|
晴れた〜!
|
海岸線沿いに歩くとすぐに夫婦岩、大小4つの岩が海中にせり出していてどれが夫婦なのかと迷っていたら、奥の小さな岩2つにしめ縄が掛けられていた。
夫婦岩
だんだんお天気はよくなり目映い日差しが照りつけ海はエメラルドグリーン、そこに白い波頭が踊っていてまさに南国の海だ。
海から少し離れると田起こしの準備が行われ水が張られた水田からはカエルの大合唱が響いている。
そしてあぜ道には極めて珍しくなった日本タンポポの白花が沢山花をつけていた。
貴重な花になりつつある、是非上手に保存してほしいものである。
所々古い独特の形の家が建ち、歴史や時代を感じさせていた。
古い民家
太龍寺の登りで追い越し、その後は大体同じ日程で歩かれている70歳後半と思われる男性が今日も前後して歩かれている。
この方ほとんど休憩をしない。聞くと一定のペースで歩き続けた方が楽なのだとおっしゃる。
今日も私達が追い抜き、休憩している間に追い抜かれる。その繰り返しで、まさに兎と亀である。
経験に裏打ちされた歩き方の一つなのだと思った。
室戸岬は遠い
しばらくすると大きな荷物を担いだお遍路さんらしくない服装の人に追いついた。
「野宿ですか」と声をかけると何と女性の一人旅、しかもアメリカ国籍の韓国人でHelenさん(78歳)と言う。
そのバイタリティー、若々しさ、気力の凄さに圧倒され、只只お話を聞くばかりである。
カミさんに「今から鍛えれば体力が弱くなる事は無い、私は昨年スペインの巡礼の旅にも行って来たけどとても素晴らしくて安いのよ。日本の巡礼も良いけれど高いね。貴女も行って見なさい」とけしかけている。
カミさん、たじたじで「あの〜、言葉が・・・」
「ああ、言葉ね。トイレと食べ物の名前3つ位覚えていればOKよ」
いやはや、恐れ入りました。
10時半、空海が修行中に明星が飛び込んで来たと言われる御蔵洞にたどり着く。
岩山に2つの洞窟があり、1つは深さ10m程、もう1つは深さ40m程あり祭壇が置かれている。
さすがに神秘的な雰囲気がして話す事さえはばかられる。
洞から出ようとするとポッカリ開いた洞の向こうに海と空のみが見え、まさに空海の世界なのである。
御蔵洞
納経してもらっている時、来ていた漁師の方から室戸岬や南の海にまつわるお話を聞く事が出来た。
台風の凄さ、しけの時の漁、魚の種類、採り方など私達には珍しい話ばかりであった。
御蔵洞にて
御蔵洞から最御崎寺へは国道を通らず海岸沿いに作られた遊歩道を歩いた。
巨岩や奇岩が迫り、海のすぐ傍を通ってお寺への登り口へ行く。
室戸岬遊歩道で
最御崎寺へは標高差150m位登らなくてはならない。
平地ばかり歩いて来たせいか、この登りが結構きつい。
おまけに例によって階段の歩幅が合わないから余計疲れる。
思わず途中で一息入れて登って行く。
最御崎寺への登り
境内に入ると立派な鐘楼が目につく、どこかで見た事のあるようなと思っていたら、大晦日の「ゆく年くる年」で何度か放映されているそうだ。
多宝塔とのマッチングも良く心を和ませてくれるようだ。
最御崎寺
弘法大師が長い間修行されたお寺という事、私達に霊気など感じる筈も無いが、心を込めて御参りした。
ここから25番津照寺へは室戸岬の西側をイロハ坂のように降りて行く。
今日の目的地である行当岬が遥か彼方に見えている、遠いな〜。
室戸岬から行当岬を見る
おへんろに出てからは出来る限り会う人にこちらから挨拶するよう心がけている。
丁寧に返礼してくれる人、素っ気ない人、無口の人、目を合わさない人、顔をそむける人、様々だ。
人はそれぞれ自分で善かれと思って生きている。
私達だって好き好んでおへんろに出ているのだ。
人から遊んでいると思われようが、何と思われようが、自分に誠を尽くせばそれで良いのではないだろうか。この辺りまで来ると、相前後して歩いているへんろの人達とは、かなり顔見知りとなる。
個人的な事に立ち入らないのがおへんろの決まり事のようなのでお名前も存じ上げないが、秋田のおばあちゃん、横浜の律儀おじさん、千葉の張り切りおじさん、岡山のむっつりじいちゃん・・・いずれも私達が勝手に名付けた人達だ。
