|
雲上の楽園道
|
雲海を見ながら気持ちよく歩く
小さな集落を通りながら農作業に出る人たちと朝の挨拶、「気をつけて」「頑張りなさい」の声が素直に心に染みて嬉しい。
朝霧の山村風景
標高が高いせいか平地では終わりかけている梅が丁度見頃、色と香りの歓迎に浮き立つようだ。
満開の梅
雲海が晴れ始め、遠くに雪山も見え始めた。
四国でまさか雪山を見るとは想像もしていなかったので、びっくりすると同時に見とれてしまう。
雲海が晴れ始め、 雪山も
鮎喰川が右下に見え出し、阿川地区の阿野と言う所へ出た。
鮎喰川は渓流とは言わないが、変化のある見ていて飽きない川で親しめる。
美しい鮎喰川沿いの道、咲いている野の花を楽しみながら歩く。
スミレ
広野という所辺りから単調な車道歩きとなると同時に交通量が多くなってきた。
鮎喰川の右岸を行くこの県道、道幅も狭く怖い。
特にカーブ地点では多くの車が内側に切れ込んで来て、私達を見つけあわてて避けていく。
運転している人も驚くだろうが、歩いている人は本当に恐怖を感じる。
またダンプなど大型車が来ると道端ギリギリまで避けてもすれすれ状態、日本の道路事情に関しては色々言われているがまだまだ整備の必要な所もあるな〜と実感した。「車より熊の通る方が多い」なんて陰口を言われるような高速道路を作るのに血道を上げている政治家の皆さん、こういう生活に密接した住民の皆さんが本当に困っている道路の事を考えて下さいな。
10時半頃「やすらぎ」というレストランがあったので、少し早いけれどお昼ご飯にする。
ビーフカレーを食べながら、靴を脱いでいると体がリフレッシュするような感覚。
レストランのご主人や奥様もゆっくり休んで行きなさいと優しく応対してくれとても感じが良かった。ここから13番大日寺までは約5km、1時間の行程だ。
途中、右手の山の中腹に大日寺の奥の院である建治寺が見えたが、遠くて訪ねる気にはなれなかった。
大日寺に近づき右手に大きなこんもりした森があったので、てっきりそこが大日寺だと思ったら、そこは一宮神社、大日寺は神社の道路を挟んで反対側にあった。
今日は土曜日なので参拝の人で混雑しているのではと思っていたが意外に少なく、境内は静か。
山門を入ると正面の観音様の像が目につく、「しあわせ観音」と言うのだそうだ。
今日初めてのお参り、静かにゆっくりお参りする。
しあわせ観音の前で
大日寺の境内で焼山寺へ前後して歩いた鹿児島のバイク姉ちゃんなど5人の方と一緒になった。
彼らは玉が峠を越えず、昨日は神山温泉で泊まったとの事。大日寺から井戸寺までは地域的に纏まっていて「五社参り」と称して1日でお参りされる事も多いそう。
その通り、次の14番常楽寺、15番国分寺まではわずかな距離だ。
平地の住宅地に近接している場所にあるせいか、いずれのお寺もこじんまりしている。常楽寺は自然の岩盤の上に建てられ、山門から本堂まで岩がむき出しになっている。
ここは「流水岩の庭」と呼ばれているそうだ。
常楽寺の岩盤
国分寺、かっては大伽藍を持つ大きな寺院だったそうだが、兵火で焼け現在の姿になったとか。
お庭が素晴らしいと有名で、是非見て行くように言われていたが、あいにく工事中で見学できなかった。
国分寺山門から境内
16番観音寺に近づくにつれ、徳島市の郊外・新興住宅街の気配が強くなり人も多くなって来た。
雰囲気が変わり、明らかに無視したり、引っ込んだり、お遍路に良い印象を持っていない感じがする。
まあ、遊んでいると思われても仕方の無い事をしているのだから仕方ない。
通して頂いていると頭を下げながら通過する。16番観音寺の門前で初めて「乞食遍路」というのだろうか、まだ若い男性が遍路姿で物乞いしているのに出会った。
考え方も生き方も人それぞれで良いのだろうが、精一杯努力して生きるのが人としての生業ではないだろうか?
