遍路15日目

(31番竹林寺、32番禅師峰寺、33番雪蹊寺 、34番種間寺)

 

竹林寺

 

遍路15日目
2008.3.19(水) 雨

0600 高知市内BH
0640 文殊通り
0710〜0735 31番 竹林寺
0825〜0735 休憩小屋
0910〜0935 32番 禅師峰寺
1045 種崎渡し船乗り場
1110〜1115 渡し船
1130〜1155 33番 雪蹊寺
1310〜1350 34番 種間寺
1500 仁淀川
1545 白石旅館
   
今日の歩行距離

47,413歩
29.8km

総歩行距離
610,036歩
387.2km

雨対策

6時に宿を出発、始発の土佐鉄道で昨日の歩行終了地点「文殊通り」へ向かう。
早朝から雨、雨対策を念入りに行っての歩きである。

ちなみに私達は雨対策として、以下のような事をしていた。

  • 蒸れ防止のためズボン、上着は着ずに長袖シャツと山歩きで愛用のサポートタイツのみ。
  • タイツの上にスパッツを着け、その上に雨着を着用して雨が靴に入らないよう二重にガード。
  • ザックの中身は沢登りで使っている完全防水の袋に入れ収納し、ザックの上からはザックカバー。
  • 菅笠にはビニールカバー。
  • 頻繁に出し入れする納経帳や参拝用品を入れるバッグ(私はザックのハーネスに取り付けるhabo製のバッグを使った)は、中身をビニール袋などに入れ、バッグ全体はレジ袋を活用して防水。
  • 靴はゴアテックス製のトレッキングシューズ、雨着も山歩きで使っているゴアッテクスの防水性の高い物を使用。

これらの対策をした結果、汗で体が濡れたり靴の中が湿ったりはしたが、その他は概ね期待通りで荷物や参拝用品が濡れる事は無かった。

 

竹林寺

文殊通りから遍路道は川を渡り、標高150m程の五台山の左裾から右に巻くように登って行く。
雨の朝、辺りはまだ暗い。

雨の朝正面に五台山

アセビの花が咲き、静かすぎる山道である。

中腹からの景色五台山


登りきると植物学者の牧野富太郎博士の記念館があり、五台山山頂付近は植物公園のように整備されていた。
記念館から10分も歩けば竹林寺の五重塔が見え、端正な姿に感動する。

竹林寺牧野記念館からの五重塔

雨に濡れた山門はひっそりと静かに私達を迎えてくれ、それがかえって心の緊張感を高めるようだ。

竹林寺山門竹林寺山門

山門から本堂へ、おもむきを感じる安らぎの寺。
誰もいない雨の中、心静かにお参りできた。

朱色も鮮やかな五重塔五重塔

五台山を下り、下田川の土手を歩き旧道の遍路道に入って行く。
主要道路は車で一杯だが、旧道は人通りも無くにぎやかに喜んでいるのはカエル達だけだ。

8時半頃、雨宿りの出来る屋根の付いた遍路休憩所があり、ありがたく休ませてもらう。
雨で湿度が高いと呼吸も楽でカミさんの喘息には良い筈なのだが、この日は時々咳き込む。
発作予防に早め早めに吸入薬を使用した。

 

禅師峰寺

やがて大きな石土池という溜め池に出、遍路道を禅師峰寺へと登って行く。
遍路道には、すでに雨水が小川のように流れ出していた。

お寺に着くと丁度マイクロバスでお参りの方達も到着し、濡れないよう本堂のすぐ前に並んでお参りしている。
申し訳ないと思ったが、濡れねずみで待っている訳にもいかず、写経とお賽銭を横から入れさせてもらい、私達は階段下でお参りした。

禅師峰寺禅師峰寺

禅師峰寺からは桂浜などが良く見えるそうだがあいにくの雨で煙っており、近くの海岸がやっと見える程度で残念であった。
境内には大きな岩と木々が入り組んでいて、独特の風情を醸し出していた。

下山には遍路道は滑るだろうと車道を使う。
禅師峰寺を出たのが9時半過ぎ、11時の渡し船に何とか間に合うかもと気持ちが急ぎ、狭い通りをひたすら西へと向かう。
雨は止む間もなく強弱を繰り返しながら降り続いている。
四国へ来て雨は三回目だが、いずれもその降りっぷりの良さに驚く、男性的で痛快ですらある。

 

渡し船

1時間弱で「三里」と言う港町に出、これなら渡し船に間に合いそうと安心する。
種間の渡しには10時45分に着き、やれやれと待合室に入って菓子パンを分け合って食べる。
汗で濡れた体が休んでいる内に寒くなる。
風でも引いたらとシャツを重ね着しようかと思ったが、全て濡らしてしまうと後で困るかもと体を動かして我慢する。

渡し船は乗船時間僅か5分、無料である。
乗客は私達と自転車のおじいさんの三人だけ、乗務員も三人、何だか申し訳ない気持ちになった。

渡し船で対岸へ渡し船

 