歩き方も色々、私達のように1時間に5分位の休憩というペースの人、休憩所があれば必ず休む人、ゆっくりペースながら休まない人、午前中は凄く頑張るがいつの間にか目的地では一緒になる人、これまた様々だ。
午後1時過ぎ津照寺に着いた。
山門から本堂へは真っすぐな急な階段が一直線。
一直線の階段を上って
車でお参りに来られたお年寄りの中には登らずに下から御参りする人も見受けられた。
その位の階段である。
私達が本堂で御参りし般若心経を唱えている横に錫杖をジャン・ジャン鳴らし、怒鳴るような大声でお経を上げる一団が現れ驚いた。
静かな気持ちでお経を上げたかったが、とても平静ではいられない。
どんな形であれ、御参りする事に意味があるのだろうからかまわないとは思うが、他の人達の迷惑になるような方法が正しいのか疑問に思った。
そして何故かこういう人は朱色の金剛杖の上に錫というのか音の出るものを付けた、僧侶とか先達とか言われる人が多いように感じられた。
津照寺から室戸岬を見る
津照寺から26番金剛頂寺へは3km程歩き、台地へと登って行く。
上天気で日差しが強く暑い位、カミさんは日焼け止めを真っ白になる位塗りたくっている。
私達はTシャツにおへんろ用の白衣を着ているだけだが、暑くて仕方がない。
それなのに地元の人達はダウンジャケットやセーター、半天などを着ていて、挨拶の中でも「今日はぬくーて、ええな〜」と言われる。
歩きおへんろの中にも私達のような軽装はいない。
どうやら、この場面では私達が普通ではなかったみたいだ。2時半過ぎに金剛頂寺に着いた。
山門の前に売店がありアイスならぬアイスクリンの旗が出ていたので、たまらず購入。
昔懐かしい感じのアイスであった。
高知県警のパトカーが半ドアで止まっていて、警官2人が売店の中で反っくり返ってコーヒーやお菓子を食べ声だかに雑談していた。
きっと、今日の罰金取り立てノルマを達成した連中なんだろうな。
金剛頂寺は最御崎寺と同様、台地の上にあるお寺。
堂々としてとても立派である。
金剛頂寺本堂
本堂は比較的新しい感じだったが、大師堂は年代が経っているようで風格すら感じさせられた。
境内に癌封じの椿という幹が瘤だらけの椿の大木があり、多くの人が願掛けをされている。
私も山仲間で最近大腸癌の手術を受けたSGさんの平癒を願って祈りを捧げた。
今日は金剛頂寺の宿坊に泊まる。
宿坊と思われる建物に行くと、そばにここは宿坊ではありませんと書いた立て札が立っている。
その先に進んで行くと境内から出てしまっている感じがする。
もう少し先まで行って分からなければ引き返そうと進んでいると、反対側から黒い法衣と深々とした笠を被ったお坊様が歩いて来たが何かに迷っている様子。
御訪ねすると金剛頂寺へ行かれる由、丁寧に説明して差し上げた。
とても温和で穏やかそうなお坊様である。
お坊様に道の説明をしている傍を、10人位の子供達が駆け寄って来た。
痛くないよ
「元気だね〜」と声をかけると「こんちわー、おじさん達ティッシュを持っていない?」と言う。
「持っているよ、どうするんだい?」
「頂戴、怪我をしたんだ!」
後から来た女の子達の中に膝から血を流している子がいる。
カミさんが「いらっしゃい、お薬もあるから」と道ばたに座らせマキュロンとバンドエイドで処置してあげる。
駆けつけて来た先生に連れられ、子供達は元気に帰って行った。まっ、少しは人様のお役に立てて良かった良かった。
金剛頂寺の宿坊は快適、お掃除が行き届きプライバシーも確保されている。
取り仕切っている奥様の人柄も良いし、働いている人達も優しく気持ちよい人達だ。
そして宿坊というのにその料理の豪華さ、食べ切れない程。
しかも海が近いだけに魚の鮮度は素晴らしく感動ものですらあった。昨日の雨の中30km以上歩いたのがいけなかったのか、これまで気配すら無かったカミさんの右足の指にマメができた。
水を抜いて慎重に処置する。
|