「そんな物乞いなんて止めて、働けよ」と声をかけたくなった。観音寺の境内で焼山寺への道でお会いした、80歳代の男性と再会。
やはり足を痛めてタクシーでここまで来たとの事。
お話を伺うと、旧軍の飛行兵で85歳、60歳の頃から歩き遍路を始め今回で21回目との事。
家に居てもする事は無い、遍路に出れば気の合う人や話し相手になってくれ、友達になってくれる人が居る、そういう出合いが楽しいのだとおっしゃる。
聞き役になって話を聞いていると、納め札を交換しようとおっしゃる。
私達の白い納め札を差し上げると、裏にお名前が入っている赤いお札を下さった。
どうぞ、お元気でと声をかけお別れした。
国分寺
17番の井戸寺、ここも小さく纏まっていてこじんまりしている。
有名な井戸があり、カミさんと覗き込んでみる。
しっかり映っていて一安心、迷信と判っていても気になりドキドキするものだ。
納経所にぼけ封じのお守りがありどうしようか迷っていると、お寺の方が「だんだんぼけるのは仕方が無い、お二人はどちらが先でしょうね?」と聞くから「それは競争ですよ」と皆で大笑いした。
観音寺の山門今日のように短時間のうちに5カ所ものお寺を回ると、記憶がすぐに薄れていまう。
事前に勉強してゆっくり時間をかけ良く見なければ何にもならないと法輪寺で諭されたが、それは本当である。
でも、歩き遍路をしていると先に行く事にとらわれておろそかになってしまうんだよな〜。
明日は遍路旅に出てから初めての休足(息)日、ゆっくりレンタカーで遍路道から外れたお寺を見に行く積り。
本当なら今日は井戸寺の付近で泊まるのが常識的なのだろうが、明日を楽しむため徳島市街地まで頑張る事にした。
井戸寺で靴を脱ぎ点検したが、疲れているけど足にマメは出来ていない。
しかし午前中の清々しい道と違って、繁華街の喧噪とした中の道、冷ややかな視線、冷笑、無視、こんな所を歩く意味があるのだろうかと何度思った事か。
肉体的のみならず、精神的にも疲れ果て、何度タクシーを止めようと思った事か。
ここは地獄道。わずか4日間だが徳島県を歩いて、遍路道にも色々あるなと感じる。
- 藤井寺から焼山寺までは変化に富み足にも優しい「天上の楽園道」。
- 玉ガ峠から鮎喰川までの「桃源郷道」。
- 県道の「恐怖道」。
- 市街地の「地獄道」。
四国はまだまだ広い、これからどんな遍路道に出会えるだろうか?
これまで顔なじみになった遍路仲間も10人ほどできた。
その人の実体は知る由もないが、人それぞれ遍路それぞれである。
- ホラ貝のプ〜プ〜おじさん夫婦
- 大阪の元飛行兵だった気力満点、85歳のおじいちゃん
- 秋田の厳ついが面倒見の良いガッシリ男
- 鹿児島の元気はつらつバイク姉ちゃん
- 誰とも口をきかず、ただひたすら黙々と早足で歩くスタミナ夫婦
- 横浜の私と同年輩で足も強い、誠実・実直そのもの男性
- 北海道の別格霊場全て回るという、張り切り男
- 千葉の少し大きな風呂敷を広げる癖のある明るい男性
皆、良い人達だ。
そして、これからの出合いも大切にしたいと思う。今日は本当に疲れた、グッタリだ。
カミさんはもっと疲れた筈だ、もう少し余裕のある計画にしなければと思う。
ホテルに着き部屋に入ると、カミさんは外に出る気力も無いと言う、風呂に入り眠ってしまう。
ゆっくりしよう、明日は休息日なんだから・・・。
|