舎心ヶ嶽のお大師様
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登山モード
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一度舗装された林道を横切り、溝状になった凹んだ道を標高差100mほど登ると視界が開け一休み。
ここからも取り付き斜面ほどではないが、結構な斜度の坂が緩む事無く続いて汗が噴き出してくる。
やがて山頂稜線が見えだし、やれやれと思うと同時に丁石の数字が減って行くのを楽しみに登って行く。出発して約1時間、鶴林寺の山門が見え左側から舗装された参道が合流してくる。
汗が気持ち良い。
鶴林寺山門
「ふれあいの里 坂本」の人達が勧めてくれたこのルート、結構ハードな登りであったが1時間弱の頑張りで登りきれるし、他のルートのように歩幅の合わない階段で苦しむ事も無い、良く手入れされていて歩き易いと思う。
鶴林寺三重塔
時間が早いせいか、奥深い山の中、杉の大木に囲まれた境内はとても静かで落ち着いた雰囲気。
鶴林寺と鶴の名が付くだけあって、山門にも本堂にも鶴の像が置かれている。
広い境内には大師堂、六角堂、護摩堂などが並び、その奥の石段を上ると本堂、三重塔、鐘楼などが整然と配置されていた。
本堂の左右にある鶴の像
汗の引くのを待って、人影のない静かな境内でお参り。
気持ちが引き締まる感じだった。
太龍寺へは鶴林寺から一旦500m下り、再び登って行く事になる。
この下り、半分以上が階段坂、足に来る衝撃はかなり激しい。
山道の崩壊防止の意味であれば仕方ないが見る限り、山道の整備とは階段道にするのだと言う固定観念に縛られて作られたような感じがする。
無駄な経費と歩く者への負担は出来る限り小さくしてほしいと思うのだがどうであろうか?
江戸時代の道標も残る
40分かけて下り、那賀川に架かる水井橋を渡る。
降りてくると周りはみかん畑、農家の方々が手入れをされていた。
水井橋からの那賀川
水井橋からは小さな沢の左岸の簡易舗装された作業道のような道を1.5km程緩やかに登って行く。
この間に単独の男性二人を抜かせてもらう、一人は70歳代後半と思われる方でゆっくりだが確実なペースで歩いておられた。
道が沢の右岸に渡るとすぐに登山口の標識、ここから太龍寺まで標高差は約300m、斜度もそれなりにあり多くが階段道だがゆっくり着実に足を運べば高度はグングン上がる。
登山口から30分も頑張れば山頂稜線もはっきり姿を現し、舗装道路の参道に合流した。
カミさんも快調で一度も休まない内に山門到着である。
太龍寺山門
山門に入っても参道は500m近く続く、両側には太い杉を主体にした鬱蒼とした林、威厳さと迫力を感じさせられる参道である。
木々の間から北側に先ほどまで居た鶴林寺を遠望する事が出来た。
太龍寺から鶴林寺を遠望する
山の山頂部全体が太龍寺の境内となっており、護摩堂、六角堂、納経所がある下段、鐘楼のある中段、本堂、大師堂、弁天堂、多宝塔のある上段と配置され荘厳な気を感じさせられ、黙って額ずくしか無いような雰囲気である。
まさに名刹とはこのようなお寺のことを言うのであろうか。
太龍寺
本堂
何か神秘的で背筋を伸ばさざるを得ないような気持ちになり、心から時間をかけお参りさせて頂いた。
多宝塔
境内で、既に歩いて88カ所を回られたと言う女性がカミさんに「室戸岬まで行けば後は大丈夫よ、頑張って」と話しかけて来た。
歩いて回った後、印象に残ったお寺を車でもう一度お参りしているのだそうだ。
カミさん曰く「室戸岬までって、想像もできないわ」と。何と弱気な事を。
大師堂
納経を済ませ、宿で作ってもらったおにぎり弁当1人分を分け合って早お昼にする。