雪蹊寺

長浜の渡し場から雪蹊寺へは15分と僅か。
平地にあるこじんまりした霊場である。

雪蹊寺雪蹊寺

今日は歩きの方とは出会わないが、車で参拝の方は雨だというのに何人かおられる。
納経所の方に「ご自由にどうぞ」と夏みかんを勧められ、一つ頂く。

みかんを頂き笑顔も出る雪蹊寺

時間も丁度お昼時だし、雨で濡れているので温かい物を食べたいが食堂のような所が無い。
仕方なく、もう少し頑張ろうと種間寺へと向かう。

種間寺への道種間寺への遍路道

278号線から離れ遍路道を歩く、狭い道がくねくねと曲がり、雨のせいもあって方向感覚が失われてゆく。
後1km程になって、カミさんが「後どのくらい?」「もうそろそろでしょう?」と聞いてくる。
疲れているのだ。結局、種間寺まで食堂は一つも無かった。
気分転換に、小椋圭さんの「愛燦々」を口ずさみながら雨に打たれて歩いて行く。
「少しばかりの運の悪さを嘆いたりして、人は可愛いものですね〜」

 

種間寺

そうこうしている間、田園の中に種間寺が見えて来た。
屋根の緑色が雨の中、周囲と溶け合って美しい。

種間寺種間寺

お腹が空いているが、まずはお参りと境内に向かう。
ここにも車でお参りの方が何人か来ていた。

種間寺本堂種間寺本堂

参拝後、寺の前にあった色々な種類がある自動販売機コーナーの店で腰を下ろし、菓子パンとインスタントラーメンを買い求め、食べた。
ラーメンの温かさが気持ちを柔らかくしてくれるような感じがした。

 

相手の立場に立つ

種間寺で今日のお参りは全て終了、4つのお寺をお参りした。
昨日はお参りした3つのお寺で気持ちよく応対して頂いた。
今日は、最初のお寺では眠そうな顔で現れた女性がつっけんどん。
二番目のお寺は、やはり女性が口をモグモグさせながら売店の女性とおしゃべりに余念がなく、納経すると即おしゃべりの続きと言う有様。
雪蹊寺では「雨の中、ご苦労様。これは頂戴した物だが好きなだけどうぞ」と夏みかんをお接待して頂き、種間寺ではお年寄りの男性から「この雨の中、大変な修行をされましたね」と優しい言葉をかけられ、カミさんは感激していた。

札所では毎日、何百もの納経を受け付けているのだから良い顔ばかりしていられないのは良く判る。
でも、受ける人のほとんどは一生に一回の事なのだ。

翻って、私もカミさんも自然観察や歯科指導のボランティアをしている。
つい、相手も分かっている筈だと十分な説明や対応をしないで参加者を戸惑わせたりする事があったと思う。
逆の立場になって、自分の行いを見てみる事の大切さを改めて再認識させられた一日でもあった。

 

遍路宿

今日の宿は35番清滝寺の麓近くの土佐市の民宿。

種間寺から1時間程歩いた所で、仁淀川を渡る。

仁淀川仁淀川

雨で増水し、茶色に濁った水が滔々と流れていた。
広い河川敷には田畑が作られていて、洪水のときにはどうするのだろうと心配になる。
しばらく仁淀川右岸の土手を歩く遍路道を行き国道56号線に出たが、道を見失ってしまった。
ガソリンスタンドで道を尋ねたら少し通り過ぎていて、疲れた体を引きずるように町中に入り宿へと向かった。

今日の宿は「もう閉めたいんだけどね〜」と言うおばあさんが切り盛りしている所で、エアコン有料、こたつは通電せずと今時珍しい部類の宿であった。
古いいかにも旅館と言った造りで、掃除も行き届き気持ちが良い。
この町には宿泊施設は三カ所しか無く、こういう宿が無くなって困るのはお遍路達。
もし、この宿が閉められても商売が成り立たず、新たにこの地に宿を開く人は居ないだろう。

時代と共に遍路宿も移り変わり、遍路の行程や日程も変っていかざると得ないのかも知れない。

 

 

早朝の竹林寺は素晴らしかった。
雨に煙る山門を入ると苔むした境内には、土佐藩の庇護のもと栄えた時代をしのばせる建物が静かに待っていてくれた。
一日中、雨。
折角のチャンスだから日頃ゆっくり考えたいと思う事を考えて行こうとするが、疲れてくると無意識に「南無大師遍照金剛」と声に出して唱えつつ、杖の鈴を鳴らしている。
これが一番歩くペースが整うのである。

34番種間寺は大雨のせいか人影もまばら、納経所で「良い修行をされましたね。気をつけて行って下さい」と励まされ、冷えた体までも暖かくなった。

 

雨降るも また一興と 身支度す
     山野を巡る 四国遍路は

 

 

 

 

 

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