遍路9日目

(日和佐、小松大師、牟岐町、鯖大師、海陽町)

仁王

 

遍路9日目 
 2008.3.13(木) 曇りのち雨

0600 薬王寺宿坊
0645 日和佐トンネル
0730〜0745 休憩小屋
0840〜0855 小松大師
0940〜1000 牟岐警察接待所
1045 内妻トンネル
1110〜1135 鯖大師
1300 浅川
1410 海陽町
1430 遊遊NASAふれあいの里
今日の歩行距離
44245歩
28.1km
総歩行距離
336667歩
212.2km

雨の降るまえに

昼頃から雨になるという予報に、午前中できる限り距離を稼いでおこうと朝のお努めはパスさせて頂き6時に宿坊を出る。

まだ暗い中、薬王寺の瑜祗塔がライトアップされていて、ひときわ映えている。
早朝の空気は清々しく心も軽い、薬王寺の鐘がゴォ〜ン・ゴォ〜ンと響く中、国道55号線をひたすら進む。

日和佐トンネル入り口の休憩所で一休み。
雨はまだだが雲は低く降るのは時間の問題のようだ。
トンネルには歩道があり一安心だが、大型車の騒音が凄まじい上、トンネル内で反響して音の距離感が判らないのが意外と怖い。
次のトンネルには、おへんろさんへ反射テープの肩バンドとリストバンドを用意してあるのでどうぞと書かれた箱が置かれていた。
トンネルの怖さを知っている方々の有り難い配慮、遠慮なく使わせて頂こうと箱を開けると空で何も入っていなかった。
この財政難の時代だもの当たり前と言えば当たり前。
トンネルと通るのは覚悟の上なのだから、自分で自分の安全を守るべく準備してくるのが筋なのだ。
(反射テープはとても有効な事を後日実感しました。歩かれる方は100円ショップで買えるので準備される事をお勧めします。)


美味しい湧水をホースで提供してくれている休憩小屋でカミさんが左くるぶしが少し変というので見てみると赤くなっているのでテーピングテープで処置をする。

 

お地蔵様
石仏と一緒に一休み

 

お参りは?

8時半頃、小松大師で朝食のおにぎりを分け合い食べる。
自転車のカップルお遍路が元気な声で挨拶して通り過ぎて行く、若さピチピチの溌剌としたカップルだ。
近所の奥さんが通りかかり「小松大師様にお参り下さって有り難う」と礼を言われドキッ!とする。
実はお腹がすいていて、お参りもしないでおにぎりをパクついていたのだ。
お腹を満たし、感謝の一礼をして小松大師を後にした。

9時過ぎ、とうとう雨が降り出す。
丁度、河内小学校近くの地下歩道があったので、そこを借り雨衣を着用する。
お遍路に出て初めての雨である、これから何度味わう事になるのだろう。
しばらく雨が降っていなかったので、きっと農家の人達は喜んでいるだろうねと話しながら歩く。

山間の鉄橋を行く列車列車

 

へんろマーク

「お遍路さんは道を良く知っている。よくこんな道を」と地元の方にも言われる事がある。
実は全く知らないのだ。
歩けるのは、へんろ道保存協会をはじめ、自治体やへんろに理解のある団体、ライオンズクラブ、ロータリークラブなどなどが色々なマークを交差点や分かれ道、目につき易い所に貼って、お遍路さん達を誘導してくれているのである。
マークのほかには、昔の遍路道標の石柱、現代の「四国の道」の石柱などもある。
たまたまお遍路マークが一カ所に纏まって付けられているのを見つけたのでご紹介しよう。

へんろマークお世話になった遍路マーク

左は独鈷という宗教用具を組み合わせデザインしたものでガードレールや電柱に吹き付けてある、私達は独鈷が2つあるので「どこどこマーク」と呼んでいた。
真ん中は楽しそうに歩いている2人のシール、カミさんのお気に入りで「ぴょこたんマーク」と呼んだ。
右は一番多く見るマークで多少変形されたもののあるがこれが頼り、不安になると2人でキョロキョロ、あれば安心のマークであった。

この他にも何種類かのマークがあり、歩くお遍路さんを誘導してくれるので不安無く歩く事が出来た、ありがとうございます。

 

警察だ、ちょっと待て!

牟岐町に入り薬局で残り少なくなったテーピングテープを購入、少し歩いて牟岐の警察署に差し掛かるとテントが張ってあり、「ちょっと」と声をかけられた。
警察に呼ばれるような事はしていないけど・・・、そうでは無くお遍路にお接待をして下さるのだ。
カミさんが確かTVで見た事があると言っていた地元の方達が行っているお持てなしの休憩所である。
お言葉に甘え休ませて頂く、座布団は濡れているからと断り、温かいコーヒー、蒸かしたサツマイモ、紫芋の寒天羊羹、夏みかんなど沢山ごちそうになった。
色々な話に花が咲き、楽しい一時を過ごす事が出来た。
お礼を言って出発しようとすると男性の方が「今日は雨だから、この先あっちこっち入らんで、ま〜すぐ国道を行くんやで〜」と一言。「はーい」と答えて雨の中に踏み出した。

確かにこの後、内妻トンネル、古江トンネル、鯖大師手前のトンネルを迂回するへんろ道、鯖大師を過ぎて海岸線を行くへんろ道があったが、接待所の方のアドバイスを守り55号線を車のしぶきを浴びつつひたすら歩いたのでした。

牟岐町を過ぎた付近の海岸牟岐の海岸

 