2山登って来たせいで、ただのおにぎりがとても美味しい。
お水も太龍寺で使用している分は全て山からの湧水でまかなっていると聞き、残り少なくなったペットボトルにたっぷりと補給させて頂いた。納経所の方に舎心ヶ嶽からふだらく峠を経て下るルートの状況を尋ねると、通行不能だから行ってはならないと強く言われる。
途中で追い抜かせてもらった老齢の方からは「貴方達なら何でも無い、大丈夫ですよ」と言われたが、万一の場合ご迷惑をかけてもいけないと、舎心ヶ嶽を往復して一般下山道から降りる事に計画を変更する。舎心ヶ嶽へはロープウェイ乗り場を経て15分位の登り、道の両側には四国88カ所のご本尊が順番に置かれていた。
舎心ヶ嶽に着くと左側が切れ落ちた岩の天辺に座っておられるお大師様の後ろ姿が見えている。
ロープが垂らしてある簡単な岩を3mも登れば、座禅を組んでおられるお大師様の下を通って正面に回り込める。
お大師様の正面には高野槙の枝が供えられ、向いておられる正面には急激に下る稜線が、左下にはロープウェイの駅舎が見えていた。
舎心ヶ嶽、お大師様はこの方向を見ておられる
舎心ヶ嶽から戻り、もう一度境内を散策、納経所横の龍の天井も拝見した。
素晴らしさに去りがたく、いつまでも居たい気分を払いのけ、下山する事に。
山門に一礼しながらこのお寺には又来てみたいなと思ってしまった、既に四国病に罹ってしまったのだろうか?
太龍寺からの下山道は舗装の単調な下り坂、淡々と1時間も下ると龍山荘と坂口屋の2件の民宿があり、前のベンチで一休みさせてもらう。
民宿からさらに40分ほど下って阿瀬比という所の立派なヘンロ休憩小屋で残しておいたお弁当1人分を分け合って食べる。
カミさんが右足の指が少し変だと言うので、靴下を脱がせて見ると薬指に小さなマメが出来ている。
処置は宿でする事にして、テーピングテープで三重に保護して歩くようにした。ここから大根峠という小さな峠を越して行く。
登りにかかる直前、畑の畦に腰を下ろしていたおじいさんが「えらいの〜」と声をかけて来た。
大変だねと言う意味だと思うが、偉いねと言われたみたいで何だか嬉しくなって「有り難うございま〜す。お元気ですね〜」と大きな声でお礼を言った。
大根峠への登り
峠の中腹以下は農村地帯で田畠が続き、農家の方々が作業に忙しく立ち働いている。
傍を通る時は挨拶するよう努めているが、多くの方は忙しいのだろう目を合わせないし、無言だ。
それだけ忙しいのだろう、中には「この忙しいときに夫婦でチャラチャラしやがって」と感じる方も居るだろう。
どうであっても、原因は私達にあるのだから頭を下げて通させて頂くのみだ。
「おつかれさまです。ありがとうございます。」
意外に遠かった平等寺、太龍寺や鶴林寺に比べれば小さなお寺であるが、今日の締めくくりとしてゆっくりお参りする。
本堂正面には男坂、右手には女坂があり、厄よけのご利益があるそうで今年大厄のカミさん、真剣な面持ちで上り下りしていたな〜。
本堂と男厄坂
二重の立派な山門
宿に着き案内を問う。
おかみさんは陽気な人のようだ、でも全体に薄暗く雑然としているのが気になった。
通された部屋は何と24畳の舞台付き、もったいないと言うか・・・。風呂上がりに寒くなって来たのでエアコンをいれる。
10分位経って、喉がいがらっぽくなってきた。
カミさんが喘息の初期症状である気管が狭くなって「ヒューヒュー」という呼吸音を発し始めた。
あわてて発作予防薬を吸引させ、エアコンを停め窓を全開にして換気、以後暖房なしで耐え忍んだ。おかみさん、根はとてもいい人で料理も美味しく刺身など生きているようだったのに、残念な「ほこり(埃)高き宿」であった。
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