差なのに一気に上がれない。
「大丈夫? がんばろう」頻繁に声を掛け合いながら、意識してゆっくり登る。谷を挟んで対岸の尾根が見えだした、大きく崩れている部分がある。
大開きとか赤倉キレットとか、呼ばれている所だろう。
大開き22番と24番の観音様が隣り合って鎮座されている。
厳しい登りは更に続く。所でこの赤倉コースには、合目表示がない。
観音様の番号で慣れている人は位置がわかるのだろうが、初めてや慣れない者にはおおよその位置もわからない。
普段は合目表示のありがたさなど感じないが、やはり登山者にとっては大事でありがたいものなのだ。
カミさんの様子がおかしい
最近は私より体力あると内心感じているカミさんだけど、息遣いが荒いというか不規則になり、少しづつ離れだした。
待ちながら様子を見ると、苦しげでもあり、目の焦点が合っていないようにも見える。
私も暑くて苦しいがこれは明らかにおかしい。水を飲ませトマトを食べさせ、しばし休憩。カミさんを休ませている間に少し登って見渡すと、もう少しで稜線の空間が切れている気配。
彼女のところまで戻り、少し上に平らな所がある、そこまで行って休もうと元気づける。カミさんを先頭にゆっくりゆっくり登っていく、がんばれ!
傾斜がなくなり、空が見え、積まれた大きなケルンが見えてきた。
今日の山頂は、此処にしよう
ザックを降ろさせ、座らせる。日陰はないけど、仕方ない。
食欲はないと言うが、グレープフルーツを出す。
美味い。二人であっという間だ。
パンはとても食べられない、口の中でパサパサのお団子になってしまい飲み込めない。
グレープフルーツをもう一つ、オレンジも、果物だけが美味しく喉を通っていく。
もっと持ってくれば良かった!大きく姿を見せている岩木山を眺めながら「長い道だったけど、此処まで登ってきたよ」
15分もすると大分落ち着いてきた。
赤倉御殿から見る岩木山(奥右) 左はC1457mP
すぐ先のC1457mPの右裾を巻いて、ほぼ平らな道が厳鬼山の裾まで伸びている。
そこが仏の道の終わりで正観音がある所。多分10分もかからない。此処は1433mの赤倉御殿と呼ばれている所だ。
御殿と言う割にはケルンしか無い、祠は風に飛ばされたらしく少し離れた場所に転がっていた。ここの観音様なのだろう、ひっそり石組みの横に置かれている。
赤倉御殿に置かれていた 観音様
正観音からは岩木山への最後の壁が立ちふさがっている。
岩木山をバックに、元気を取り戻したカミさんと記念撮影だ。
赤坂御殿から、この日の記念に
「今日は此処を私達の山頂としよう。」
「行かなくて良いの? 待っているわよ」
「いいさ。二人共よく頑張ったし、限界に近いだろ? これからは体力相応の所が私達の山頂さ。」多分二人共、熱中症に近い状態に陥っていたのではないか?
ボォ〜として思考が途中半端、足に力が入らずバランス感覚も不安定だった。
あれ以上無理をしていたら、本当に動けなくなってしまったかもしれない。途中の地点でも、限界を感じたら潔く、自分たちの山頂として下山しよう。素直にそう思った。
下山も厳しい暑さの中、正直大変だった。
膝を痛めているから、段差の大きい所は登るより時間がかかる。
約2時間半、30分置きに休み、水分を切らさないよう、ゆっくり慎重に降りた。下山後は近くの温泉で夕方までお昼寝。
ようやく食欲が湧いてきた。
ちなみにこの日、岩木山赤倉コースを歩いたのは私達夫婦二人だけだった。
平日のせいなのか、異常な暑さのせいなのかは分からない。
こんな日に歩いた私達が、異常だったのかな?
オジロワシ歌壇
・月眺め月に照らさる車中泊 夫の寝息に息を重ねる
・岩に頼り菩薩の像のおわします 膝を選んだ今日の山頂