 

男性からのお接待

古江トンネルを過ぎた辺り、対向車線に一台の車が止まり中年の男性が降りてきて、私達の方に小走りに渡ってくる。
「ご苦労様です。僅かですがお接待です」と用意された袋を一つづつ下さった。
こんな雨の中、わざわざ。
お礼を言うと、「私も歩いてまわった事があるのです。これから先、きつい所が続きますがどうぞ頑張って下さい」
ああ、なんて有り難い事だろう! 雨でなければ体験談などをお聞きしたいと思ったがそんな時間はない。
心からお礼を申し上げ、車に戻った男性を見送り頭を下げるのみだった。

袋の中には大きなバナナと野菜ジュース、小豆のショコラが入っていて、ご自分が歩いて美味しかったもの、食べたかったものを入れて下さったのだろうと話しながら感謝した。
多分、1日幾つかの品を用意され、お仕事の途中にお接待をされている方ではなかっだろうか。
私自身がたとえ四国に住んでいたとしても、出来るだろうかと歩きながら考え込んでしまった。

雨に濡れ冷たくなった体と心がジワッと温かくなった一瞬であった。
本当に、ありがとうございました。

雨の国道お接待に気持ちも温かく

 

鯖大師

11時頃、鯖大師に着いた。
大雨の中、お寺の軒先にザックを置かせて頂き、お参り。

その名の通り、鯖が・・鯖大師

大師堂のお大師様は右手に鯖を持って立っておられた。
納経所のお坊さんは納経帳を返しながら「雨の中お参り下さってご苦労様でございます。無事結願されますよう」
この一言にどんなに優しく励まされる事か、有り難く思わず深々と頭を下げた。

鯖大師納経鯖大師納経所

不動明王院へも室内からお参りさせて頂いた。

各札所のご本尊が鯖大師

お参りを終え、駐車場の雨宿りできる所で先ほどの男性から頂いたバナナや野菜ジュースを頂く。
温かいお気持ちがよみがえり、格別の味がした。

 

喘息発作! しっかり。

浅川を過ぎても本降りの雨は降り止まず、近くの山々もすぐ傍の島も霞んでいる。
車の轍には水が溜まり、通る車が盛大に水を跳ね上げている。
こちらに気付いて減速したり少し避けてくれる車もあるが、仕事で先を急ぐ多くの車にそんな余裕は無いのだろう頭から何度水を浴びた事か。

こんな事も関係したのか、カミさんが咳き込み始めた。
ヤバい、咳は喘息の引き金になる。
案の定、気管が狭まってきたのか呼吸の都度「ヒュー・ヒュー」と胸が鳴り始めた。
雨の国道、休む所も無い、道ばたで吸入薬を処置し立ったまま安静を保つ。
処置が早かったためか幸い大事に至らず、5分もすると薬が効いて呼吸も平静に戻った。
宿へは後3km程、ゆっくり歩けば大丈夫そうと言うので気遣いながら歩く。

浅川の海岸浅川の海岸線

 

ソムリエ

海陽町に入り、海布大橋を渡った所で今日の宿「遊遊NASAふれあいの里」に電話し場所を確認する。
内心「雨だから迎えに行きましょう」という対応を期待していたのだが、帰ってきたのはきわめて事務的な返答、仕方ない篠突く雨の中カミさんを励まし、結構な坂道を上って宿へ向かった。

ホテルへ着き受付カウンターへ行って愕然とした。
入り口でタオルで雨着やザックを一応拭いてから入ったのだが、ずぶ濡れなのは変わりない。
宿泊者名簿を差し出されたが、手も濡れている。
それを見て判っているのに、若い二名の男性ホテルマンはタオルを差し出す訳でもなく、濡れているカミさんの手伝いをする事も無く、ただ黙って突っ立っている。

ソムリエの慇懃無礼とは良く聞く言葉だが、こいつらは本当に慇懃馬鹿だ。
遍路旅の間は怒るまいと心に決めていたが、こういう馬鹿を相手に怒らない程お人良いではない。
後ろにいたカミさんも、あの人達「あ〜あ、床が濡れちゃった、拭かなくちゃ〜」て顔してたわよ。とあきれ顔。

不愉快な思いをしてしまったがこのホテル、設備や立地条件などは素晴らしい。
従業員達に明るさや覇気が見えないのは、指導の問題なのだろうか?
ちょっとした気配りを指導すれば、気持ちよく泊まれ利用する人も増えるのにと残念に思った。
支配人初め従業員の皆さん、一度大山寺の仁王様に睨まれて来られたら如何ですか?

 

 

歩き始めてすぐの雨。
雨衣を着けての遍路となる。
牟岐の接待所で温かなコーヒーを頂く、濡れた私達に戸惑う表情も見せず、椅子を勧めて下さり申し訳ない気持ちで脚を休めさせて頂く。
紫芋のようかん、甘夏、蒸し芋をご馳走になる。
「遠くから来たんだね〜。結願まで頑張って下さいね」と励まされる。
また、坂道を登りきった国道では若い方が待っていて下さり、自分もこの辺が一番きつかったので待っていて下さったと言う。
見ず知らずの人に気持ちを掛けて下さる四国という所、お遍路に対する心の深さに驚き、有り難く、感謝の気持ちがふつふつと湧いてくる。
雨は一段強さを増すが心はさわやかに軽い。

 

ひたすらに ただひたすらに 南下する
      春雷轟く 修行の高知


 

 

 

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